
毎年の避難訓練やBCPの訓練が決まった手順をなぞるだけになり、職員の防災意識を高める方法を探している方もいるのではないでしょうか。
防災キャンプは、避難生活を実際に体験して学ぶ取り組みで、介護施設の職員から利用者まで参加できるものもあります。この記事では、防災キャンプのプログラム例と費用、施設として参加するときの注意点を解説します。
最後まで目を通せば、施設に合う参加の形を判断し、職員や利用者と参加する準備を進められるでしょう。
防災キャンプとは
防災キャンプは、災害時の避難生活や行動を、知識として学ぶだけでなく実際に体験しながら身につける体験型のプログラムです。主催者は自治体や団体などさまざまで、避難所に泊まるものや日帰りのものもあります。
ここでは、防災キャンプの目的と、施設で実施している避難訓練・BCP訓練との違いを見ていきましょう。
防災キャンプの目的
防災キャンプは、災害時に必要な備えと動き方を、体験を通して身につけるための取り組みです。ねらいの示し方は、主催者ごとに異なります。
避難してみて初めてわかる備えに気づける点は、宝塚市が挙げるねらいの1つです。電気がない、水が足りないといった不便を体験すると、乗り越える力や創意工夫する力が生まれるとも説明しています。
防災キャンプの講座を開いているある団体が、災害時に必要となる力として挙げるのは、身近なもので工夫する力や地域で助け合う力などです。職員研修として参加すると、停電や断水のなかで施設に足りない物を職員自身が考えるきっかけを作れます。
関連記事:お子さんや介護対象者に対しての防災訓練
避難訓練・BCP訓練との違い
施設で実施している訓練と防災キャンプでは、確かめる中身が異なります。施設は運営基準により、定期的な避難・救出などの訓練と、業務継続計画(BCP)の研修・訓練が義務づけられています。
| 種類 | 主な中身 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 避難訓練 | 避難・救出の手順 | 運営基準の義務 |
| BCPの訓練 | 避難後の業務継続 | 運営基準の義務 |
| 防災キャンプ | 避難生活の体験 | 主催者の企画 |
厚生労働省のガイドラインが示すBCPの研修・訓練の回数は、入所が年2回以上、通所・訪問が年1回以上です。BCPは感染症や非常災害の発生時に備える計画で、ガイドラインの表はこの回数に「感染症も含む」と添えています。避難誘導や初期消火などの防災訓練は、BCPの訓練とは別のものとして整理しましょう。
ある自治体では、地域で毎年実施する防災訓練との違いとして、実際に一泊してみる点を挙げています。施設の訓練を続けながら組み合わせれば、避難後の生活まで職員が体で覚えられるでしょう。
関連記事:地震避難訓練で大事なこと|訓練の効果を高めるポイントも解説
参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン|厚生労働省
参考:令和5年度介護BCP策定支援セミナー机上訓練(入所系)|厚生労働省
防災キャンプのプログラム例
防災キャンプの中身は、主催者ごとにさまざまです。ifnyが企画・開催している介護施設向けの防災キャンプ「あそぼうさい」では、実際に避難所に行ってみる体験と防災学習ゲーム、防災グッズを使ってみる体験を組み合わせています。
ここでは、主なプログラムを3つに分け、施設の備えにどう生きるかとあわせて紹介します。
避難所の生活体験
避難所の生活体験では、避難所で使われる道具を組み立て、その環境で実際に過ごしてみます。段ボールベッドや簡易更衣室を組み立て、避難所と同じ環境で一泊するモデルプランを掲げる自治体もあります。
日帰りの例では、中学校の体育館で簡易ベッドやトイレ、パーティションを組み立てる訓練もありました。「あそぼうさい」では、参加者が持参した食料や防災食をみんなで共有し、選んできた持ち物が役に立つかを考えます。
床に長く横たわっているとエコノミークラス症候群を引き起こすだけでなく、埃などを吸い込む健康被害も心配されるため、避難所ではベッドの設置が望まれます。高齢の利用者が床で過ごす時間を減らせるよう、組み立ての手順を職員で覚えておきましょう。
参考:避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針|内閣府
防災グッズの使用体験
防災グッズの使用体験では、備えている道具を実際に手に取り、扱い方を体で覚えます。「あそぼうさい」でも、防災グッズを使ってみて、使い方や災害時の行動を学びます。
防災キャンプの実施例として挙げられるのは、持出袋の中身と重さの確認や、簡易トイレの組み立てと凝固剤の体験です。施設で備蓄している物と同じ道具を使ってみると、備えの不足に気づくきっかけになります。
体験の場で確かめたい点は、次のとおりです。
- 簡易トイレの組み立て方
- 凝固剤の使い方
- カセットコンロの火力
- 持出袋の重さ
カセットコンロは施設の備蓄品の例にも挙がる道具ですが、火力が弱く大量の調理は難しくなります。電気や水道が止まったら簡易トイレを速やかに設置できるよう、手順を職員で共有しておきましょう。
防災ゲーム
防災ゲームは、災害時の場面や知識をゲームの形で学ぶプログラムで、カードや図面で疑似体験しながらどう動くかを話し合うものもあります。「あそぼうさい」でも、防災学習ゲームを取り入れています。
防災キャンプで実施された例の1つが、静岡県が開発した避難所運営ゲーム(HUG)です。HUGは、避難者の事情が書かれたカードを体育館や教室に見立てた平面図に配置し、要援護者への配慮や仮設トイレの設置場所などを話し合うゲームです。
阪神・淡路大震災で災害対応にあたった神戸市職員へのインタビューをもとに作られた「クロスロード」を、プログラムに使った防災キャンプもあります。どちらを選んでも何らかの犠牲を払う問題でYesかNoかを決め、その理由を全員で話し合います。
利用者の避難を誰がどの順で支えるかも、職員同士で話し合っておくと迷いを減らせるでしょう。
防災キャンプに参加するときの注意点

介護施設が防災キャンプに参加するときは、誰が参加するかと、利用者の体調への配慮を事前に決めておきましょう。日帰りか泊まりかによっても、準備する内容は変わります。
ここでは、参加メンバーの決め方と、利用者の体力・持病に配慮するときのポイントを解説します。
参加メンバーの決め方
参加メンバーは、職員だけで参加するか、利用者と一緒に参加するかで決め方が変わります。ifnyの「あそぼうさい」は、介護士から介護対象者の方まで、防災について楽しく学べるプログラムです。
職員だけで参加すると、避難生活の不便を職員自身が体験し、施設に持ち帰る課題を話し合えます。利用者と一緒に参加する場合は、介助が必要な方に付き添う職員を事前に決めておきましょう。
「あそぼうさい」は基本的に日帰りの開催で、開催内容によっては泊まりの企画も相談できます。ほかの主催者には、1講座あたり3〜6時間の出前講座の例もあります。
利用者の体力・持病への配慮
利用者と参加するときは、避難生活で起こる体調の変化を把握したうえで配慮を決めましょう。避難所ではトイレを我慢して水分や食事を控え、脱水症状やエコノミークラス症候群などの健康被害を招くおそれがあります。
避難所の和式トイレは、足腰の弱い高齢者が使用するには困難な場合があります。高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくいため、のどが渇いていなくてもこまめな水分・塩分の補給が必要です。
参加前には、次の点を確かめておきましょう。
- 会場のトイレの形と段差
- 服薬の時間と持参する薬
- 水分や塩分の制限の有無
- 当日の暑さ指数
水分や塩分の量は、かかりつけ医の指示に従いましょう。持病のある方は主治医に相談したうえで参加を決めると、当日も落ち着いて過ごせるでしょう。
参考1:避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン|内閣府
参考2:高齢者のための熱中症対策|環境省
防災キャンプでよくある質問
防災キャンプへの参加を検討するときは、費用や申し込みの単位も確かめておきたいところです。主催者によって条件が違うため、例を挙げて整理します。
ここでは、参加費と施設単位の申し込みについて、よくある質問にお答えします。
参加費はいくらかかる?
参加費は主催者ごとに違い、料金の単位も異なります。「あそぼうさい」の基本料金は1名あたり3,000円で、40名の場合は120,000円です。
少人数でも実施できますが、予算面で割高になる可能性があります。予算の相談もでき、食材を参加者で分担して用意するなどの工夫で費用を下げる方法もあります。
ある団体の出前講座は、1講座あたり30,000〜50,000円(税別・交通費別)です。自治体の公民館が開く講座には、小学生と保護者を対象にした参加費無料の例もあります。料金に含まれる内容は、申し込み前に主催者へ確かめましょう。
参考:令和8年度瀬戸公民館主催講座【岡山市防災キャンプ推進事業】|岡山市
施設単位でも申し込める?
「あそぼうさい」は、施設単位で申し込めます。申し込みフォームには「企業または施設名」の欄があり、参加までの流れは次のとおりです。
- 受付フォームから申し込み
- 人数や日程、金額の確認
- 開催場所と開催日の調整
- 当日の開催
「あそぼうさい」は基本的に全国に対応していますが、キャンプ場などの空き状況によっては希望の地域で開催できない場合があります。ある団体の出前講座も対象者に福祉施設を挙げており、対応人数は30〜40名まで(人数に応じて柔軟に対応可能)です。
希望の日程と参加人数を決めてから問い合わせると、調整がスムーズに進むでしょう。
まとめ
防災キャンプは、避難生活を実際に体験して学ぶ取り組みで、介護施設向けには職員から利用者まで参加できるものがあります。施設の避難訓練やBCPの訓練とは確かめる中身が違うため、訓練を続けながら組み合わせて使うのがおすすめです。
防災キャンプのプログラムには、避難所の生活体験や防災グッズの使用体験、防災ゲームなどがあります。参加するときは職員だけか利用者と一緒かを決め、トイレや水分補給、服薬などの配慮を事前に確かめておくと安心です。
施設に合う参加の方法を選んで体験し、職員の防災意識を高めましょう。
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2022年に防災士の資格を取得、企業に対してBCP対策の支援。
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