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2026/05/01

介護施設の消防訓練のやり方は?準備から注意点まで解説

西條 徹

西條 徹

介護施設の消防訓練のやり方は?準備から注意点まで解説

介護施設で初めて防火管理を担当すると、訓練の種類や届出の進め方で迷う場合があるでしょう。自力で避難が難しい入居者が多い施設では、一般的な避難訓練よりも細かな配慮が必要です。

この記事では、介護施設で必要な消防訓練の種類、準備から振り返りまでの流れ、入居者支援や夜間想定の注意点を解説します。

消防訓練のやり方を把握できると、消防署への届出や当日の進行を落ち着いて準備できるようになるでしょう。

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介護施設で実施する消防訓練の種類

介護施設の消防訓練は、消火・避難・通報の各訓練を組み合わせて実施します。防火管理者は訓練の目的を分けて考えると、必要な準備や職員への説明を整理できます。

ここでは、介護施設で押さえたい4種類の訓練を見ていきましょう。

消火器と屋内消火栓の操作を学ぶ消火訓練

消火訓練は、火災の初期段階で消火器や屋内消火栓を使うための訓練です。出火場所の近くにいる職員が最初に対応する可能性があるため、全職員で操作を確認しましょう。

消火器は安全ピンを抜き、ホースを火元へ向けてからレバーを握ります。放射するときは火元の手前から掃くように薬剤をかけ、煙や熱を避けるため姿勢を低く保ちます。

消火器の基本手順は、以下のとおりです。

  1. 安全ピンを抜く
  2. ホースを火元へ向ける
  3. レバーを強く握る
  4. 手前から掃くように放射

粉末ABC消火器は放射時間が約15秒、放射距離が約5mです。炎が天井へ燃え移る前までを初期消火の目安とし、難しい場合は避難誘導へ切り替えましょう。

屋内消火栓は、設備の種類により必要人数が異なります。1号消火栓は2名で、2号消火栓や易操作性1号消火栓は1名で操作可能です。

参考1:第7章火災のときに役立つ建物の設備|東京消防庁
参考2:避難訓練マニュアル|柏崎市

入居者を安全な場所へ誘導する避難訓練

避難訓練は、入居者を安全な場所へ移動させる手順を確かめる訓練です。介護施設では歩行が不安定な人や寝たきりの人がいるため、避難経路と搬送方法を事前に決めておく必要があります。

避難経路は出火場所を避け、煙の影響を受けにくいルートを選びます。停電のおそれがあるため、通常のエレベーターは使わず階段を優先しましょう。

自力で移動できる入居者には、拡声器やハンドマイクで短く指示します。鼻と口を覆い、低い姿勢で移動する誘導が基本です。

避難時に確認したい点は、次のとおりです。

  • 出火場所を避けた経路
  • 2つ以上の避難経路
  • エレベーター不使用
  • 火災室を通らない誘導

火災のときは、普段使う道へ戻ろうとする行動が起きます。職員が落ち着いて声をかけ、同じ手順を繰り返すと混乱を減らせるでしょう。
参考:避難訓練マニュアル|柏崎市

119番通報の手順を確かめる通報訓練

通報訓練は、火災を確認したあとに119番へ連絡し、施設内にも知らせる訓練です。担当者が不在でも第一発見者が通報できるよう、伝える内容を電話機の近くに掲示しておきましょう。

119番では、まず「火事です」と伝え、続けて住所と建物名、近くの目印を伝えます。燃えている場所、逃げ遅れやけが人の有無、通報者の氏名と電話番号も必要な情報です。

通報後に新しい情報がわかった場合は、第2報として再度連絡しましょう。初期消火の結果や避難の進み具合、逃げ遅れの有無は消防隊の活動に役立ちます。

また、非常放送設備や業務用放送設備を使って施設内への連絡も同時に進めます。放送の際は「〇階で火災が発生しました。係員の指示に従って避難しましょう。エレベーターは使用できません」と落ち着いた口調で伝えましょう。

消火・避難・通報を一連で実施する総合訓練

総合訓練は、火災の覚知から消防隊への情報提供までを一連で確認する訓練です。通報、初期消火、避難誘導、人員確認を実際の勤務に近い流れでつなげるのが目的です。

訓練では、自動火災報知設備のベルで火災を覚知し、職員が消火器をもって現場へ向かいます。火災を確認したら「火事だ」と周囲に知らせ、119番通報と館内放送を進めましょう。

初期消火で対応できないと判断したら、すぐに避難誘導へ移る必要があります。避難完了後は防火戸を閉め、避難場所で点呼を実施します。

消防隊が到着したら、出火場所と避難の状況を伝えましょう。逃げ遅れや負傷者の有無も必要な情報です。実際の火災では複数の対応を同時に進めるため、職員同士の連携を重点的に確認しましょう。

消防訓練の準備から振り返りまでの流れ

消防訓練は、当日だけで完結しません。事前の届出、役割分担、当日の安全管理を流れで整える必要があります。終了後の振り返りまで決めておくと、初めての担当者でもスムーズな進行が可能です。

ここでは、準備から改善までの基本的な進め方を見ていきましょう。

自衛消防訓練通知書を作成して消防署へ届け出る

防火管理者は、消防訓練を実施する前に管轄の消防署へ通知します。提出書類は自治体により名称が異なりますが「自衛消防訓練通知書」や「消防訓練実施計画書」として用意されている場合が多い傾向です。

書類には、訓練日時、訓練場所、訓練種別などを記載します。参加人数、責任者氏名、連絡先も必要です。訓練の内容が消火、避難、通報、総合のどれにあたるかも整理しましょう。

提出期限・方法は自治体ごとに異なります。訓練日から逆算して余裕をもって準備し、管轄消防署の案内に従って窓口・郵送・オンライン申請のいずれかで提出しましょう。

参考:自衛消防訓練通知書(自衛消防訓練の通報)|東京消防庁

職員の役割分担と当日の進行手順を決める

届出と並行して、職員の役割分担と当日の進行手順を決めます。消防計画にある自衛消防隊の編成をもとに、指揮者や通報連絡班を割り当てます。初期消火班と避難誘導班の設定も必要です。

介護施設はシフト制のため、担当者が必ず勤務しているとは限りません。特定の職員だけが対応を知っている状態を避け、代わりの職員でも動けるように手順を決めておきましょう。

事前に決める項目は、次のとおりです。

  • 出火場所と発生時間
  • 避難先と避難経路
  • 入居者ごとの搬送方法
  • 必要な資機材
  • 訓練の開始合図

建物図面に出火場所、避難経路、誘導が必要な入居者の位置を書き込むと、職員間で認識を合わせられます。通路が使えない設定を入れると、予定どおりに進まない場面への対応力も確認できるでしょう。

計画した内容に沿って当日の訓練を進める

訓練当日は、事前に決めたシナリオに沿って開始します。通常の勤務に近い状態で進めると、実際に火災が起きたときに近い動きや連絡の遅れを把握できます。

訓練中は安全管理者を置き、転倒や搬送中の事故が発生しないよう配慮が必要です。自力避難が難しい入居者の代わりに職員や訓練用ダミー人形を使う方法もあり、入居者への負担を抑えながら搬送手順を確認できます。

また、訓練では火災を覚知した時点から避難開始までの時間、避難完了までの時間、点呼完了までの時間をストップウォッチで計測します。記録を残すことで、次回の改善につながるでしょう。

建物の構造や設備に応じて、避難目標時間を設定している場合があります。目標時間内に初期消火、区画形成、避難が完了するかが確認のポイントです。難しい場合は、役割分担や人員配置を見直しましょう。

関連記事:介護施設の非常災害時の対応|準備から避難訓練まで徹底解説

訓練実施後の振り返りで改善点を洗い出す

訓練後は、防火管理者を中心に振り返りを実施します。振り返りでは、良かった点や問題点、次に試す改善策を分けて話し合うKPT法(Keep/Problem/Try)を使うと整理に有効です。記録者を決めておくと、発言を次回の計画に反映できます。

振り返りで扱う内容は、以下のとおりです。

  • Keep:継続したい対応
  • Problem:改善が必要な点
  • Try:次回試す改善策

避難目標時間を超えた場合は、原因を職員個人に求めず、仕組みとして見直します。役割分担、居室配置、応援体制が確認項目です。消防用設備も含めて見直し、次の訓練で改善策の効果を確認しましょう。

介護施設の消防訓練で注意するポイント

介護施設の消防訓練で注意するポイント

介護施設では、入居者の身体状況や夜間の勤務体制を踏まえた訓練が必要です。一般的な避難手順だけでは対応しきれない場面を想定すると、訓練の実効性が高まります。

ここでは、特に確認したい2つのポイントを紹介します。

移動が困難な入居者への避難支援の工夫

移動が困難な入居者は、出火室や隣接区画から優先して安全な場所へ移します。少人数で大勢を一気に屋外へ避難させるのは難しいため、まず同じ階の安全な区画へ移す水平避難を考えましょう。

水平避難では、防火戸で区切られた別区画やバルコニーなどに一時的に退避します。そのあと人員を確保し、階段や避難器具を使って地上などの安全な場所へ移動する流れです。

搬送方法は、入居者の状態と職員数に合わせて選びます。車椅子や車付きベッドは平面移動に向きますが、階段での移動は難しいため、複数人で安全に対応できる方法を確認しましょう。

担架で搬送する場合は、入居者の姿勢を保ちながら複数人で支えます。階段を降りる場合は、事前に職員の人数と足元の安全を確認しましょう。担架がない場合は、シーツや毛布を応急担架として使います。

参考:自力避難困難な者が利用する施設における一時待避場所への水平避難訓練マニュアルリーフレット|総務省消防庁

夜間の少人数体制を想定した訓練の計画

夜間は職員が少なく、入居者の避難行動も日中より難しくなります。介護施設では、夜間の勤務体制を想定した訓練を実施し、限られた人数でどこまで対応できるかを確認します。

夜勤者が1名の場合は、現場確認、119番通報、初期消火の順番が大きな課題です。また、避難誘導を始める基準も決める必要があります。すべてを同時に進められないため、命を守る優先順位を事前に決めておきましょう。

夜間訓練で確認したい項目は、次のとおりです。

  • 夜勤者の初動手順
  • 通報と館内放送の順番
  • 応援要請の連絡先
  • 水平避難の開始基準
  • 避難目標時間との差

仮眠中の発報を想定し、自動火災報知設備の発報後に15秒待ってから動き出す訓練方法もあります。近隣事業所や非番職員の応援体制がある場合は、実際に連絡し駆けつけ手順まで確認しましょう。

参考:社会福祉施設及び病院における夜間マニュアル訓練|高松市北消防署

消防訓練のやり方に関するよくある質問

消防訓練を初めて担当すると、実施回数や消防署への相談、罰則の有無で迷う場面があります。制度に関わる部分は、管轄消防署の案内と施設の消防計画を確認しながら進めるのが基本です。

最後に、防火管理者が押さえたい質問を解説します。

消防訓練は年に何回実施する義務がある?

防火管理者を置く施設では、消防計画に基づく訓練の実施が義務付けられています。実施回数は建物の用途によって異なりますが、介護施設は自力避難が難しい人がいる施設として特定用途防火対象物に該当する場合があります。

特定用途防火対象物では、消火訓練と避難訓練は年2回以上が必要です。通報訓練は消防計画に定めた回数で実施し、一般的には年1回以上です。

非特定用途防火対象物では、消火、避難、通報の各訓練を消防計画に定めた回数で実施します。施設の用途区分や必要な回数に不安がある場合は、管轄消防署へ確認しましょう。

回数を満たすだけでは、火災のときに職員が動ける訓練にはなりません。年2回のうち1回を総合訓練にするなど、施設の弱点を確認できる内容にすると実効性が高まります。

消防署に訓練の立ち会いを依頼できる?

消防署には、訓練の立ち会いや指導を依頼できます。特に初めて防火管理者として訓練を企画する場合は、自衛消防訓練通知書を提出する際に相談しておくと安心して進められます。

消火器や屋内消火栓などの設備を実際に使用する訓練では、安全確認や復旧作業が必要です。119番通報を実際に発信する訓練では、消防職員の立ち会いが必要になる場合があります。事前に管轄消防署へ相談し、当日の手順を確認しましょう。

立ち会いの可否や申込方法は、自治体や消防署の体制により異なります。希望日が近いと調整できない場合があるため、訓練日を決めた段階で早めに相談しましょう。

消防署の立ち会いがなくても、防火管理者を中心に施設内で訓練を実施できます。その場合も、届出の要否や通報訓練の扱いは管轄消防署の案内に従います。

参考:自衛消防訓練通知書(自衛消防訓練の通報)|東京消防庁

消防訓練を実施しない場合の罰則はある?

消防訓練を実施しない状態は、防火管理者の業務が適切に実施されていない状態とみなされる可能性があります。その場合、消防署長から防火管理業務の適正な執行を求める命令が出る場合があります。

命令に従わない場合、消防法上の罰則対象です。資料では、1年以下の拘禁刑あるいは100万円以下の罰金の対象になる場合があります。

法人等への罰則は、違反内容により異なります。火災で死傷者が出た場合は、刑事責任が問われるリスクも否定できません。訓練の記録と改善履歴は、防火管理者としての説明責任を果たすうえでも役立ちます。命令を受ける前の段階で、訓練記録と改善履歴を整えましょう。

参考:命令違反に対する罰則|消防法違反是正支援センター

まとめ

介護施設の消防訓練では、消火・避難・通報を分けて練習し、総合訓練で一連の動きを確認します。事前の自衛消防訓練通知書の提出も必要です。職員の役割分担、避難経路、入居者ごとの搬送方法まで決めておくと、当日の進行がスムーズに進むでしょう。

まずは消防計画と管轄消防署の案内を確認し、前回の訓練記録から次回確かめたい課題を1つ選びます。そのうえで、移動が困難な入居者への水平避難や夜間の少人数体制を想定し、訓練後の振り返りまで実施します。

訓練は回数を満たすだけでなく、職員が火災のときに動ける状態を作るための取り組みです。防火管理者だけの負担にせず、小さな改善を次回の訓練に反映し、火災時に迷わず動ける体制を職員全員で確認しましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。