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2026/04/27

避難所に行かない方がいい場合・行った方がいい場合の判断基準を解説

西條 徹

西條 徹

避難所に行かない方がいい場合・行った方がいい場合の判断基準を解説

大きな地震や台風のニュースを目にするたび「本当に避難所へ行くべきなのか」と不安に感じている方は少なくありません。小さな子どもや高齢の親御様がいる方にとって、避難所の混雑やプライバシーの問題は見過ごせない不安材料でしょう。

この記事では、避難所に行かない方がいい場合と行った方がいい場合の判断基準を解説します。在宅避難に必要な備えや支援の受け方など、知っておきたい情報もあわせてお伝えしています。

記事を最後まで読めば、災害時にご自宅の状況に合った避難行動を迷わず選べる判断力が身につくでしょう。

避難所に行かない方がいい場合の判断基準

災害が起きたとき「本当に避難所に行くべきなのか」と迷う方は少なくありません。避難の本来の目的は「難を避ける」ことであり、自宅の安全が確保されていれば避難所へ向かう必要はありません。

自宅にとどまって生活を続ける「在宅避難」は、プライバシーの確保や感染症対策の面でメリットのある選択肢です。在宅避難を選ぶには「自宅の安全性」と「十分な備蓄」が大前提であり、そのうえで家庭の事情に応じた判断基準があります。

ここでは、避難所に行かない方がいい場合の判断基準を詳しく見ていきましょう。

自宅に倒壊や浸水の危険がないのが在宅避難の大前提

在宅避難を選ぶための大前提は、自宅に倒壊や浸水の危険がない状態です。まずハザードマップで自宅の立地を確認し、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域に含まれていないかチェックしましょう。

建物の耐震性も見落とせないポイントです。新耐震基準と旧耐震基準の分かれ目は1981年6月ですが、判断の基準となるのは建物の完成日ではなく建築確認申請が受理された日(建築確認済証の日付)です。

自宅が旧耐震基準に該当するかどうか、建築確認通知書などで確認しておきましょう。

また、家具の転倒防止やガラスの飛散防止など、室内の安全対策を事前に済ませておきましょう。立地と建物の両面で安全が確認できれば、無理に避難所へ向かわず自宅にとどまる判断ができます。

参考:9月号特集「より良い避難生活を送るために 在宅避難という選択」|尾張旭市

乳幼児や高齢者がいて避難所生活が負担になる場合

小さな子どもや高齢者がいる方は、在宅避難を選んだほうが負担を減らせるでしょう。避難所では大勢の人と限られた空間で共同生活を送るため、プライバシーの確保が難しく、授乳や着替えにも制約が生じます。

環境の変化に敏感な子どもや高齢者は、慣れない場所で体調を崩す恐れがあります。周囲の騒音や硬い床での睡眠といった避難所特有のストレスも無視できません。

住み慣れた自宅であれば、周りに気を遣わず普段に近い環境で生活を続けられます。子どもの夜泣きや高齢者の介護にも落ち着いて対応できるため、負担が軽くなるでしょう。

関連記事:避難所に持って行かない方がいいもの・持っていった方がいいものとは?

ペットを飼っていて避難所への同伴が難しい場合

ペットを飼っている方は、避難所でのペット受け入れ体制を事前に確認しておきましょう。自治体が推奨する「同行避難」はペットと一緒に避難行動をとる意味であり、避難所の同じ空間で過ごせるとは限りません。

多くの避難所ではアレルギーや動物が苦手な方への配慮から、ペットは屋外の専用スペースでケージに入れて管理するのが一般的です。飼い主とペットが離れて過ごさなければならない場合、双方にストレスがかかります。

自宅が安全な状態であれば、在宅避難を選べばペットと離れずに生活できます。避難所への同伴が難しいと感じたときは、在宅避難を検討しましょう。

持病や基礎疾患があり感染症リスクを避けたい場合

持病や基礎疾患のある方は、避難所での感染症リスクに注意が必要です。避難所は不特定多数の人が限られた空間に集まるため、風邪やインフルエンザ、ノロウイルスなどが広がる恐れがあります。

断水時には手洗いや消毒が十分にできなくなるため、感染予防は容易ではありません。免疫力が低下した高齢者や持病のある方は感染すると重症化するリスクが高いため、感染症対策の面からも在宅避難が適しています。

自宅であればほかの人との接触を最小限に抑えられ、手洗いや換気といった衛生管理を自分のペースで徹底できます。持病のある方は、在宅避難に備えて衛生用品の準備を進めておきましょう。

十分な備蓄があり自宅のライフラインが確保できる場合

在宅避難を続けるには、ライフラインが止まっても自力で生活を維持できるだけの備蓄が必要です。最低3日分、できれば1週間分の水と食料を確保しておきましょう。

備蓄の目安として押さえておきたい品目は、以下のとおりです。

  • 飲料水:1人1日3リットル
  • 非常食:最低3日〜1週間分
  • 簡易トイレ:1人1日5〜7回分
  • カセットコンロとガスボンベ
  • 携帯ラジオやモバイルバッテリー

日頃から消費しながら補充する「ローリングストック法」で管理すれば、常に新鮮な状態で備蓄を維持できます。備蓄とライフラインの両面が整っていれば、避難所に行かない判断が現実的な選択肢になるでしょう。

関連記事:食料備蓄1ヶ月分リスト|必要量から保存のコツまで解説

避難所に行った方がいい場合の判断基準

避難所に行った方がいい場合の判断基準

在宅避難にはメリットがありますが、すべての状況で安全とは限りません。自宅の立地や建物の状態によっては、避難所へ移動したほうが命を守れるケースがあります。

自宅に危険が迫っている場合は在宅避難にこだわらず、速やかに避難所へ向かう決断が必要です。ここでは、避難所に行った方がいい4つの判断基準を解説します。

自宅が浸水・土砂災害の危険区域にある場合

ハザードマップで自宅が危険区域に含まれている場合は、在宅避難ではなく避難所への移動を最優先に考えましょう。津波浸水想定区域や土砂災害警戒区域、家屋倒壊等氾濫想定区域に該当する場所では、災害時に命を落とすリスクが高まります。

河川や海、崖の近くに住んでいる場合も警戒が必要です。避難経路が1つしかない立地では、道路が遮断されて孤立する恐れがあるため、早めの判断が求められます。

危険区域に住んでいる方は、災害の種類ごとの避難ルートを事前に確認しておくと安心です。自宅の安全性に少しでも不安がある場合は、ためらわず避難所へ向かいましょう。

建物に損傷があり余震で倒壊するおそれがある場合

地震で建物に大きな損傷を受けた場合は、余震による倒壊の恐れがあるため避難所へ移動しましょう。壁にひび割れが入っている、ドアや窓が開閉しにくくなったなどの異変がある場合は、建物の構造に深刻な問題が生じている恐れがあります。

災害が起きたあとは、自治体は建物の安全性を調査する「応急危険度判定」を実施します。「危険」を示す赤い紙が貼られた建物には立ち入れません。

「要注意」の黄色い紙が貼られた建物は立ち入り自体は可能ですが、在宅避難は避けたほうがよいでしょう。

建物の安全性が自分では判断できないときは、ひとまず避難所へ移動するのが賢明です。安全が確認されてから自宅に戻る柔軟な対応を心がけましょう。

ライフラインが完全に断たれ復旧の見込みがない場合

電気やガス、水道が長期間にわたって止まり復旧の見込みが立たない場合は、在宅避難の継続が難しくなります。備蓄だけでは限界があり、特に水の確保ができないとトイレが使えず衛生環境が急速に悪化するためです。

マンションなどの高層階では、停電でエレベーターが動かなくなると水や物資の運搬が困難になります。高齢者や体力に不安のある方にとっては、階段での移動そのものが大きな負担になるでしょう。

備蓄が底をつき生活の維持が厳しいと感じたら、無理をせず避難所へ移動しましょう。避難所では給水や支援物資の配布を受けられるため、自力での生活が限界に達する前に判断する姿勢が求められます。

危険区域で避難指示や警戒レベル4が発令された場合

市町村から警戒レベル4の「避難指示」が発令されたら、危険な場所にいる人は全員速やかに避難しなければなりません。この段階では、迷わず避難行動をとりましょう。

警戒レベルは全5段階あり、レベル3〜5の内容は以下のとおりです。

  • 警戒レベル3:高齢者等は避難を開始
  • 警戒レベル4:危険な場所から全員避難
  • 警戒レベル5(緊急安全確保):命が危険な状態

警戒レベル5はすでに安全な避難ができない状態のため、レベル4までに避難を終えておきましょう。ただし、次の3条件をすべて満たす方は屋内にとどまる「屋内安全確保」も選択できます。

  • 家屋倒壊等氾濫想定区域外
  • 浸水深より居室が高い
  • 水や食料の備蓄が十分

警戒レベル4の避難指示が発令されたら迷わず避難行動をとり、3条件をすべて満たす場合に限り屋内安全確保も選択肢として検討しましょう。

参考1:避難はいつ、どこに?|首相官邸ホームページ

参考2:防災気象情報と警戒レベル|首相官邸ホームページ

避難所に関するよくある質問

避難所に行かない選択をした場合「支援は受けられるのか」「必要な手続きはあるのか」と不安に感じる方もいるでしょう。在宅避難を選んでも行政の支援は受けられますが、そのための手続きや注意点を事前に把握しておく必要があります。

ここでは、避難所に関するよくある3つの疑問にお答えします。

避難所に行かない場合は自治体への届け出が必要?

在宅避難を選んだ場合、届け出の義務はありませんが、最寄りの避難所や支援拠点に「避難所利用者登録票」を提出しておくのがおすすめです。登録をしないと行政に存在を把握してもらえず、支援物資や情報が届かない恐れがあります。

登録を済ませておけば、食料や生活物資の配布を受けられるようになります。保健師の健康相談や最新の災害情報にもアクセスできるようになるでしょう。

自治体によってはLINEや電話で被災状況を登録できる窓口を設けている場合もあります。事前にお住まいの自治体がどのような登録方法を用意しているか確認しておきましょう。

避難所に行かない場合でも罹災証明書は発行される?

避難所に行かない場合でも、罹災証明書は問題なく発行されます。罹災証明書は被災した建物の損壊程度を自治体が調査・証明する書類であり、支援金の受け取りなど公的支援の申請に必要です。

この証明書は建物の被害状況にもとづいて発行されるため、避難所に滞在しているかどうかは関係ありません。全壊や大規模半壊などの判定結果に応じて受けられる支援内容が変わります。

災害が起きたあとに自治体から申請方法が案内されるため、情報を見逃さないようにしましょう。在宅避難を選んだ場合でも、支援を受ける権利は変わりません。

女性が避難所で安全に過ごすための対策はある?

避難所での女性の安全を守るため、国のガイドラインではさまざまな対策が示されています。どのような対策が取られているか知っておけば、避難所を利用する際の不安を軽減できるでしょう。

主な対策には、以下のものがあります。

  • トイレや更衣室、物干し場の男女別の設置
  • 夜間の照明確保と防犯に配慮した配置
  • 生理用品の配布は女性スタッフが担当
  • 当番制の夜間見回りや女性警察官の巡回依頼
  • 避難所の運営組織に女性を一定数配置

これらの対策が整っているかは、避難所によって異なります。不安がある場合は、自治体の防災担当窓口に事前に問い合わせておきましょう。

まとめ

避難所に行かない方がいいかどうかは、自宅の安全性や備蓄の状況、家族構成によって判断が変わります。ハザードマップの確認や備蓄の準備など、日頃からできる対策を進めておけば、緊急時にも落ち着いて判断できます。

まずはハザードマップで自宅の立地を確認し、建物の耐震性をチェックしましょう。そのうえで最低3日分の水と食料、簡易トイレなどの備蓄を整えておけば、在宅避難の体制が整います。

災害時は、ご自身の安全を一番に考えて行動することが何より大切です。この記事の内容をもとに、今日からできる防災準備を一つずつ始めていきましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。