BCPを策定していく上での重要なポイントについてお話ししていこうと思います。
ポイントとしては大きく2つあります。
1つ目は、まずどんな脅威に対応するかを決めてもらうことが大事です。リスク分析をする際に、まずひとつ、考えうるリスクや脅威の中で頻度と深刻度が高いものから考える。海辺の会社なら津波や地震、山や川が近くにあるなら水害など。まずひとつの脅威を決め、対策と対応を考えていき、それを基に他の脅威のパターンも考えていく方がスムーズかと思います。
想定されるすべてのリスクに対処するのは現実的とは言えませんし、対策の立てようがないものもあります。それよりもリスクを把握しておくことが大事です。また、BCPを発動するような事態になった場合、リソースもエネルギーも限られているので、リスクに優先順位をつけ、優先度の高いリスクに絞って、BCPを策定していく。
優先順位をつけるときのポイントは、リスクの発生頻度と深刻度です。月に1回、年に数回、数年に1回など、どれぐらいの頻度で発生しうるのか、実際に起きた場合にどの程度の規模で損害があるのか、という2通りの軸で総合的に判断することが大切です。
ーー優先順位の高いリスクを分析し、まずその脅威への対応を考える。それを元にすれば他の脅威への対応もスムーズに考えられそうですね。
そうですね、ひとつの脅威への対応を作り、運用していけば対応力は上がります。また、連絡体制や指揮命令系統は他の脅威において変動する可能性は少ないですし、対応のパターン化もできます。まずひとつの脅威を決めて、対応を作っていき、他の脅威も考えていく。そうすることで見落としなども防げますし、考えやすくなるでしょう。
もうひとつは、「事業の復旧や再開に向けての目標時間を決める」というのもポイントです。
電気・ガスなどのインフラが通っている場合、平日に起きた場合などの条件付けをして、復旧までの目標時間や日数をあらかじめ大体でいいので決めておく。ある程度でも目処が立っておけば安心でしょうし、遅延などによる損害を被っても見通しが立ちます。いつまでに、どのようにして復旧を目指すのかを決めておきましょう。ただ、すべてを網羅できないので、ある程度現実的なラインだけにしておくことが大事です。
事業復旧に向けての目標時間を決めるという意味でも、災害発生から復旧時までの流れを意識してつくると考えやすいと思います。BCPを、より具体的で実践しやすいものにするためには、災害が発生したときにどのような流れで事業を平常状態に戻すかをイメージすることが大切です。社員や建物の安全の確認や、被害状況の確認をし、どの事業から復旧していくかなど対応を決めていく。
ただ、実際にBCPを策定していく中でも、色んな切り口があるのです。
ーー例えばどのようなものがあるのでしょう?
例えば、想定しうるリスクから考えていく方法。地震が起きた場合はどんな対応をするのか、火事が起きた場合は、津波や洪水などの水害の場合は、など。リスクを切り口に対応をパターン化しておく方法ですね。
対して、脅威が起きた結果を想定して考えていく方法。建物が使えなくなった、電気が止まったなど、脅威が起きた後の結果を想定して、対応を決めていく方法ですね。
様々な切り口がありますが、どれが良い、というわけでもありません。考え方にバリエーションがあるので、それぞれの事業者に合った考え方で進めていくことが大事です。
ただ、BCPで作成したマニュアルは、そうした非常時のみ活用するわけではありません。年に1,2回程度は点検してアップデートを繰り返したり、訓練をしておくことが重要になります。
ーーそうですね。マニュアルを作っても活用できないと意味がないですし。
BCPを策定したけれど訓練やセミナーができておらず、活用できていないケースも少なくありません。年に1,2回は訓練を設け、しっかりと共有しておく必要があります。支社や部署ごとでもしっかりと訓練や書類確認を行い、点検をしておくことが重要です。そうした訓練の際に防災士などのプロをお呼びして、しっかりと知識と対策を頭に入れておくことをお勧めします。
ーーありがとうございます。BCP策定が人命や会社を守るためにいかに大事かが分かりました。
同じグループ内でもお互いがBCP策定をしていると、お互いに支援をしやすかったり、企業同士での助け合いが行える。自分達だけでの復旧が困難な場合でも、助け合えば復旧することができます。誰かに手を差し伸べるためにも、まず自分達の対策と対応を決めておくこと。 業種によっては事業がストップすることが人命に関わる場合もありますし、目に見える被害が少ない場合でもBCPを策定していなかったために、出荷よりも生産を優先してしまい倉庫に物が溢れてしまったり、部署ごとに仕事を進めて方向性がばらけてしまうこともあります。介護業界ではBCPの策定が義務化されましたが、社員と会社を守るためにも、多くの会社でBCPを策定しておくことが大事です。
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上場企業~中小企業、介護施設等へのBCP策定~運用の経験があります。