地域コミュニティに防災の要素を取り入れた活動を行っている金原さんにお話を聞きました。
ーー防災士の資格を持ちながら、掛け合わせて地域活動も行なっておられるのだとか。
そうですね、ラジオ体操やシニアダンス、ゴミ拾いなど様々な地域活動をするなかで、地域の方々と一緒に防災についての知識を広めたり、実践を試みています。ただ、防災を広めるために地域活動をやっているというよりは、もともとの地域活動に、防災の要素を取り入れていったんです。
ーー防災士の資格を取得される前から、地域活動をされていたんですね。
大阪・泉大津で地域活動をずっと続けていたんですね。前職は堺市の自治体職員をしていたのですが、泉大津での地域活動に力を入れたいなと思い退職し、本格的に活動していくようになりました。現在は、地域に住む様々な人がそれぞれの好きなことを協力しながらやってみるコンセプトで「みんなの楽校」というコミュニティを立ち上げ、運営しています。
メインで活動しているのは毎朝のラジオ体操と、おばあちゃんたちにダンスを教えるシニアダンス教室。他にも川でゴミ拾いをしたり、消防団に所属したりなど、活動は多岐に渡ります。特にラジオ体操は、365日毎朝やっているんですよ。
ーー365日、毎朝ですか?雨の日も風の日も?
以前までは雨の日は休みだったんですが、Zoomを導入したことにより現在はZoom参加も可能になりました。そのため、365日毎朝オフライン・オンライン両方でやっています。
ーー毎朝はすごいですね。地域活動はどのようなきっかけで始められたのでしょう?
8年ほど前からラジオ体操を始めているんです。最初は、自分の健康のために通っていたんですが、毎日通っていると皆さんと知り合いになってくる。そのうち、上手だからと前の方に押しやられ、いつのまにかラジオ体操を仕切る立ち位置になってしまいました。今ではラジオ体操の一級指導士の資格も取得しています。
生まれが泉大津ではなく、引越してきた身なので、子育ての情報を得るためにも地域コミュニティに顔を出したのがきっかけです。そのときに、新参者の私を気持ち良く受け入れてくださった方々がいたんですよね。そこから地域活動の面白さやコミュニティの暖かさを知り、自身でも始めていくことになりました。
ラジオ体操もそうですし、防災でもそうなんですけど、なかなかひとりでは続けられないんですね。ひとりではできないことでも、誰かと一緒ならできる。防災も、みんなで助け合ってしていくものだと思うので。そういう、「ひとりではなく、みんなで」というのは、コミュニティの持つ強さだと思います。
ーーたしかに、みんなで助かるという意識は、防災においても大事だと思います。防災士はどのようなきっかけで取得されたのでしょう?
そんなことを言いながらも、私のモットーは「自分でなんとかする」なんです。みんなで、の前にまず自分で、がある。あるとき、防災ってその要素がたくさんあるなと気付いたんですね。
災害大国である日本のことや、南海トラフの話を聞いているうちに、自然と防災に興味を持ち始めたんです。いつか来ると言われているものが来たときに、どうして自分はきちんと防災をしてこなかったんだろうと後悔するのが嫌だな、と思って。
しかも防災の場合は、知識が人を救うんです。特別な能力がなくても、知っていたり、備えていたりするだけで救える命がある。自分のみならず、誰かを救うことだってできる。お医者さんじゃなくても人を助けることができると思うと、勉強したくなったんですよね。そうして、資格を取得するまでに至りました。
自助・共助・公助の順番で、まずは自分から。そして共に助け合い、みんなで助け合えるようになればいい。逆に言えば、みんなで助け合えるようになるために、まずは自分から知識や備えをしておくことが大事だなと思っています。
ーーそうして、地域活動の中に防災の要素を盛り込むようになった。
地域の自治会など、小さいコミュニティ単位で防災ができたらいいなと思ったんです。どうしても情報が届かない方はいらっしゃいますし、行政の力だけで本当に全員に届けるのは難しい。小さい単位からも、防災についての知識や備えのカバーができればと思い、地域活動の中に取り入れるようになりました。
例えば、毎朝のラジオ体操後に公民館の部屋をお借りして、ラジオ体操に参加した方々向けに、簡単な防災セミナーやお話をしたりだとか。防災アプリのインストールや、ハザードマップを地域のみんなで確認したりと、顔見知りの皆さんでわいわいと話しながら、確認し合う。先日は備蓄リストを持ってきた方がいて、それをきっかけに何がどれだけ必要かを、自然とみんなで話し合っていました。
他にも、シニアダンスのミーティングではハザードマップを持ってきてもらって、みんなで確認するようにしています。防災単体で興味を持ってくださる方はどうしても少ないので、別のコンテンツを用意しながら、楽しみながら防災を学んでいく。そういう意味では、防災と地域活動は相性が良かったんですね。
同じ地域に住む人同士で、ダンスやラジオ体操などコンテンツの「ついで」に防災を学んでいく。様々な地域でそういった活動ができれば、助かる命は増えると思うんです。
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泉大津防災士の会、泉大津みんなの楽校BOUSAi部などを創設。自ら地域活動を行いながら、リクエストに応じて防災に関する啓発を行っています。