
「認知症ケア専門士の難易度はどれくらいなのだろう?」「取得後、本当に仕事に役立つのかな?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、認知症ケア専門士とは何か、試験の難易度、合格のコツ、取得後のメリット、さらには資格取得のデメリットまで徹底解説します。認知症ケアの質を高めるための重要な一歩になるでしょう。
これからの介護事業経営において、より質の高いサービスを提供したいとお考えの皆様、ぜひ最後までご覧ください。
認知症ケア専門士はどんな資格?
認知症ケア専門士とは、認知症介護のプロフェッショナルであることを証明する資格です。以下では、認知症ケア専門士という資格の概要、認知症ケア専門士と他の資格との違い、どんな職場で活躍できるのか?について解説します。
認知症ケア専門士とは
認知症ケア専門士とは、認知症介護のプロフェッショナルを目指すために設けられた、一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。この資格の設立目的は、認知症ケアにおける学識と技能、さらに倫理観を備えた専門技術士を育成し、日本における認知症ケア技術の向上と保健・福祉への貢献にあります。
この資格は国家資格ではなく、民間資格ではありますが、認知症介護の分野においては比較的メジャーな存在です。認知症ケア専門士とは、認知症介護の専門家を育成する重要な資格であるといえるでしょう。
参考:一般社団法人日本認知症ケア学会『認知症ケア専門士|公式サイト』
認知症ケア専門士と認知症介助士との違い
認知症ケア専門士とよく似た資格に「認知症介助士」という資格がありますが、これらの資格には、運営する団体と取得の難易度に大きな違いがあります。
認知症ケア専門士は一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する資格です。一方で、認知症介助士は公益財団法人日本ケアフィット共育機構が認定しています。
また、認知症ケア専門士は専門的な内容を学ぶ必要があり、受験するためには3年の実務経験が求められます。加えて、合格率も50%程度となっており、認知症ケア専門士の取得は難易度が高いとされています。
一方で、認知症介助士は入門的な内容を扱い、受験資格が特に設定されていないため、40分の検定試験に合格すれば誰でも認定されることが可能で、取得しやすい特徴を持っています。
このように、認知症ケア専門士と認知症介助士は、その目指す専門性の深さや取得へのハードルにおいて異なる点があるといえます。
参考1:一般社団法人日本認知症ケア学会『認知症ケア専門士|公式サイト』
参考2:公益財団法人日本ケアフィット共育機構『認知症介助士』
どんな職場で活躍できるのか?
認知症ケア専門士は、主にグループホームや高齢者介護を行う介護施設などで活躍しています。これらの場では、認知症を持つ高齢者の日常生活のサポートや、彼らの精神的な安定を図るための専門的な介護が求められます。
さらに、認知症ケア専門士は、認知症の治療を専門的に行う医療機関や、高齢者が多く入院する総合病院でも勤務することがあります。これらの医療現場においても、認知症患者の特性を理解し、適切なケアを提供することが重要とされています。
認知症ケア専門士は、こうした多様な現場で、認知症患者のQOL(生活の質)の向上に貢献しているのです。
取得の難易度と試験の流れ
ここからは、認知症ケア専門士の合格率と試験内容の詳細、さらに試験までの効果的な準備方法について解説します。
認知症ケア専門士の合格率
認知症ケア専門士認定試験は、これまでに18回開催され、その合格率は開始以来、おおむね50%前後で推移しています。これは、受験者の約2人に1人のみが合格していることを意味し、民間資格であるにもかかわらず、その難易度は高いと言えるでしょう。
合格するためには、認知症に関する専門的な知識を十分に身につける必要があります。認定試験に合格することは、認知症ケアにおける専門的な知識と技術を持っていることの証明となります。
したがって、受験者は認知症ケアの理論から実践に至るまで幅広い知識を習得し、試験に臨む必要があるといえるでしょう。
参考:一般社団法人日本認知症ケア学会『認知症ケア専門士情報』
試験内容の詳細
認知症ケア専門士の認定試験は、第1次試験と第2次試験の2段階で構成されています。
まず、第1次試験は筆記試験であり、その概要は以下のとおりです。受験料は3,000円に加えて、受験する4科目分として12,000円が必要となります。この試験はインターネットを利用したWEB試験で行われ、試験分野は「1.認知症ケアの基礎」「2.認知症ケアの実際Ⅰ(総論)」「3.認知症ケアの実際Ⅱ(各論)」「4.認知症ケアにおける社会資源」の4つです。合格基準は、これら4分野すべてで70%以上の正解率を達成することが求められます。
次に、第2次試験は論述と倫理研修で構成されており、その概要は次のようになります。受験資格は第1次試験の合格者、または特定の条件を満たした認知症ケア准専門士であることが必要です。受験料は8,000円で、試験内容は認知症ケアに関連する事例3題に対する論述です。合格判定は、適切なアセスメント視点、認知症への理解など、計5つの評価基準に基づいて行われます。
このように、認知症ケア専門士の認定試験は、専門的知識と実践的な能力を総合的に評価するための試験であり、合格するためには十分な準備が必要です。
参考:一般社団法人日本認知症ケア学会『試験概要:受験資格』
試験までの効果的な準備方法
認知症ケア専門士認定試験合格に向けては、まず「認知症ケア標準テキスト」を徹底的に学習し、テキストの内容を深く理解することが基本です。加えて、受験者の経験に基づく再現問題集やアプリを利用した演習を通じて、実践的な問題解決能力を養いましょう。
また、自学だけでは不安な場合やさらに学習を深めたい方は、日本認知症ケア学会が主催する受験対策講座を受講しましょう。こうした体系的な勉強法により、認知症ケアの専門家としての資格取得を目指すことができます。
認知症ケア専門士を取得するメリット
認知症ケア専門士を取得するメリットには、大きく次の2つがあります。
- 専門知識が深まり自信がつく
- 就職・転職で有利に
以下で、それぞれ解説します。
専門知識が深まり自信がつく
認知症ケア専門士の資格取得の過程で、認知症ケアの知識や技術が身につくことが大きなメリットです。この資格の試験では、1巻から5巻にわたる専用標準テキストから出題され、これにより認知症介護の基礎から応用まで体系的に学ぶことが可能となります。この学習過程を通じて、認知症の方への根拠に基づいた適切なアプローチができるようになり、仕事への自信につながります。
また、認知症ケアにおいては、ご家族の相談対応も重要な役割を担います。資格取得によって得られる知識と技術は、ご家族からの相談に対しても的確なアドバイスを提供できるようになるため、認知症ケアの質の向上に貢献できるでしょう。
就職・転職で有利に
認知症ケア専門士の資格は、その知名度の高さから、職場の推薦によって受験を決意する人が少なくありません。そのため、この資格を取得することで、認知症ケアの専門性をアピールできるでしょう。
さらに、転職活動や面接の際に自己PRを行うとき、資格の取得事実を伝えるだけでなく、具体的に学んだ内容やそれをどのように仕事に応用してきたかを説明することが効果的です。
このようなアプローチにより、認知症ケアに関する深い知識と、それを仕事に活かす能力を持っていることを採用担当者に強調でき、転職市場での競争力を高めることができるでしょう。
資格取得のデメリットは?
認知症ケア専門士の資格取得は多くのメリットをもたらしますが、一方で以下のようなデメリットも存在します。
- 取得までの経済的負担
- 資格更新の要件と労力
それぞれ解説します。
取得までの経済的負担
認知症ケア専門士の資格取得には一定の費用が必要です。一次試験の受験料は合計12,000円、二次試験の受験料は8,000円であり、一度の受験で合格した場合にも合計で20,000円の費用がかかります。この資格は民間資格であるため、公的な資格取得支援制度の適用外となり、受験料の負担は個人が負うことになります。
もちろん、ほかの資格取得においても受験料が発生しますが、認知症ケア専門士のような専門性の高い資格の場合、その費用はデメリットと感じるかもしれません。
しかし、この資格を通じて得られる専門知識や技術、さらにはキャリアアップや仕事への自信といった長期的なメリットを考慮すると、投資の価値は十分にあると言えるでしょう。
資格更新の要件と労力
認知症ケア専門士の資格は、取得後も継続的な学びと更新が必要です。専門士認定期間は5年ごとに設定されており、この期間が終了する前に資格の更新が義務付けられています。更新のためには、学会指定の講座を30単位受講し、毎年1月10日から3月31日までの更新申請期間中に10,000円の更新料を支払う必要があります。
もし、専門士認定期間中に必要な単位を取得できなかった場合は、更新保留申請を行い、期間を延長できます。しかし、この資格の維持には、定期的な学びの継続と経済的な負担が伴うため、一部の人にとってはこれが負担と感じられるかもしれません。
資格維持のためには、プロフェッショナルとして最新の知識を常に更新し続ける努力と、それに伴う費用の負担が不可欠であると言えるでしょう。
まとめ
認知症ケア専門士の資格は、認知症介護のプロフェッショナルを目指すために設けられた民間資格です。認知症ケア専門士の資格はその難易度の高さから、合格率も約50%となっており、専門性の深さと取得へのハードルが高いことが特徴です。
資格取得には、認知症ケア標準テキストの徹底的な学習や実践的な問題解決能力の習得が不可欠であり、これにより認知症患者のQOLの向上に大きく貢献できます。
さらに、専門知識が深まることで仕事への自信がつくだけでなく、就職や転職においても有利に働くことが期待されます。しかし、受験料や資格更新の費用と労力はデメリットとして認識する必要があります。
認知症ケア専門士の資格取得支援を通じて、より質の高い認知症ケアを目指しましょう。
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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。