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2024/04/05

共生型サービスとは?〜メリットから申請方法までわかりやすく解説〜

西條 徹

西條 徹

共生型サービス

「共生型サービスとは何か?」「自分の事業所に導入するメリットは何か?」という疑問をお持ちではありませんか?また、「実際に自分の事業所で共生型サービスを始めたいが、何から手をつければ良いのか?」と悩んでいる経営者や管理職の方も少なくないでしょう。

この記事では、共生型サービスの基本概念からメリット・デメリット、さらには申請方法まで、わかりやすく解説します。

介護事業の新たな可能性を広げる共生型サービスについて、今こそ深く理解し、事業への応用を考えてみませんか?この記事を読むことで、共生型サービスの全体像が明確になり、あなたの事業にどのように取り入れられるかのヒントが得られるでしょう。

共生型サービスの基本

まず、共生型サービスの基本知識について以下の観点から解説します。

  • 共生型サービスとは?
  • 共生型サービスが生まれた背景
  • 共生型サービスの種類と対象

それでは、一つずつみていきましょう。

共生型サービスとは?

共生型サービスは、介護保険サービス事業所と障がい福祉サービス事業所がお互いのサービスを提供しやすくなるようにする特例として、平成30年に設立された制度です。この制度は、障がい者や高齢者が同一の事業所で継続してサービスを受けられるようになるなど、地域共生社会の推進や福祉ニーズへの臨機応変な対応を目的としています。

例えば、65歳を超えた障がい者が以前と変わらず同じ事業所を利用できるようになることや、高齢者と障がい者の双方がより多くの事業所から選択できるようになることなどが挙げられます。

これにより、地域におけるサービス提供体制の整備や人材確保に貢献し、多様化・複雑化する福祉ニーズに柔軟に対応することが可能になります。共生型サービスは、福祉の枠組みを超えたサービス提供を実現し、地域社会の課題解決や目標達成に寄与することが期待されている制度です。

参考:厚生労働省『共生型サービス

共生型サービスが生まれた背景

共生型サービスの導入は、障がい者が65歳に達すると介護保険の被保険者となり、利用していた障がい福祉サービス事業所を変更しなければならないという状況が背景にあります。

この変更を余儀なくされる事情に対して、障がい福祉サービス事業所を利用する人やその家族から、「慣れ親しんだ施設でのサービスを継続したい」という強い希望が寄せられました。

これに対応する形で、2015年12月に社会保障審議会障害者部会で制度の見直しが提案され、その後2018年度の介護保険改正で共生型サービスの導入へとつながりました。

共生型サービスの対象

共生型サービス事業所になるためには、障害福祉サービスと介護保険サービスの間で共通する分野が対象となります。

具体的には、訪問系サービス、デイサービス、ショートステイ、さらに訪問・通所・宿泊を一体的に提供するサービスがこれに該当します。これらのサービスは、障害福祉サービスと介護保険サービスのいずれからも提供可能なため、共生型サービスの範囲内とされています。

一方で、放課後等デイサービスや介護保険の訪問介護のように、分野が異なるサービスを提供する場合は、それぞれが独立した事業所として指定申請を行う必要があります。この点には特に注意が必要です。

共生型サービスのメリットとデメリット

利用者がより便利に障害福祉サービスと介護保険サービスを利用できるように導入された共生型サービスですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。

ここからは、共生型サービスのメリット・デメリットについて、それぞれ解説します。

共生型サービスのメリット

共生型サービスの導入には、利用者と事業者双方にメリットがあります。

まず、利用者の観点から見ると、最も大きなメリットは65歳以上になっても、これまで通り同じ事業所を利用できる点にあります。これにより、長期間にわたって同じ職員からケアを受けることが可能となり、安定したサポートを受け続けることができます。

また、世代を超えた交流の機会が生まれることも大きな利点です。これにより、利用者は多様な年齢層の人々との交流を通じて、新たな刺激を受けたり、社会的なつながりを深めることが可能になります。

一方、事業者にとってのメリットとしては、サービス対象者の範囲が広がることが挙げられます。これは、事業所の経営基盤を強化するとともに、収益の安定化にもつながります。

また、事業所の多角化を進めやすくなる点も重要です。さまざまなサービスを一体的に提供することで、利用者のニーズに幅広く応えることが可能となり、事業の拡大に貢献します。さらに、共生型サービスは人材不足対策にも効果的です。多様なサービスを提供することで、様々なスキルを持った職員の活用が可能となり、人材の確保・育成にもつながるのです。

したがって、共生型サービスの導入は、利用者にとっても事業者にとっても多くの利点をもたらします。

共生型サービスのデメリット

共生型サービスの導入は多くのメリットを提供しますが、利用者と事業者の双方にとって、考慮すべきデメリットも存在します。

利用者に関して言えば、共生型サービスの特性上、心身の特性に応じた細やかな対応が難しくなる可能性があります。これは、異なるニーズを持つ利用者が同一施設内でサービスを受けるため、個々人の特性に合わせたケアが提供しにくくなることが原因です。

また、同年代の利用者が少ない、あるいは全くいない可能性もあり、これによって利用者が孤立感を感じる環境に置かれることも懸念されます。

事業者の側では、共生型サービスの運営には、介護保険と障害福祉サービスの両方に関する幅広い知識が必要となります。このため、専門性の高い教育や研修が求められ、運営の複雑化を招くことがあります。

さらに、職員と利用者の間に過度な馴れ合い関係が生まれないように注意する必要があります。密接な関係はコミュニケーションを促進する一方で、専門性や客観性を損なう可能性があるため、適切な距離感を保つバランスが重要になります。

したがって、共生型サービスのデメリットに対しては、利用者の多様なニーズに応えるための工夫や、事業者による職員教育と適切な関係性の構築が求められます。これらの課題に対処することで、共生型サービスがもたらす利点を最大限に生かすことができるでしょう。

共生型サービスの申請方法をわかりやすく解説

共生型サービスの申請の流れとしては、主に次の4つのステップに分けられます。

  1. 自治体への事前相談
  2. 必要書類を提出
  3. 審査開始
  4. 指定通知書の発行

以下で、それぞれ解説します。

自治体への事前相談

共生型サービスの運営計画立案には、まず自治体への相談から始めることが肝要です。それにより、事業所が現在どのような状況にあるのか、そして、どのような準備が必要かを明確にできます。

さらに、自治体との事前のやり取りでは、計画における不明点の解消や必要なガイドラインの確認などについても情報を得ることができます。

共生型サービスを円滑に開始するためには、自治体との密接な連携が不可欠であると言えます。事業者は、計画の初期段階で自治体に相談を行い、必要な情報収集と準備を進めましょう。

必要書類を提出

サービス開始の約2ヶ月前に、共生型サービスの申請書類を提出することが推奨されます。申請に際しては、電話での予約が必要な場合や、書類の綴じ方に特別なルールがある場合も考えられます。具体的な申請手続きの流れについては、事前に自治体の担当窓口で確認することが大切です。また、申請手数料が発生する場合は、書類提出時にそれも合わせて納付します。

大阪府を例に挙げると、必要な書類には以下のものが含まれます。

  • 指定居宅サービス・指定介護予防サービス事業者指定申請書
  • 指定に係る記載事項
  • 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
  • 運営規程
  • 誓約書
  • 障がい福祉サービス事業所の指定書(写し)または、更新をされている事業所は最新の更新書(写し)

これらの書類は、事業の質の確保や適切な運営を担保するために必要とされるものです。申請プロセスをスムーズに進めるためにも、必要書類の準備と、自治体の担当窓口での確認を丁寧に行いましょう。

参考:大阪府『共生型サービスの指定申請について

審査開始

共生型サービスの申請に際しては、審査期間に30開庁日前後が一般的に要されることを理解しておく必要があります。

審査の過程で、修正が必要な事項や追加で確認が必要な内容が発生した場合、担当者から連絡があります。こうした連絡には迅速に対応することが重要です。対応が遅れると審査の進行に影響を及ぼし、サービス開始のタイミングが遅れる可能性も考えられます。

また、審査内容によっては、現地での確認作業や担当者との面談が必要となる場合もあります。これは、申請された内容が現実の運営環境や規程に即しているかを直接確認するためです。

申請後の審査期間中は、自治体からの連絡に注意を払い、迅速な対応を心がけましょう。

指定通知書の発行

審査プロセスが終了し、共生型サービス事業所としての指定が決定された場合、事業所宛てに指定通知書が郵送されます。

共生型サービスのサービス開始時期は、基本的に毎月1日とされています。この規定により、事業所は計画的にサービスの開始準備を進めることができ、利用者に対してもサービス提供の開始日を明確に伝えることが可能になります。

指定通知書の受領とサービス開始の準備期間を有効に活用し、円滑なサービス提供開始に向けて計画的に行動しましょう。

まとめ

共生型サービスとは、介護保険サービスと障害福祉サービスを統合し、障害者や高齢者が同一の事業所で継続してサービスを受けられるようにする制度です。

共生型サービスは、利用者にとっては継続的なケアを受けられる安心感や世代を超えた交流の機会を提供し、事業者にとってはサービス対象者の拡大や事業の多角化による経営基盤の強化が期待できます。

しかし、細やかな対応の難しさや運営の複雑化などのデメリットも考慮する必要があります。共生型サービスの導入を検討している方々は、本記事を参考に、事前相談から申請、審査、サービス開始に至るまでのステップを進めていきましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。