まず、整理も防災も、やらなきゃいけないとは思いながらも、やれていないことが多いんですよね。いつか、また今度、と先延ばしにしてしまう。ただ、整理も防災も生活していく上で日常のことなんです。特に防災は「非日常」だと思われがちですが、災害はいつ起こるか分からない。今かもしれないし明日かもしれない、という意味では日常です。です。だからこそ、日常の中でしっかりできることをしておく、というのが大事になってきます。今回は生活を改善することが防災にも繋がる、という点でも、色々とご紹介できたら。
ーーありがとうございます。
青木さんは、整理収納アドバイザー1級と防災士資格の両方をお持ちとのことですが、先に取得したのはどちらだったんですか?
先に取得したのは、整理収納アドバイザーなんです。
元々「お片づけ」が好きだったんですよね。前職はKUMONの先生をしていたんですが、とても忙しいんですよ。学校が終わる時間になると生徒が一気にやってくるので、ピークの時間はとんでもなく忙しい。そのときに、いかにストレスなく、スムーズに生徒たちに教えることができるだろうと考えたときに、整理整頓をしっかりとしておくことが大事だと気付いたんです。自分が忙しくならないように、いつ何が起きても対応できるように、普段から整理整頓をしておく。そうすることで、ピークの時間でも慌てず余裕を持って対応できるようになったんですね。ちょうどその時期に、整理収納アドバイザーという資格があることを知って、取得しようと思ったのがきっかけです。
防災士の資格は、その三年後に取得しました。というのも、整理収納について勉強していたとき、すごく防災に繋がってるなと感じていたんですよ。実際にお客様のお家をお片づけしていても「高いところに重いものがあるのは危ないな」「緊急用品がすぐに取り出せない場所にあるぞ」など、整理収納と防災が密接な関係にあることを肌で感じたのがきっかけです。お家を快適にすることと、防災は繋がっている。整理収納のアドバイスをするなら、防災の事もきちんと知った上で教えたいなと思い、防災士の資格を取得しました。
ーー整理収納をしていく上で、防災に対する視点が育っていった。
ちなみに、整理収納アドバイザーとは、具体的にどのようなお仕事なのでしょう?
現場でお客さんのお家のお片づけをしたり、講座で収納テクニックを教えたりと多岐に渡ります。捨てられない人には捨てられない人なりのお片づけの仕方があるので、お片づけが苦手な人に寄り添って、一緒にお家を快適にしていくお仕事ですね。最終的には自分でお片づけができるように導いていくのが仕事です。私の場合は、そこに防災の観点からのアドバイスも含めて教えていきます。
例えば、生活をしていると、捨てる機会を作らない限り、ものはどんどん溜まっていきますよね。「整理」と聞くと、捨てることだと思う人が多いんですが、そうじゃないんです。まずは、よく使うものとそこまで使わないものを分けるところから始めていきます。
そして、ものを使うときのシチュエーションや頻度に合わせて、収納場所や仕方を考える。普段使っているものと、使っていないものをしっかり分けて、よく使うものをすぐに取り出せるような場所に収納する。そのときに「なるべく動かないで直せる」というのがポイントです。使ったものを直すまでに何歩も歩く場所に収納するのではなく、できれば0、1、2歩の距離ぐらいの場所にしておく。逆に言えば、使いたいときにすぐに取り出せる場所に収納しておくこと。防災もそうですよね、いくら緊急用品を用意していても、押入れの奥に収納していては意味がない。
ーー今のお話しだけでも、防災に繋がるポイントがたくさんありますね。
具体的に、防災に繋がる整理収納のポイントをいくつか教えていただいてもよろしいでしょうか?
講座などでお話しする、防災に繋がる整理収納では、部屋別に危ないところをチェックしていくんですね。色んな間取りがあるとは思いますが、一番危険が多い部屋はどこだと思いますか?
ーーうーん、寝室でしょうか。
寝室も、寝ている時間は危ないですね。ただ、一番危険が多いとされている部屋は「キッチン」なんです。刃物も火口もガスもあるし、食器やグラスなど割れ物も多い。お昼間の時間だと、お母さんたちはキッチンにいる時間が多いこともあり、ガラスの飛散防止シールを貼ったり、食器が揺れたときに飛び出してこないように滑り止めシートを敷いておくなど、まずはキッチンの防災からしていきましょう、という話をします。
寝室の場合だと、家具の向きに気をつけることが大事です。家具が倒れてこないように、というのはもちろんですが、倒れたときに扉を塞いでしまう場所に設置するのも危険です。家具の転倒防止はもちろん、経路を塞がないよう向きに気をつける。
他にも、枕元に避難用の靴を置いておく事ですね。地震などの災害が起きた場合、部屋に物が散乱して足を怪我する可能性があり、避難が遅れる場合があります。枕元やベッドの近くに、避難用の靴を置いておくことで、スムーズな避難が可能です。
また、玄関や廊下は避難経路なので、できるだけ物を置かない。避難する時につまずいて避難が遅れることだってあります。玄関口に出しておく靴も、なるべく1人1足に。。どの靴にしよう?という一瞬の迷いが命取りになるケースがあるので。
リビングの場合は、家族みんなの物が集まりやすい場所なので、ルールを作って物が集中しすぎないようにする。重いものは高い場所に置かないこともポイントですね。皆さん、あまり使わない重い物を上の方に置きがちなんですよね。地震が起きた際に怪我をする原因にもなるので、重いものはできるだけ下の方に収納しておくこと。
今挙げたポイントだけでなく、日々の整理収納ができていなければ、必要のないものを出しっ放しの状態で避難することになるので、大変です。
ーー部屋別に意識するポイントが違う。つまり、緊急時のことを考えて収納しておく、ということですね。整理収納の「使用するシチュエーションを考えて収納する」にも繋がりますね。
最初にも言いましたが、災害が起きるのは「日常」です。だからこそ、日々の整理収納をしっかりとしておくこと。お家を快適にすることが、防災にも繋がりますから。
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