ーー地域コミュニティに防災の要素を取り入れた活動を行っている金原さんにお話を聞きました。
防災に限らず、小さい単位だからこそできることがあるんですよね。そのひとつが、地域コミュニティだと思っています。
いまや、地域コミュニティを運営している方は多いでしょう。私の場合は「今ある条件で最善を考える」という考え方でコミュニティを運営しています。どうしても「正解」を求めがちなんですよね。人生においてもそうですし、非常時にしても「これが正解だよ!」と教えてくれる人なんていません。ただの勉強会でも、正解を求めるのではなく、みんなで条件の中から最善を探し合う、というスタンスで開催しています。「みんなで学ぶ」という意識を持って運営する。私の言うことがすべて正解というわけでもないですし、それぞれに事情や理由もありますから。ただ、そういう地域コミュニティができたら、強いなと。
ーー様々なことを、能動的に学んでいけるわけですね。
地域活動から防災へと繋いでいく中で、大事にされていることはありますか?
「地域」だからこそできることは何だろう、という点ですね。
大衆向けに防災の話をされるのと、地域の人が、地域の人に向けてみんなで助け合いましょうねと話をするのとでは、聞いている人たちの受け入れ方が違うと思うんですよ。地域活動をしている人だからこそ、伝えられる、というより伝わる。それは顔見知りだったり、普段の生活から構築されている信頼関係ですよね。近い人だからこそ、小さい単位だからこそできること、やり方があるんじゃないかな。
そういう意味でも、様々な方に防災を学んでもらって、知識や繋がりを広げていきたいですね。自分の住む国、県、地域、街、家族に、恋人に、といった具合で、コミュニティの単位を細かくしていったときに、そこに属している人から聞いた方が受け入れやすいでしょうから。
ーー確かに、同じ境遇やコミュニティの方から言われれば、ちょっと気にしてみようかなと思います。
形式ばったセミナーだけでなく、普段の会話の中から防災についての知識や話題を盛り込んでおくんです。「そういえば、あそこの学校は避難所になってるらしいね」なんて具合に。それは関係性があるからこそできることですよね。防災用品でも「これを用意してください」だけでなく、「あそこの薬局でだいたい揃うよ」とか「それはあそこのスーパーになら売ってた!」まで言えますから。そうした強みが、地域コミュニティにはある。
ーーそれは面白いですね。どこでどう揃うかまで言える。他に、防災に興味を持ってもらうために意識していることはありますか?
まずは自分自身が楽しむことですね。知識や専門性に偏り過ぎてしまうと、どうしても堅い話になってしまったりする。そうじゃなく、双方向のコミュニケーションをとりながら、時には笑いを交えたりしながら会話を重ねていく。「防災って意外に楽しいんですよ!」というのを伝えながら話していきます。面倒なものだと捉えている人が多いんですが、知らないことを知る楽しさは大いにあるし、その知識を自分はもちろん、大切な人に活かすこともできますから。あと、ひとつでも今すぐ行動できるというのは、防災の楽しさでもありますね。
あとは、住む人によって情報を変えることです。それこそ、地域に住む人たちに「日本は災害が多いんです」と日本を主語にしてもあまり伝わりませんが、「隣の〇〇川は氾濫の危険があるね」と話すと、伝わるんです。主語を小さくしていって、自分たちの住む地域の固有名詞を交えながら話していく。そうするだけで、遠くのことではなく「身近なこと」だと伝わります。
ーーなるほど!固有名詞を自分の地域に置き換える。そうするだけで、当事者意識が芽生えますね。
他にも、別のコンテンツと抱き合わせにしたり。私の場合は、ラジオ体操がそうですね。
また、防災を知識だけでなく、体験することをコンテンツにするだけでも参加してくれる方は多いんですよ。例えば保存食品も、知識や備蓄はあるけれど、実際にやったことがない人がほとんどです。じゃあ来週、公民館に集まってみんなで実験してみましょうよ、と。地域のみんなで楽しみながら、災害用品を実際に使ってみたり、保存食の調理をしてみたり、体験がコンテンツになるんです。その日も、お料理教室みたいで楽しかったですし。
あとは、地震速報や洪水警報などが出た次の日は、高齢者の方や地域の方の興味関心の度合いが違いますね。みんなの感度が上がる瞬間を逃さずに、普段の会話で防災の話を入れてみたり、「今度、防災についてみんなで学びましょうよ!」と機会を提案する。そういう小さな積み重ねが、輪を広げていきます。
ーーありがとうございます。では最後に、同じように地域活動をされている方に向けて、アドバイスなどありますか?
ありがとうございます。では最後に、同じように地域活動をされている方に向けて、アドバイスなどありますか?
また、頭だけでなく身体で覚えることをテーマに防災をやってみる。その知識、実際にできますか?という点で地域の人たちを巻き込んでいけたらいいですね。地域にはそうした役割もあると思いますし、大きなコミュニティではできないことだと思うので。小さいコミュニティや地域だからこそできることを、どんどんやっていけたらいいと思います。もちろん、楽しみながらが一番ですね。
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泉大津防災士の会、泉大津みんなの楽校BOUSAi部などを創設。自ら地域活動を行いながら、リクエストに応じて防災に関する啓発を行っています。