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「BCPとは?」を分かりやすく解説

阪上 聡

阪上 聡

BCPとは「Business Continuity Planning」の略称です。 「Continuity」は継続、「Planning」は計画ですから、直訳すると事業継続計画と言ったところでしょうか。事業計画ではなく、事業を継続するための計画です。

BCPの目的は自然災害やテロ、システム障害などあらゆる脅威に遭遇した時に損害を最小限に抑え、重要な業務を継続し早期復旧を図ることにあります。簡単に言ってしまえば、何かしらの脅威に備えたマニュアルのことです。
ポイントとしては、業務マニュアルではないという点ですね。緊急事態が起きて業務が止まる、止める必要のある場合、社員の安全を確保し被害を最小限に抑え、事業をいかに早く復旧させるかについてのマニュアルです。
また、BCPは「発動」という形で施行されます。何かしらの脅威が起きた場合、普段の業務を止めてでもBCPで策定したマニュアルに移行しなければなりません。

ーーBCPの策定が話題になっている理由はなぜでしょう?

BCPという言葉自体が出てきたのは、日本では2011年の東日本大震災がきっかけですね。しかし、リスクマネジメントという意味合いでは、ずっと昔から考えられてきたことです。
日本が災害大国であることや、昨今のコロナウイルスの蔓延など、事業がストップしてしまうケースは身近に感じられるようになりました。そういった事態に直面しても、社員の安全を守り、事業を継続し会社を存続させるためにもBCPの策定は必須です。
特に、2021年4月に施行された「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」内で、2024年から介護業でのBCP策定が義務づけられたことも大きいですね。

ーーBCPは、どのような脅威に備えたものなのでしょうか?

BCPがカバーする脅威の例としては、「防災」「防疫」「防犯」「その他」の大きく4つに分類されます。

まず「防災」
災害大国である日本では、こちらがメインの対策になるのではないでしょうか。地震、津波、水害など、立地条件に応じてリスクの優先順位も変わってきます。
2つ目に「防疫」
昨今のコロナウイルスの蔓延における状況はまさにそうですね。他にも業界によっては、鳥インフルエンザや狂牛病などによって事業が停止してしまう場合もありますね。
3つ目の「防犯」は、テロ対策などが含まれます。
日本ではあまり馴染みがないので、リスクの優先順位としては低そうです。業種によっては、サイバー対策なども当てはまるでしょうか。

そして、その他のケース。例えば東日本大震災時に起きた計画停電などもそうですね。ただ電気を消して蔵や闇の中で過ごすわけではなく、冷蔵庫の電源が入らないなど、業務に支障をきたす場合が考えられますね。他にも近日にもありました通信障害など、やむをえず事業がストップしてしまう可能性のあるケースが含まれます。
挙げました通り、BCPで考えうる脅威には様々なものがあります。これに対して、どのように対策をし、対応を決めておきましょうというのが、BCPで策定する内容になります。

また、今挙げた脅威の例は、会社や組織の立地条件によってもリスクの大きさが変わってきます。例えば、海の近くであれば津波、山がある地域なら水害や土砂崩れといった災害のリスクが高い。
また、当然ですが業種によっても事前の対策、事後の対応は違います。そのため、会社や学校、自治体など、業種業界によって個別にBCPを策定していく必要があります。ひとえに同じ対策・対応を取れば良い、というわけではありません。

ーーそもそもですが、事業継続のためにどうしてBCPの策定が必要になるのでしょう?

それは、BCPが単なる防災対策と異なり、目的を「事業の継続」に明確に置いて、具体的な行動指針を示していることにあります。

まず、「防災対策」とはその名の通り「対策」ですので、事前に行うものです。しかしいくら対策をしていても、脅威はやってきます。その後にどうするかの「対応」を決めておかなければ動けません。脅威が起きてからでは遅いですし、対応を決めるだけでも時間がかかってしまいます。

また、単なる防災対策とは違い、事業の継続や再開、復旧を目的としているので、対策や安否確認だけでなく、事業を継続させるために必要な「ヒト・モノ・カネ・情報」といった仕事のリソースをいかに確保するかの対応が組み込まれている、という点ですね。事業を継続させることは、社員を守ることはもちろん、自分たちのサービスを利用していただくお客様を守ることにも繋がります。特に介護や医療において、事業が復旧しないことは人命に関わることですから。

BCPを策定をすることで「緊急時にどのようなリスクがあるのか」「どのように対応するか」など、事業継続に関わる障害を認識することができ、災害などの脅威が襲ってきた場合に、損害を最小限に抑えて事業の継続・復旧が可能になります。

ーーBCPを策定したおかげで助かった具体例などはあるのでしょうか?

もちろんです。例えば、災害復旧に使用する車の駐車場所が、津波の届かない高台の駐車場だったため復旧活動がスムーズになったり、新幹線を一時的な避難所として活用できたなど。
逆に、BCPの策定をしていなかったため、事業が継続できなかった例も多いです。
例えば、建物や人が無事でも、製造に使用するモノが届かないので生産できない、などの状況で事業が継続できなくなったり。その逆のケースもあって、製造業の場合、緊急時の対応を決めておらず、事業を普段通りに行おうとしたため、出荷や販売が行えないような状況の中、生産ルートのみが機能して倉庫に物があふれかえってしまった、など。緊急時の対応をしっかりと決めておけば、防げたリスクの例はたくさんあります。

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上場企業~中小企業、介護施設等へのBCP策定~運用の経験があります。