我々が介護施設のBCP策定のお手伝いをさせてもらうにあたって、大まかな流れとして、7つのステップに分けて説明をしております。このステップを踏んでいくうちに、途中でBCPの書類は出来上がる形です。
まず、最初のステップとして「①体制づくり」をしていきましょう。
事業者の組織状況の確認、スタッフさんが何人いて、連絡体制はどうなっているかなどを体制図という形で、1枚ものとしてまとめましょう。現場に常駐していない社員の方もいるでしょうし、そのあたりも踏まえながら、誰が責任者なのか、指示を出すのかなど、体制を整えておきます。
プラス、安否確認の検討も大事ですね。夜間に災害などが起きた場合、滞在しているスタッフは少数でしょうから、他のスタッフに誰がどう連絡を取り安否を確認するのかを決めておく。連絡体制に加え、安否確認まで出来る体制をつくっておきましょう。
続いて、「②リスク分析」を行います。
建物の立地条件や、足の動けない利用者さんが何階、自力避難ができる人は何階にいるなど、施設ごとに入居者さんの情報をもとに、そこから想定されるリスクを整理していきます。
ーーこのあたりが、一般的なBCPとは異なりますね。建物の立地条件から想定されるリスクだけでなく、入居者さんの状態によっても、リスクが変動してくる。
そうですね。入居者さんの情報や、施設の造りなどを教えてもらいながら、一緒にリスクを分析していきます。もちろん施設ごとに差はあるので、それぞれに合わせたリスクの分析と対応が必須です。
リスクの分析が終われば、次に「③そのリスクへの対策・対応を検討」していきます。リスク分析の結果を受けて、事前に行う対策を決めたり、ライフラインをどう確保するかなど、BCP発動後の対応を検討しましょう。
例えば洪水による浸水リスクが高い場合は、垂直避難の検討や、土嚢の準備、車両や機器の避難を考えておく。
他にもインフラが停止した場合やその備え、食料・消耗品の調達困難になった場合はどうするのか。同じ法人内の別の施設と協力して融通してもらったり、お互いに協力し合う形で事前に別の事業者と連携しておくことも視野に入れて、対策・対応を考えていきます。
リスクを分析し、その対策と対応がある程度決まれば、「④BCPとして計画書をまとめる」ステップです。計画書の中に先ほど決めた安否確認や体制づくりなどの他に、現存する書類として避難手順や安全計画などがあればそちらも含め、書類としてまとめていきます。
一般的にはここまでのステップをBCPの策定として、半年程度の期間で準備し、実施していく流れです。2・3ヶ月で出来ないか、と言われることも多いのですが、突貫工事になってしまう可能性もあります。また、複数の施設をお持ちの介護事業者様も多いので、しっかりと時間をかけて、BCPを策定していきましょう。
ーーここまででBCPとしては完成するわけですね。今後のステップはどのような流れになるのでしょう?
義務化されているのはBCP策定までなのですが、いくらBCPを策定したといっても、それがスタッフ内で共有されていなかったり、頭に入っていなければ意味がありません。ですので「⑤BCPを基にした教育や研修」を行いましょう。
といっても、現在はコロナウイルスの蔓延のため、全員を集めて研修を行うことは厳しいでしょうし、介護サービスにおいて全社員を1箇所に集めることは業務の停止を意味するので、動画教材を作成するなど方法を検討しなければなりません。できれば1年に1回は研修を設け、しっかりとBCPを共有するようにしておきましょう。
続いて、教育や研修のみならず「⑥BCPを基に訓練を行う」。
施設が以前からやっている避難訓練や、一般的な防災訓練で十分だと考える方が多いです。が、あくまでBCPが発動される場合の訓練をお勧めしています。BCPは自分たちの施設に合わせて対策や対応を決めているので、BCPの中身に沿った訓練を実施すれば、しっかりと対応を共有することができます。
最後に、「⑦訓練後の課題解決や改善を行う」。
そもそも訓練を実施する意味合いとしては、しっかりと対応を頭に入れておくことの他に、書類上では見つからない課題や改善点が洗い出せる点も大きいんですね。10分で避難できると思い、そう書いてあっても、実際にシミュレーションしてみると20分の時間が必要だった、というケースが実際に多いんです。なので、訓練を実施することでBCPのアップデートを繰り返し、緊急時の対応をしっかりと共有しておきましょう。
ーーBCP策定後も、研修や訓練を行い、中身のアップデートを繰り返していく必要がある。改めて流れを整理していただけますでしょうか。
①体制づくりを行う、②リスクを分析する、③リスクの対策と対応を決める、④BCPとして書類にまとめる。そして、⑤BCPを基にした教育や研修、⑥訓練を実施し、⑦課題解決や改善を行なっていく。
①〜④までがBCPの策定として、お手伝いが可能です。また、繰り返しますが書類だけ作ればいいというわけでもありませんので、研修や訓練なども必須となってきます。そうしたBCPの教育研修や訓練実施においても、専門家が対応することも可能です。
ーー介護施設においてBCPは義務化されただけでなく、利用者さんを守るためにも必要なことだというのが分かりました。阪上さん、今回はありがとうございました。
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上場企業~中小企業、介護施設等へのBCP策定~運用の経験があります。