
「新人から質問しづらいと相談があった」「OJT担当に配置したベテラン職員のもとで、新人の早期退職が続いている」と悩みを抱える介護現場の管理職は少なくありません。介護スキルが高い職員でも、指導の仕方によっては新人の成長を妨げてしまうケースもあるでしょう。
この記事では、OJTに向いてない人に共通する7つの特徴と、担当者が合わないときの具体的な対処法を解説します。担当者の交代や複数担当制の導入、フォロー面談の活用など、組織として取り組める改善策も紹介します。
読み終えるころには、自施設のOJT担当者の課題を客観的に把握し、新人が安心して成長できる育成体制の見直しができるでしょう。
OJTに向いてない人に共通する7つの特徴
OJTの成果は担当者の資質に大きく左右されます。介護スキルが高いベテランでも、教え方に問題があると新人は萎縮し、早期退職につながる場合も少なくありません。
ここでは、OJTに向いてない人に共通する7つの特徴を整理します。自施設の担当者に当てはまるものがないか確認していきましょう。
感情をコントロールできずつい叱責してしまう
新人のミスに対して感情的に叱責する人は、OJT担当者には向いていません。否定的な言葉で指導を始めると、新人は心理的安全性を失い本来の力を発揮できなくなります。
「怒られるのが怖い」と感じた新人は、質問や報告をためらうようになるでしょう。わからないまま業務を続けると、同じミスの繰り返しや介護事故のリスクが高まります。
介護現場では利用者の安全に直結する場面が多いため、新人が萎縮して声を上げられない状況は深刻といえます。指導時の言葉選びや感情の管理ができているか、上司の目線で確認してみましょう。
自分の業務を優先し指導を後回しにする
担当者自身の業務評価や目先の目標達成を優先するあまり、新人教育を「片手間」と捉えてしまう人がいます。教育を後回しにすると、新人には雑な説明しか伝わらず放置に近い状態が生まれます。
新人が質問や相談をした際に「いま忙しい」と切り捨てる対応が続けば、新人は自分が大切にされていないと感じるでしょう。結果としてモチベーションが低下し、離職を検討する原因になります。
OJT担当者には、自身の業務量と育成業務の優先順位を適切に管理する力が求められます。業務と指導のバランスがとれているか、定期的に上司が状況を確認しましょう。
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やって見せるだけで言葉の説明が不足する
実演を通じた指導は有効ですが「見て覚えるもの」と考える人は言葉での説明が不足しがちです。模範を見せるだけでは、新人は業務の本質を理解できないまま表面的な動きを真似するだけになります。
現代の新人はマニュアルを読んで論理的に学ぶスタイルに慣れているため、言語化された説明がなければ成長スピードが落ちてしまいます。「その手順で動く理由」まで伝えなければ応用力は身につきません。
とくに介護の現場では利用者ごとに対応が異なるため、理由を理解していないと臨機応変な判断ができなくなる場合があります。「やって見せる・説明する・やらせてみる・評価する」の4段階で指導する意識をもちましょう。
相手の理解度を確認せず一方的に進める
指導に慣れていない担当者の場合、自分の知識量を基準にして話を進めてしまうケースがあります。専門用語を多用したり修正点だけを一方的に伝えたりすると、新人は内容を理解しきれず同じミスを繰り返します。
指導の途中で「ここまで大丈夫?」と確認する一言があるだけで、理解のズレは大幅に減るでしょう。質問や反応を引き出す姿勢がなければ、新人がどこでつまずいているか見えてきません。
介護記録の書き方ひとつでも、新人にとっては初めて触れる用語ばかりです。相手の知識レベルに合わせて伝え方を調整できているか、振り返ってみましょう。
新人への関心が薄く変化や成長に気づけない
新人の表情や行動の変化に気づけない人は、適切なタイミングでフォローができません。つまずいているサインを見逃すと放置と同じ状態になり、新人は孤立感を深めていきます。
成長したポイントを見つけて声をかけるフィードバックがなければ、新人は自信を失ってしまいます。「いつになっても仕事ができるようにならない」と感じて精神的に追い詰められるケースもあるでしょう。
介護現場は、身体的にも精神的にも負担が大きい職場です。新人の小さな変化に気づき、適切に声をかける観察力があるかどうかを担当者の選定基準に加えましょう。
自分のやり方だけを押しつけ柔軟に対応しない
「自分のやり方が正解」と信じて疑わない人は、新人の個性や強みを活かした指導ができません。担当者の型を一方的に押しつけると、新人が自分で考えたり工夫したりする余地が失われます。
人によって理解のスピードや得意な学び方は異なるため、画一的な指導では成長を妨げてしまう恐れがあるでしょう。新人の特性に合わせて教え方を変える柔軟性が欠けていると、指導効果は大きく下がります。
介護の技術は利用者の状態に応じて変わるものであり、唯一の正解はありません。新人が自発的に考え、試行錯誤できる余地を残す指導スタイルを目指しましょう。
忙しさを理由に指導の時間を確保しない
業務量の多さを理由に育成の時間を削る人は、指導の質を著しく低下させます。「教える余裕がない」と口にする姿勢は、組織全体に「教育の優先度は低い」と誤ったメッセージを広げる原因にもなるでしょう。
説明不足や放置が続くと、新人は質問をためらい始めます。業務ミスの増加や成長の遅れにつながり、現場全体の負担がかえって増えてしまうでしょう。
担当者の努力だけでは解決できない場合もあるため、業務量の調整を組織として検討する必要があります。指導時間を確保できる体制がつくれているか、管理職の立場から見直してみましょう。
OJT担当者が合わないときの対処法

OJTに向いてない人の特徴に担当者が当てはまる場合でも、すぐに交代させるだけが解決策ではありません。組織の仕組みやサポート体制を整えれば、指導の質は改善できます。
担当者と新人の双方が前向きに取り組める環境をつくるために、具体的な対処法を見ていきましょう。
担当者と新人の相性を上司が客観的に見直す
OJTの成否は、担当者と新人の相性に大きく左右されます。年代の差やコミュニケーションスタイルの違いが大きいと、信頼関係の構築に時間がかかり指導効果が薄れてしまう可能性があるでしょう。
「キャリアアンカー」や「ソーシャルスタイル」などのアセスメントツールを活用すれば、性格特性や志向性を客観的に把握できます。感覚的な判断ではなくデータに基づいてマッチングを検討する方が、双方の納得感が高まります。
相性の問題は、担当者本人の努力だけでは解消しにくい領域です。上司が定期的に関係性を観察し、必要に応じてペアの見直しを検討しましょう。
OJT担当者を途中で交代・複数担当制に変更する
担当者1人に育成の負荷が集中している場合は、複数担当制(サブトレーナー制度)の導入が効果的です。複数の先輩が役割を分担して指導にあたれば、多角的な視点からフィードバックを受けられる環境が整います。
担当者が不在のときでも教育が止まらないため、新人育成に遅れが生じません。人間関係のミスマッチが深刻な場合には、途中でペアを交代できる柔軟な仕組みも有効です。
「担当者を代える=担当者を否定する」と捉えられないよう、制度として複数担当制を取り入れれば、個人の評価に影響を与えずに対応できるでしょう。
新人から直接ヒアリングして状況を把握する
OJTがうまくいっていない兆候がある場合は、新人から直接状況を聞き取る場を設けましょう。パルスサーベイ(簡易的な意識調査)や1on1ミーティングを活用すれば、新人の本音を引き出す手助けになります。
新人が具体的に何に困っているのかを客観的な事実として把握できれば、担当者との認識のズレも明確になります。感情ではなく事実ベースで状況を整理する姿勢が状況の改善に効果的です。
ヒアリングの際は「担当者の悪口を聞く場」にならないよう配慮が必要です。新人と担当者の双方が前向きに改善へ取り組めるよう、聞き取った内容の扱いには十分注意しましょう。
担当者向けに定期的なフォロー面談を取り入れる
OJTを現場任せにすると制度が形骸化しやすいため、管理職や人事が定期的に担当者をフォローする仕組みが必要です。月1回程度の1on1面談で、担当者が抱える悩みや不安をヒアリングしましょう。
育成に関する困りごとを一人で抱え込ませないだけでも、担当者のストレスは大きく軽減されます。必要に応じてアンケートや中間報告会で課題を可視化すれば、問題が深刻化する前に対処できるでしょう。
フォロー面談は、担当者への支援を目的とするものであり、監視ではありません。「困ったときに相談できる環境がある」と担当者自身が感じられる体制をつくりましょう。
外部研修やeラーニングで指導スキルを補う
指導スキルの不足は、外部の研修プログラムやeラーニングを活用して体系的に学ぶことで補えます。OJTの基本的な枠組みである「4段階指導法」やコーチング・フィードバックの手法を習得する研修が代表的です。
これらの研修により、属人的な教え方のバラつきを防ぎ、施設全体で一定の教育品質を保てるようになるでしょう。座学に加えてロールプレイングを取り入れると、現場ですぐに実践できる指導力が着実に身につきます。
研修の学びを日々の指導で試し、上司がフィードバックを返すサイクルをセットで運用すれば、指導スキルの定着が格段に早まるでしょう。
OJTに向いていない人についてよくある質問
OJT担当者の指導力に課題を感じたとき、管理職として判断に迷う場面は多いのではないでしょうか?担当者のサポート方法やスキルアップの進め方、新人側の相談先など、現場でよく寄せられる疑問に回答します。
向いてない担当者を組織でサポートする方法は?
向いていない担当者をサポートするには、まず通常業務の量を調整して育成のための時間を確保する対応が必要です。教育を一人に任せるのではなく、チーム全体で指導する体制(サブトレーナーの配置など)を整えましょう。
定期的な1on1面談や勉強会を通じて担当者の悩みをフォローアップすれば、孤立感は大幅に軽減できます。指導経験が豊富な先輩職員を「教育担当のアドバイザー」として配置し、担当者が気軽に指導法を相談できる体制も効果的です。
組織全体で育成を支える仕組みがあれば、担当者のプレッシャーが分散されます。個人の資質に頼るのではなく、制度で支える発想に切り替えていきましょう。
OJT担当者の指導力を短期間で高める方法は?
短期間で指導力を高めるには、まず本人に不足しているスキルを明確にする必要があります。コミュニケーション力やコーチング力など、具体的な課題を上司や同僚からのフィードバックで特定しましょう。
社内外の優秀なロールモデルの指導手法を観察し、自身の教え方と比較する方法も有効です。eラーニングで「4段階指導法」や効果的なフィードバックの手法を事前に学んだうえで、ロールプレイングで実践練習を重ねると習得が早まるでしょう。
学んだ知識を現場で試し、上司からフィードバックを受けるサイクルを短い間隔で回すのがポイントです。インプットとアウトプットの間隔が空きすぎないよう意識しましょう。
新人がOJTに合わないと感じたときの相談先は?
新人がOJT担当者と合わないと感じた場合は、まず直属の上司に相談するのが基本です。上司は新人の話にしっかり耳を傾け、具体的に何が困っているのかを丁寧に聞き取りましょう。
施設内にメンター制度が導入されている場合は、ほかの部署の先輩(ナナメンター)に相談する選択肢も有効です。業務上の利害関係がないため心理的安全性が高く、担当者には直接伝えにくい悩みも打ち明けやすくなります。
新人が一人で抱え込まないよう、相談先の選択肢を入職時のオリエンテーションで伝えておきましょう。「困ったらここに相談できる」と知っているだけで、新人の安心感は大きく変わります。
まとめ
OJTに向いてない人には、感情的に叱る・指導を後回しにする・説明が不十分など共通する特徴があります。担当者の課題を客観的に特定できれば、交代や複数担当制の導入、フォロー面談の実施など具体的な対処法を選べるようになります。
まずは自施設のOJT担当者が7つの特徴に当てはまっていないかを確認し、該当する項目があれば上司として改善に向けた面談の場を設けてみましょう。担当者個人の資質に原因を求めるのではなく、組織の仕組みで育成体制を底上げする視点が求められます。
OJTの課題は、仕組みを整えれば着実に改善できる領域です。新人が安心して成長できる環境づくりに、今日から一歩を踏み出していきましょう。
防災⼠の詳細はこちら
証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。


