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2026/03/16

東日本大震災の津波の高さは最大何m?地域別データと避難の備え

西條 徹

西條 徹

毎年3月になると「東日本大震災の津波は最大で何メートルだったのか」と改めて気になる方は多いのではないでしょうか。沿岸部に施設や自宅がある場合、正確な数値を把握しておかなければ避難計画の想定値を適切に設定できません。

この記事では、東日本大震災の津波の高さを「津波高」「浸水高」「遡上高」の違いとともに解説し、主要な被災地の地域別データを紹介します。津波警報の見方やハザードマップの活用法など、読後すぐに防災対策へ反映できる備えもお伝えします。

読み終えるころには、津波のデータを正しく読み解く力が身につき、避難計画やBCPの実効性を高められるでしょう。

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東日本大震災の津波の高さは最大40m超

東日本大震災では、岩手県宮古市で国内観測史上最大となる遡上高40.5mが確認されました。津波の高さを正しく理解するには「津波高」「浸水高」「遡上高」の違いを把握する必要があります。

ビルに換算すると13〜14階に相当するこの数字が、どのような測定基準で算出されたものなのかを確認していきましょう。

「津波高」「浸水高」「遡上高」3つの指標の違い

津波の高さには「津波高」「浸水高」「遡上高」の3種類があり、それぞれ測定の基準と場所が異なります。混同すると被害規模を正しく読み取れなくなるため、違いを正しく理解しなければ防災情報を正確に活用できません。

「津波高」は検潮所やGPS波浪計で測定する平常潮位からの海面上昇値を指します。「浸水高」は平常潮位を基準に、陸上の建物に残された痕跡の高さを計測した値です。

「遡上高」は津波が斜面や谷を駆け上がり、浸水の最先端が達した地盤の標高です。同じ津波でも地形条件によって遡上高は津波高の数倍に跳ね上がる場合があるため、数値を見るときはどの指標かを確認しましょう。

国内観測史上最大は岩手県宮古市の遡上高40.5m

全国津波合同調査グループの調査により、岩手県宮古市の重茂半島・姉吉地区で40.5mの遡上高が確認されました。これは1896年の明治三陸地震津波の最大記録38.2mを上回り、日本の近代観測史上で最も高い数値です。

岩手県大船渡市綾里湾でも40.1mの遡上高が記録されており、2か所で40mを超えた背景には三陸海岸特有のリアス式地形が大きく影響しています。

V字型に切り込んだ狭い湾が津波のエネルギーを集中させ、波の高さを極端に増大させました。東日本大震災の津波の高さが突出した理由は、地震の規模だけでなく海岸地形の影響も大きかったといえるでしょう。

参考1:特集 東日本大震災|内閣府(防災担当)

参考2:地震・津波災害|宮古市災害資料アーカイブ

参考3:東日本大震災について|大船渡市

最大40mはビルの13〜14階に相当する高さ

遡上高40.5mをビルの高さに換算すると、一般的なオフィスビルの13〜14階に相当します。普段見上げている高層ビルの最上階付近まで水が押し寄せたと想像すれば、津波の破壊力の大きさが実感できるはずです。

痕跡から推定した津波の高さ(浸水高)が16.7mに達した地点もあり、これはビル5階に相当します。沿岸部の2〜3階建ての住宅や福祉施設は、屋上まで水没してしまう規模でした。

避難計画を策定するうえでは「何メートル」の数値をビルの階数に変換して共有すると、職員や利用者が危険度を直感的に把握できるようになるでしょう。

検潮所の観測値と実際の遡上高には大きな開き

海上の検潮所で記録された津波高と、陸上で測定された遡上高の間には大きな差が生じました。宮古市では検潮所の記録が8.5m以上だったのに対し、遡上高は40.5mに達しています。

大船渡市でも検潮所の数値は8.0m以上にとどまりましたが、遡上高は40.1mでした。この開きは、津波高と遡上高がそもそも異なる物理現象を測定している点に起因しています。

津波が陸に押し寄せたあと、リアス式海岸のV字型の湾や斜面を駆け上がれば遡上高は津波高の何倍にも達します。検潮所の数値だけで津波の脅威を判断すると、陸上の被害規模を大幅に過小評価してしまうでしょう。

参考:「宮古」「大船渡」の津波観測点の観測値について|気象庁

東日本大震災の津波の高さを地域別に紹介

東日本大震災の津波は北海道から沖縄県まで日本全国の沿岸に到達し、海外でも被害が発生しました。地域ごとの地形条件の違いによって、津波の高さや被害の規模には大きな差があります。

各県の具体的な数値を確認し、地域ごとのリスクの違いを整理していきましょう。

岩手県沿岸は遡上高30〜40mが連続した最大の被災地

岩手県沿岸は深く狭い湾が連続するリアス地形の影響で、津波エネルギーが減衰せずに集中した最大の被災地です。大船渡湾以北の地域では、遡上高30mを超える地点が連続して確認されています。

宮古市姉吉の40.5m、大船渡市綾里湾の40.1m、宮古市田老の39.4m、野田村の38.0mなど、30〜40m級の遡上高が広範囲で記録されました。V字型の湾による波の増幅に加え、開放的な海岸線から斜面へ駆け上がる効果など複数の地形が重なったことが原因です。

岩手県沿岸のデータは、地形が津波の高さに直結する事実を示しています。沿岸施設のBCPを策定する際は、所在地の地形を確認したうえで避難計画の想定値を設定しましょう。

参考:航空写真とDEMデータから推定した東日本大震災での津波遡上高の分布とそれら地理的特性|日本自然災害学会

宮城県沿岸は女川町などで遡上高20mを超える津波

宮城県では、北部のリアス地形と南部の仙台平野の両方で甚大な被害が発生しました。女川町では湾が奥に向かって急激に狭まる形状のため波高が増幅し、町中心部で浸水高約18m、遡上高約20mを記録しています。

女川町では、鉄筋コンクリート製の建物が基礎ごと横倒しになる極めて稀な被害も生じました。女川湾内の出島では遡上高が40m近くに達した記録もあり、笠貝島では43mに達した可能性が指摘されています。

リアス地形が津波を増幅する効果は、岩手県に限った現象ではありません。宮城県北部のデータからも、湾の地形によって被害が局所的に拡大する危険性を読み取れます。

福島県沿岸は富岡町で最大21m超の遡上高を記録

福島県沿岸にも非常に高い津波が押し寄せ、東京大学などの研究チームの調査によって富岡町小浜で21.1mの遡上高が確認されました。これは福島県内で最大の数値であり、ビル7階に相当する高さです。

相馬市の検潮所では観測施設が稼働していた範囲で9.3m以上の津波高が観測されています。沿岸の広い範囲が10mを超える津波に襲われ、原発事故との複合災害へと発展しました。

遡上高は津波が陸上の斜面を駆け上がった高さであるため、海岸付近の浸水深とは異なる点に注意が必要です。リアス地形の少ない地域でも、地形次第で高い遡上高が生じ得ると認識しておきましょう。

参考:津波警報・注意報評価|気象庁

茨城県で4m超、千葉県でも7m超の津波が到達

震源から離れた関東地方の沿岸にも津波は到達しました。茨城県の大洗の検潮所では4.0mの津波高が観測され、港周辺では船舶や車両が流される被害が発生しています。

千葉県では銚子の検潮所で2.5mを記録しました。旭市飯岡地区では「エッジ波」と呼ばれる地形による波の反射現象が発生し、7.6mの津波が到達して死者を含む大きな被害をもたらしています。

東北地方から遠い関東でもこれだけの津波が到達した事実は「震源が遠いから安全」とはいえない根拠になります。沿岸部に立地する施設は、距離にかかわらず津波への備えを講じておきましょう。

参考:津波警報・注意報評価|気象庁

地震発生から約30分で沿岸部へ第1波が到達

東日本大震災では、地震発生から20〜30分後に多くの沿岸部へ第1波が到達しました。大船渡市では、地震発生からわずか32分後に8mを超える津波が襲来しています。

岩手県宮古港の検潮所データでは、15時1分(地震発生から15分後)に引き波が観測されました。これが第1波の到達時刻と特定されており、震源に近い地域では避難の猶予が極めて短い状況でした。

到達時間の短さは、地震発生直後から迷わず避難を開始する判断の重要性を裏付けています。施設の避難訓練では「揺れが収まったら即座に移動を開始する」意識を全職員に浸透させましょう。

参考:2.2津波の概要2.2.1津波の発生状況|総務省消防庁

津波の高さを踏まえた避難と防災の備え

津波の高さを踏まえた避難と防災の備え

東日本大震災の津波データを知識として理解するだけでは、実際の災害時に命を守れません。得られた教訓を日々の避難計画や防災対策に落とし込む作業が求められます。

ここでは、津波警報の仕組みやハザードマップの活用法など、すぐに実践できる備えのポイントを確認していきましょう。

津波警報の高さ区分を理解し避難判断に役立てる

東日本大震災の発生直後、気象庁はマグニチュードを7.9と過小評価し、最初の津波警報で予想高を「宮城県6m、岩手県・福島県3m」と発表しました。実際の津波は予測を大幅に超え、避難の遅れにつながった側面があります。

この教訓からマグニチュード8を超える巨大地震が疑われる場合、現在は第1報で数値を示さず「巨大」などの定性的な表現で最大級の危機感を伝える仕組みに改善されました。数値がなくても最大限の警戒が必要だと理解しておくべきでしょう。

津波警報の区分は「大津波警報」「津波警報」「津波注意報」の3段階です。警報を受けた段階で、高さの数値を待たずに即座に高台へ避難する判断を身につけておきましょう。

参考:津波警報の改善のポイント|気象庁

ハザードマップで自宅周辺の浸水予測を確認する

多くの沿岸自治体では事前に津波ハザードマップを作成し、避難訓練にも活用していました。しかし、東日本大震災では想定をはるかに超える津波により、安全とされていた地域や指定避難所までもが浸水しています。

ハザードマップは、あくまで一定の条件下でのシミュレーション結果です。「マップ上で安全=実際に安全」とは限らない点を、職員研修などで繰り返し共有する必要があります。

自宅や職場周辺の浸水予測を確認したうえで、想定を超える津波が来た場合の避難先も決めておきましょう。「マップの想定を超え得る」前提で備えれば、命を守る行動につながります。

関連記事:地震災害におけるBCPの重要性:地震発生時の対応策や平時からの備えを解説

津波標識で避難場所と避難経路を事前に把握する

津波から身を守るには、日頃から街中にある津波標識を確認し、避難場所とそこへ至る経路を把握しておく準備が不可欠です。津波避難場所や津波避難ビルの標識は、災害時に瞬時の判断を助ける目印になります。

地震発生時に車で避難しようとすると、交通渋滞や道路の損壊、信号機の停止によって逃げ遅れる危険性は否定できません。原則として徒歩で速やかに高台や避難ビルへ移動する方法が推奨されています。

施設の職員には、通勤経路上の津波標識の位置を日頃から意識させておくと、いざというときに役立ちます。避難経路を複数設定し、定期的に徒歩で確認する訓練を取り入れれば、災害時の初動スピードが大きく変わるでしょう。

南海トラフ地震の津波予測と比較して備える

今後30年以内に発生が予想される南海トラフ地震でも、東日本大震災を上回る規模の巨大津波が想定され、高知県で最大34mなどの「津波高(海岸での高さ)」が推計されました。

想定浸水面積は、東日本大震災の約1.8倍に及びます。東日本大震災の最大40.5mは陸を駆け上がる「遡上高」であり、南海トラフの推計値(津波高)とは指標が異なるため単純比較はできません。南海トラフでも、地形次第で津波高の数倍まで駆け上がる危険があります。

被害想定範囲は格段に広く、影響を受ける人口は桁違いです。過去の数字にとらわれず、BCPの想定を「最大クラス」に設定し、すぐにより高い場所へ避難できる体制を整えておきましょう。

関連記事:南海トラフ地震が介護施設に及ぼす影響:被害想定から実践的な防災対策まで解説

東日本大震災の津波の高さに関するよくある質問

東日本大震災の津波に関する疑問を抱える方が少なくありません。防災計画に役立つ知識を整理するために、よくある質問への回答を確認していきましょう。

津波の高さと普通の波の高さに違いはある?

津波と普通の波(波浪)は波の高さが同じであっても、発生の仕組みとエネルギーがまったく異なります。普通の波は風の力で海面の表面付近の海水だけが動く現象にすぎません。

津波は地震による海底の隆起や沈降で、海底から海面までの全水量が一気に動く現象です。波長が非常に長く陸上に押し寄せる水量が桁違いに多いため、建物をなぎ倒すほどの破壊力をもつのが波浪との決定的な違いです。

「1mの津波」と「1mの波浪」ではまったく脅威の度合いが異なります。津波注意報で予想高が1mであっても、海岸や河口付近から速やかに離れる判断が必要です。

今後の地震で東日本大震災を超える津波の可能性はある?

今後発生が懸念される南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震が最大クラスの規模で起きた場合、東日本大震災を上回る津波が予測されています。南海トラフ地震では高知県で最大34m、静岡県で最大33mの津波が想定されました。

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震でも、北海道えりも町で最大28mの津波が予測されています。過去の想定を覆す津波が実際に発生した事実を踏まえれば「想定外」を前提とした備えが必要です。

東日本大震災の経験は「従来の想定が絶対ではない」事実を証明しました。BCPの見直しでは常に最大クラスの想定を採用し、職員が迷わず避難を開始できる体制をつくっておきましょう。

関連記事:南海トラフ地震の被害想定【2025年最新版】要点から防災対策までを解説

まとめ

東日本大震災の津波の高さは、遡上高で最大40.5m(岩手県宮古市)に達し、北海道から沖縄まで日本全国の沿岸に到達しました。「津波高」「浸水高」「遡上高」の3つの指標の違いを理解すれば、防災情報を正しく読み解けるようになります。

まずはハザードマップで自宅や施設周辺の浸水予測を確認し、避難場所と経路を複数設定するところから取り組んでみましょう。津波警報の区分を職員と共有し、警報発表時に迷わず高台へ移動する手順をBCPに組み込む作業も効果的です。

今後発生が懸念されている南海トラフ地震では、東日本大震災を上回る津波も想定されています。過去のデータを「知識」で終わらせず、今日からの避難計画に反映させていきましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。