
要介護の高齢者を持つ家族が直面する悩みの一つに「認知症による要介護認定」があります。しかし、実際に認知症が要介護3にどのように影響するのか、その基準や利用できるサービスを詳しく知っている人は少ないかもしれません。
この記事では、認知症が原因で要介護3に認定される程度から、具体的な基準、そして利用可能な介護サービスまでを詳しく解説しています。
読み進めることで、要介護3に関する理解を深め、適切な介護サービスの利用方法を見つける手助けができるでしょう。
要介護3に認定される認知症の程度
要介護3に認定される認知症の程度について、以下のポイントに注目して解説します。
- 要介護3とはどのような状態?
- 認知症が原因で要介護3になる割合
- 要介護3に該当する具体的な症状
それぞれ解説します。
要介護3とはどのような状態?
要介護3とは、日常生活を送る上で、ほぼ全面的に介助が必要な状態を指します。具体的には、食事、入浴、排泄といった基本的な生活動作に加え、着替えや移動といった日常生活に必要な動作も、一人で行うことが困難になります。
さらに、要介護3の方は歩行や立ち上がりも困難になるため、多くの場合、移動の際に車椅子や歩行器などが必要になります。
また、認知症の症状が現れることもあり、時間や場所の認識が困難になったり、物事を覚えたり理解したりすることが難しくなったりします。そのため、身の回りのサポートだけでなく、精神的なケアも不可欠です。
このように、要介護3は、日常生活のほぼ全ての場面で介助が必要となる状態であり、家族や介護サービスのサポートなしでは生活が成り立たなくなります。
認知症が原因で要介護3になる割合
要介護認定を受ける原因として、認知症は決して無視できない存在です。
要支援の段階では認知症が認定の主な原因となることは少ないものの、要介護状態になると状況は一変します。実に、全体の23.6%もの人が、認知症を原因として要介護認定を受けています。
特に、要介護1から3の段階では、この傾向が顕著に現れます。今回焦点を当てる「要介護3」においても、認定原因の第1位は認知症となっており、その影響力の大きさが浮き彫りとなっています。
参考:厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況』
要介護3に該当する具体的な症状
認知症によって「要介護3」と認定される場合、身体面と精神面の両方に様々な症状が現れることがあります。
まず、身体面では、立っていることが難しくなったり、着替えや入浴、トイレといった日常生活の動作に介助が必要になったりします。また、自力で立ち上がることが困難になるケースも多く見られます。
一方、精神面では、失禁や異食といった問題行動が現れたり、徘徊や大声を出したりするなどの症状が見られることがあります。さらに、意思疎通が難しくなる場合もあり、常に目が離せない状態とまではいかないまでも、日常生活を送る上での困難さが増してきます。
これらの症状により、一人暮らしが困難になるケースがほとんどであり、家族や介護サービスのサポートが不可欠となります。
以下の記事では、認知症サポーターについて詳しく説明しております。
認知症サポーターとは?オレンジ色なのはなぜ?世界アルツハイマーデーもあわせて解説
要介護3の認定基準とは
要介護3の認定基準を理解するために、次の3つのポイントを解説します。
- 7段階の要介護認定
- 要介護3に認定される基準
- 認知症の要介護認定でチェックされる項目
それぞれ見ていきましょう。
7段階の要介護認定
要介護認定は、介護が必要な度合いを7段階で評価する制度です。具体的には、要支援1・2、要介護1~5の段階があり、数字が大きくなるほど、より手厚い介護が必要と判断されます。
この要介護認定は、病気の重さではなく、介護にどれだけの時間や手間がかかるかという視点で判断されます。要介護認定の結果に基づいて、利用できる介護サービスの種類や利用限度額が決まります。そのため、要介護認定は、適切な介護サービスを受ける上で非常に重要な役割を果たしているのです。
認定は、市町村の介護認定審査会によって行われます。審査では、全国一律の基準に基づき、日常生活における動作や認知機能などを評価し、介護にかかる時間を算出します。
このように、要介護認定は、一人ひとりの状況に合わせて、必要な介護の度合いを客観的に評価する仕組みと言えるでしょう。
要介護3に認定される基準
要介護3の認定は、日常生活における介護の必要度に基づいて判断されます。具体的には、厚生労働省が定めた「要介護認定等基準時間」が70分以上90分未満であることが条件となります。この基準時間は、入浴、排泄、食事など、日常生活における基本的な動作に必要な介護時間を合計したものです。
例えば、一人でトイレに行くことができず毎回介助が必要な場合や、入浴時に洗ったり体を拭いたりする介助が必要な場合などが該当します。
さらに、認知症により、日常生活において見守りや声かけが必要な場合や、徘徊などの行動を抑制するための介助が必要な場合も、要介護3の認定基準に該当する可能性があります。
ただし、これらの例はあくまで目安であり、実際の認定は個々の状況を総合的に判断して行われます。
認知症の要介護認定でチェックされる項目
要介護認定には、「認定調査票」と「主治医意見書」が必要で、これらには身体状況や病名だけでなく、認知症の程度を判断する「日常生活自立度」に関する情報も含まれます。
日常生活自立度は、認知症の方の日常生活における自立度を測る指標で、認知症特有の症状から判断されます。自立度はⅠからⅣ、さらにMまでの9ランクに分けられ、それぞれに具体的な症状や行動の例が定められています。
例えば、日常生活に支障はないが、何らかの認知症の症状が見られる場合は「ランクⅠ」に該当します。一方「ランクⅣ」は、日常生活全般に支障があり、常に介護が必要な状態を指します。
また、認知症の方の自立度だけでなく「寝たきり度」を判断する「障害高齢者の日常生活自立度」も、要介護認定の参考となります。寝たきり度は、J(自立)、A(準寝たきり)、B、C(寝たきり)の4段階に分類され、それぞれに具体的な症状の例が示されています。
これらの自立度は、認定調査票や主治医意見書に記載され、要介護認定の重要な要素となります。身体的には健康であっても、認知症の症状が重い場合は、これらの情報に基づいて、適切な要介護認定を受けられる場合があります。
参考1:厚生労働省『認知症高齢者の日常生活自立度』
参考2:厚生労働省『障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)』
要介護3で利用可能な介護サービス

ここでは、次の5つに分類して要介護3で利用可能な介護サービスを紹介します。
- 施設サービス(通い・入居)
- 短期の宿泊サービス(ショートステイ)
- 自宅で受けるサービス(訪問介護)
- 生活環境を整備するサービス(住宅改修)
- 福祉用具が利用できるサービス(購入・レンタル)
それぞれ解説します。
施設サービス(通い・入居)
要介護3になると、日帰りで利用できる「通所介護(デイサービス)」や「通所リハビリ」に加え、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、有料老人ホームなどの施設への入居も選択肢となります。
通所介護では、食事や入浴の介助、レクリエーションの提供などを受けられます。また、リハビリテーションが必要な場合は、専門スタッフによるリハビリを受けることも可能です。
施設への入居は、自宅での生活が困難になった場合や、24時間体制の介護が必要な場合に検討されます。
短期の宿泊サービス(ショートステイ)
「短期入所生活介護」や「短期入所療養介護」といったショートステイも利用できます。
ショートステイは、家族の介護負担を軽減したい場合や、冠婚葬祭などで一時的に介護ができない場合でも利用できます。
自宅で受けるサービス(訪問介護)
自宅で介護を受けたい場合は、「訪問介護(ホームヘルプ)」や「訪問看護」、「訪問入浴」、「訪問リハビリ」などのサービスを利用できます。
訪問介護では、食事や入浴、排せつなどの介助や、調理、洗濯、掃除などの家事援助を受けられます。また、訪問看護では、医療的なケアや健康管理のアドバイスを受けられます。
訪問入浴は自宅で入浴介助を受けられるサービスです。訪問リハビリを利用すれば、自宅でリハビリテーションも受けられます。
生活環境を整備するサービス(住宅改修)
自宅での生活をより安全で快適にするために、支給限度基準額である20万円の9割に該当する18万円を上限として「住宅改修」の費用の一部を補助してもらえる制度もあります。
手すりの取り付けや段差の解消、洋式トイレへの取り替えなどが対象となります。
参考:厚生労働省『介護保険における住宅改修』
福祉用具が利用できるサービス(購入・レンタル)
介護をサポートする福祉用具の購入やレンタルも可能です。車椅子や歩行器などのレンタルができます。
また、腰掛便座や浴槽内椅子など、入浴やトイレに関する福祉用具は、レンタルではなく購入の対象になります。ただし、購入時も年間10万円まで補助が受けられます。
まとめ
要介護3に認定される認知症の程度は、日常生活のほぼすべての場面で介助が必要なレベルです。認知症が原因で要介護3となる場合、その症状は身体面と精神面の両方に及び、一人で生活することが難しくなります。
しかし、認知症が進行しても、適切な介護サービスを活用することで、生活の質を維持できます。
認知症の進行に応じた適切なサポートを受けるために、今から介護サービスについての情報を収集し、必要な手続きを進めていきましょう。
関連記事
防災⼠の詳細はこちら
証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。