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2024/04/30

介護施設を守るBCP|補助金の活用方法を解説

西條 徹

西條 徹

介護施設を守るBCP

介護施設におけるBCP(事業継続計画)は、2024年4月からの義務化に伴い、より一層の注目を集めています。しかし、BCP策定には専門知識が必要であり、またその準備には費用もかかります。そこで気になるのが「BCP策定で活用できる補助金はないの?」という点ではないでしょうか。

本記事では、介護施設向けのBCP対策と補助金の基本知識から、施設ごとの策定ポイント、そして実際に役立つ補助金・助成金の情報までを、わかりやすく解説しています。災害時も安心して事業を続けられる介護施設を目指す方に、必見の内容です。ぜひ最後までお読みください。

介護施設のBCP対策と補助金の基本知識

まず、介護施設のBCP対策と補助金の基本知識として、次の2つのポイントを抑えておきましょう。

  • 2024年4月義務化!介護施設におけるBCPとは?
  • 補助金と助成金の違いとは?

以下で、それぞれ解説します。

2024年4月義務化!介護施設におけるBCPとは?

BCP(事業継続計画)は、介護事業を含むあらゆる事業で災害や緊急事態が発生した際に、その事業を継続させるための戦略的な計画を指します。この計画の策定は、介護事業においても2024年4月までに義務化されました。

具体的な目的としては、介護サービスの提供中断を最小限に抑え、利用者および従業員の安全を確保し、事業継続に必要な設備や資材を事前に確保することが挙げられます。また、情報管理と連絡手段の確立も重要な目的の一つです。

したがって、BCPの策定は介護事業においても極めて重要なものであり、その実施は事業の継続性を確保する上で不可欠といえるでしょう。

補助金と助成金の違いとは?

助成金と補助金では、主に目的、管轄、給付額、受給のしやすさ、公募期間において違いがあります。

まず、目的と管轄の違いから見てみましょう。助成金は厚生労働省が主な管轄で、雇用や労働環境の改善を目的としています。一方で補助金は、経済産業省や中小企業庁が管轄し、新規事業の支援や地域振興などを目的としています。

給付額でも違いがあります。助成金は数十万円から数百万円程度が一般的ですが、補助金は数百万円から数十億円と幅広い範囲にわたります。

受給のしやすさに関しては、助成金は受給要件を満たせば原則として受給可能です。これに対して補助金は、採択件数や金額の制限があり、申請しても受給できない場合もあります。競争率が高いため、事業の必要性を訴えることが成功の鍵を握ります。

公募期間の違いは、助成金が通年で公募されることが多いのに対し、補助金は一定期間のみの公募となっており、その期間も比較的短いことが特徴です。

以上の違いを踏まえ、助成金と補助金の申請にあたっては、それぞれの特性を理解し、公募期間や要件をしっかりと確認することが重要です。

介護事業に特化したBCP策定のポイント

介護事業に特化したBCP策定のポイントとして、主に次の2つがあります。

  • 施設サービス・居宅系サービス・通所サービスのBCP策定ポイント
  • 感染症対策と自然災害対策の二本立て

以下で、それぞれ解説します。

施設サービス・居宅系サービス・通所サービスのBCP策定ポイント

BCP策定におけるポイントは、介護事業の種類に応じた安全性とサービス継続性の確保です。以下では、施設サービス、居宅系サービス、通所サービス別に焦点を当てていきましょう。

まず、施設サービスでは、利用者と職員の安全を守るための避難計画の策定や非常用設備の整備が重要となります。自然災害が起こった際には、介護度に応じた避難手法の確立が求められます。また、感染症の発生時には、利用者の年齢や既往症を考慮し、集団感染のリスク管理に努めることが不可欠です。

次に、居宅系サービスにおいては、スタッフの安全と訪問サービスの継続性が主要な懸念事項となります。ここでは、適切な連絡手段や訪問スケジュールの調整、訪問先のリスク評価が重要なポイントです。自然災害時には、サービスの提供が不可欠な利用者を特定し、サービスの優先順位付けを行う必要があります。

最後に、通所サービスでは、施設系サービスと居宅系サービスの双方の要素を考慮に入れる必要があります。ここでのポイントは、通信手段の確立や利用者情報の管理、スタッフの配置転換などです。これらはすべて、利用者の安全を確保し、サービスを円滑に提供するための対策と言えます。

BCP策定においては、介護事業の種類に応じた特有のリスクを把握し、それらに対処するための具体的な計画を立てることが不可欠です。

感染症対策と自然災害対策の二本立て

介護施設が取り組むべきは、感染症対策と自然災害対策を同時に進行させることです。このダブル対策は、施設利用者と職員の安全を確保し、サービスの継続を可能にします。

介護施設におけるリスクは感染症の拡大や自然災害の発生により大きく左右されます。最近のパンデミックが示したように、感染症は高齢者や健康が優れない人々に重大な影響を及ぼします。また、地震や洪水などの自然災害も、施設の物理的な損傷や運営の中断を引き起こすでしょう。

感染症対策と自然災害対策を適切に実施することは、介護施設にとって非常に重要です。これにより、安全な環境を提供し続けることができるのです。

BCP対策に役立つ補助金・助成金

BCP対策に役立つ補助金・助成金

BCP対策に役立つ補助金・助成金としては、主に次の4つがあります。

  • BCP作成の際に受けられる税制優遇
  • 各自治体で受けられる助成金・補助金
  • T導入補助金とテレワーク助成金
  • 非常用電源の導入で受けられる補助金

以下で、それぞれ解説します。

BCP作成の際に受けられる税制優遇について

国の認定を得てBCPを作成することで、税制優遇の恩恵を受けることが可能です。これは「中小企業防災・減災投資促進税制」に基づく優遇措置です。

この税制優遇を受けるためには「事業継続力強化計画」の認定が必要となります。認定された企業は、対象となる設備を事業で使用した際に、最大で20%の特別償却が適用されるという大きなメリットがあります。

この制度の適用期間は、令和元年7月16日から令和7年3月31日までとされており、認定を受けてから1年が経過する日まで利用できます。

各自治体で受けられる助成金・補助金

BCPの策定や実施に関連するさまざまな支援が、各自治体から提供されています。

例えば、東京都では「BCP実践促進助成金」を提供しており、これはBCP策定のためのコンサルティング費用や、設備の整備、BCPトレーニング実施に関する費用の一部を補助するものです。

また、大阪府八尾市では、「意欲ある事業者経営・技術支援補助金」が提供されており、経営や技術支援に関する広範囲な領域をカバーしています。

これらの補助金プログラムは、介護事業者のリスク管理能力を高めるための大きな支援となるでしょう。

参考1:東京都『BCP(事業継続計画)の促進に助成金

参考2:八尾市『令和6年度 意欲ある事業者経営・技術支援補助金について

IT導入補助金とテレワーク助成金

情報技術の導入は、BCP(事業継続計画)の策定において欠かせません。この背景から、IT導入補助金やテレワーク助成金という制度が設けられています。

情報技術を利用することで、企業は重要な情報のバックアップを行い、災害や緊急時でも業務を継続するための準備を整えることができます。このような対策は、自然災害や感染症の流行など、予期せぬ事態が発生した際に、事業の継続を支える重要な役割を果たします。

IT導入補助金の活用を通じて、情報のセキュリティ強化やリモートワークの推進など、事業の継続性を高めるための措置を講じることが可能となります。

非常用電源の導入で受けられる補助金

介護・福祉施設における非常用電源の導入を支援するための補助金制度もあります。具体的には、以下の2つの補助金制度があります。

まず「認知症高齢者グループホーム等防災改修等支援事業」という制度があります。これは、地域密着型特別養護老人ホームや小規模ケアハウスなど、原則定員29名以下の介護施設が対象となります。補助率は定額補助であり、上限額は1施設あたり1,540万円または773万円です。上限額は、対象施設や設備内容によって異なります。

次に「高齢者施設等の非常用自家発電設備整備等事業」という制度があります。特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、養護老人ホームなどが対象です。補助率は国から2分の1、市から4分の1、事業者から4分の1の負担となり、上限額は厚生労働省大臣が認めた額に設定されています。

非常用電源の導入により、施設は停電時でも安全な環境を提供し、利用者の生活を守ることができるでしょう。

参考1:厚生労働省『令和5年度予算案の概要(老健局)の参考資料

参考2:内閣府『災害時の拠点等となる医療施設、社会福祉施設(高齢者・障害者・児童福祉施設等)の給水設備や非常用自家発電装置の整備(医療施設)

まとめ

2024年4月の義務化を前にした介護施設でのBCP策定において、補助金の活用は施設運営の持続性と安定性を確保するために不可欠です。

BCP作成の際に利用できる補助金や助成金としては、主に以下の4つがあります。

  • BCP作成で受けられる税制優遇
  • 各自治体で受けられる助成金・補助金
  • IT導入補助金・テレワーク助成金
  • 非常用電源の導入で受けられる補助金

これらの、補助金と助成金を活用することで、BCP策定の負担を軽減し、より効果的な対策を実施することが可能になります。これらの知識を踏まえ、施設のBCP策定や補助金申請に積極的に取り組みましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。