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2024/02/27

処遇改善加算とは|介護職員以外は対象にならない?特定処遇改善加算も解説

西條 徹

西條 徹

処遇改善加算とは

介護事業を経営していると「処遇改善加算」の制度をどう活用すればいいのか、特に介護職員以外の従業員にどのように適用されるのか、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、処遇改善加算や特定処遇改善加算について、それぞれの概要と対象者を詳しく解説しています。また、役員や派遣労働者、非常勤職員など、正規雇用の介護職員以外の取り扱いや、加算を受けるための具体的な条件と手続きについても触れていきます。

この記事を読んで、処遇改善への第一歩を踏み出しましょう。

処遇改善加算とは

処遇改善加算は介護業界で働く人々の待遇を向上させるための制度です。これにより、介護サービスの質の向上が期待されます。

以下では、処遇改善手当の概要と対象者について解説します。

参考:厚生労働省『処遇改善に係る加算全体のイメージ

処遇改善加算の概要

処遇改善加算は、介護サービスの質を高めるとともに、介護職員の待遇改善を図るための制度です。この制度は、介護職員が直面する低賃金や厳しい労働環境といった問題に対処し、介護業界での働きがいや職員の定着を促進することを目的としています。

介護職員が適正な評価と対価を受けることは、介護サービスの質の維持・向上に直結します。良い労働環境や適正な報酬が、職員のモチベーションを高め、結果としてサービス提供の質が向上するからです。

このような背景から、処遇改善加算は、単に介護職員の待遇を改善するためのものではなく、介護サービス全体の質を高めるための重要な取り組みと言えるでしょう。

処遇改善加算の対象者

 介護職員処遇改善加算は、実際に介護業務に従事する介護職員が対象です。

雇用形態に関しては、フルタイム、パート、派遣社員の区別なく、介護職としての業務に従事していれば、処遇改善加算の対象とされます。

したがって、介護職員処遇改善加算は、介護業務に従事するすべての職員に対して適切に適用されるべきです。

特定処遇改善加算とは

特定処遇改善加算は、介護職員のキャリアアップ支援や資質向上を目指し、より高いレベルのサービス提供を奨励するために設けられた制度です。

以下では、特定処遇改善加算の概要と対象者について解説します。

参考:厚生労働省『処遇改善に係る加算全体のイメージ

特定処遇改善加算の概要

特定処遇改善加算は、経験豊富で技能のある介護職員のさらなる処遇改善を目的として2019年10月1日に創設された制度です。

特定処遇改善加算では、勤続年数10年以上の介護福祉士を対象に月額平均8万円相当の処遇改善を行います。これにより、介護職員の満足度向上と定着率の向上が期待されています。

したがって、特定処遇改善加算は、経験と技能を持つ介護職員の処遇を改善し、人材の定着率向上に貢献するための重要な制度と言えるでしょう。

特定処遇改善加算の対象者

特定処遇改善加算は、経験や技能のある介護職員、特に介護福祉士の資格を持ち、長年にわたり業務に従事してきたベテラン職員を対象としています。ただし、必ずしも10年以上の勤続年数を要求しているわけではありません。

勤続年数が10年以上という基準は、ベテラン職員の経験と貢献を認めるための一つの目安です。実際は、10年という数字にとらわれずに、職員の技能や経験を総合的に評価する柔軟性を持たせています。事業所は独自の状況に応じて、資格や経験が豊富な職員を適切に評価し、処遇改善の対象とできます。

したがって、特定処遇改善加算は、勤続年数だけでなく、職員の経験や技能を幅広く評価し、介護業界の質の向上と人材定着を目指す制度と言えます。

正規雇用の介護職員以外の取り扱い

処遇改善加算の議論の中で、正規の介護職員以外、例えば役員や非介護職、派遣や非常勤職員の役割とその加算への影響は重要なポイントとなるでしょう。

以下で、それぞれ解説します。

役員や介護職員以外の職種

 役員報酬のみを受け取っている場合は通常、特定処遇改善加算の対象外です。しかし、その役員が介護職員として実際に勤務しており、その労働に対して給与性質の報酬を受けている場合には、加算の対象となることがあります。

また、生活相談員やケアマネジャー、看護師や栄養士などの他職種も同様に原則的に対象外ですが、介護業務に従事している事実があれば対象となります。

この判断基準には、勤務表や雇用契約書など、労働者性を客観的に示せる関係書類の整備が必要です。これにより、役員や他職種であっても介護職員としての業務を行い、その対価として報酬を受けている事実が客観的に証明され、特定処遇改善加算の対象となり得ます。

よって、介護職員としての実務があり、その労働に対する報酬が給与の性質を有しているならば、職種に関係なく特定処遇改善加算の適用対象となる可能性があります。

派遣労働者や非常勤職員

介護職員が派遣労働者であっても、特定処遇改善加算の対象とすることが可能です。この制度の目的は、介護業界全体での質の高いサービス提供を支えるために、介護職員の処遇改善を図ることにあります。

派遣労働者であっても提供する介護サービスの質には変わりがないため、彼らの処遇改善も正規雇用と同様に重要です。そのため、派遣元企業との協議を通じて、賃金改善等の措置を講じることが奨励されています。介護職員処遇改善計画書や介護職員処遇改善実績報告書の作成時には、自社の職員だけでなく、派遣労働者も含めることが求められます。

したがって、派遣労働者も介護職員処遇改善加算の対象に含めることで、介護サービスの提供者全体の処遇を改善し、業界全体の質の向上を図ることが可能です。

処遇改善加算を受けるための条件

処遇改善加算を受けるための条件

介護業界における処遇改善加算を受けるためには、特定の条件を満たし、適切な手続きを踏む必要があります。ここでは、申請に必要な書類と届出手続き、さらにキャリアパス要件の達成について解説します。

必要な書類と届出手続き

介護職員処遇改善加算を取得するための手順は、以下のとおりです。

  1. 介護職員処遇改善計画書の提出:事業者は、まず自社の就業規則や給与規定といった必要書類を準備します。それらの書類とともに、どのように介護職員の処遇を改善するかを詳細に記載した「介護職員処遇改善計画書」を、所在地を管轄する都道府県などの関連機関に提出します。
  2. 加算の請求・支払い:提出した計画が承認されると、事業者は介護職員の処遇改善に取り組むことになります。この取り組みが認められた場合、事業者は介護報酬として給料の上乗せ分を支給されます。これは、介護職員に対する直接的な給与改善や、職場環境の向上などに充てることができます。
  3. 処遇改善実績報告書の提出:処遇改善計画に基づいて実際に賃金改善やその他の取り組みを行った後、その実績を「処遇改善実績報告書」としてまとめます。この報告書を再び都道府県などに提出し、計画通りの処遇改善が行われたことを証明します。

注意点として、報告書の提出を怠ったり、提出された内容が要件を満たしていない場合は、支給された加算費用の返還を求められる可能性があります。そのため、計画の策定から実施、報告に至るまで、各ステップを正確に実行することが重要です。

この手続きを適切に行うことで、事業者は介護職員の待遇を改善し、より良い介護サービスの提供につなげることができます。

キャリアパス要件とその達成方法

介護職員のキャリアパス要件と、それに基づく加算の申請区分について説明します。キャリアパス要件は、職員のキャリア形成と賃金改善を目指して設けられており、以下の三つの要素から成り立っています。

1.職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること

これは、職員がその役割や責任の範囲に応じた適切な評価を受け、それに基づいて賃金が決定されるようにするための要件です。職位や職務内容に応じた明確な任用基準と賃金体系を設けることで、透明性と公平性を確保します。

2.資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保すること

職員のスキルアップや専門知識の習得を支援するために、継続的な研修プログラムを提供します。これにより、職員は自身の資質向上を図ることができ、より高いサービス品質を提供することが可能になります。

3.経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組みまたは一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

職員の経験や取得した資格、職務遂行能力の向上を適切に評価し、それに応じて昇給が行われるような仕組みを整備します。これは、職員のモチベーション向上と長期的なキャリア形成を促進するために重要です。

加算の申請区分は、上記のキャリアパス要件のうち、どれを満たしているかによって異なります。事業所はこれらの要件を具体的にどのように満たしているかを評価・検討し、それに応じて介護職員処遇改善加算を申請しましょう。

参考:厚生労働省『処遇改善に係る加算全体のイメージ

まとめ

処遇改善加算や特定処遇改善加算は、介護業界で働く人たちの労働環境を向上させるための制度です。本記事では、これらの制度の概要、対象者について解説しました。

介護職員処遇改善加算の対象者は、雇用形態に関係なく、実際に介護業務に従事する介護職員です。特定処遇改善加算の対象者は、介護福祉士の資格を持ち、10年以上にわたり業務に従事してきた介護職員を対象としています。

また、介護職員以外でも、介護業務に従事している事実が証明できれば、処遇改善手当の対象となります。

この記事で解説した内容を参考にして、介護職員の労働環境の改善に努めましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。