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2024/01/20

義務化される介護施設でのBCP対策とは?罰則や策定のメリットを解説

西條 徹

西條 徹

義務化される介護施設でのBCP対策とは?罰則や策定のメリットを解説

自然災害や感染症のまん延は、予期せず介護施設の運営に甚大な影響を及ぼします。しかし、BCP対策は、どこから手をつけていいか分からないと感じられるかもしれません。

この記事では、介護施設特有のBCP策定の重要性、自然災害時や感染症発生時の具体的な対策まで、わかりやすく解説しています。

bcp対策を理解し、適切に実施することで、不測の事態にも強い介護施設を築くことができます。この記事を読んで、利用者と職員の安全を守り、質の高い介護サービスを継続するための第一歩を踏み出しましょう。

BCPとは?

BCP(事業継続計画)は、自然災害や感染症の流行、さらにはテロなどの緊急時にも、介護サービスを安定して提供し続けるための計画です。2024年4月から、介護施設におけるBCP策定が法的に義務化されることとなり、すべての事業所は利用者の安全と継続的なケアを保障する責任が一層増します​​​​​​。

BCPは主に2つの計画で構成されます。一つは自然災害に対するBCPで、もう一つは感染症対策のBCPです。それぞれのBCPには、基本方針、平常時の対応、緊急時の対応、そして復旧対策などを詳細に定める必要があります​​。

BCPは介護事業所にとって不可欠なものであり、その策定と実施には十分な注意を払う必要があります。今後も継続的に見直しを行い、定期的な研修や訓練を通じて、計画を実効性のあるものにしていくべきでしょう。

参考:WAM NET『4.BCP(業務継続計画)

BCPを策定しないと罰則がある?

前述のとおりBCPの策定は、2024年4月から介護事業所に義務付けられています。ただし、2024年4月以降にBCPを策定していない場合の罰則は明確にされていません。

しかし、罰則がないからといって、BCPを策定しなくてもいいわけではありません。適切なBCPがない状態で災害や感染症が発生した場合、利用者や従業員に危険が及ぶ可能性があります。最悪の場合、事業者は安全配慮義務違反として法的な責任を問われることがあるため、BCP策定の必要性は非常に高いといえるでしょう。

介護施設でのBCP策定のメリット

介護施設でのBCP策定のメリットとして、次の4つが挙げられます。

  • 利用者と職員の安全確保と介護サービスの継続
  • 補助金や助成金が受給できる
  • 税制優遇・支援が受けられる
  • 感染症まん延時にワクチンの優先接種ができる

以下で、それぞれ解説します。

利用者と職員の安全確保と介護サービスの継続

BCPの策定は、自然災害や感染症の発生時でも介護サービスを継続し、利用者と職員の安全を確保するために重要です。

避難ルートの確認や非常用品の位置、応急手当の基本など、緊急時の対応計画を全職員に周知・徹底を図ることで、利用者は安全な生活を送れます。さらに、緊急時の連絡方法や対応計画について利用者や家族にも情報を提供することが重要です。

これにより、災害時でもサービスの提供が継続でき、利用者の生活の安全と安定が保たれます​​。

補助金や助成金が受給できる

BCPを策定することで、自治体や政府機関からの補助金や助成金が受給できる場合があります。これにより、BCP策定にかかるコストの一部を軽減できます。

例えば、東京都中小企業振興公社では「BCP実践促進助成金」を提供しており、BCPに基づく物品や設備を導入する際の経費の一部を助成します​​​​。

お住まいの自治体のホームページなどで、補助金や助成金が受けられるか確認してみましょう。

参考:東京都中小企業振興公社『BCP実践促進助成金

税制優遇・支援が受けられる

BCP策定により、税制優遇や金融支援が受けられるケースもあります。

政府系の金融機関や民間の金融機関から、防災施設の整備などBCPに基づいたプロジェクトに対して、優遇金利での融資が受けられることがあります。

これにより、経営改善につながるだけでなく、事業運営のリスクマネジメントも強化されるでしょう。

感染症まん延時にワクチンの優先接種ができる

BCPを策定している施設は、感染症が発生した際にワクチンの優先接種の対象となることがあります。この優先接種は、国民生活や国民経済に大きな影響を及ぼす業務を行う事業所に対して行われます。

BCPに感染症発生時の業務継続方針を明記していれば、感染症予防のためのワクチン接種が優先的に行われ、施設内の感染拡大を防ぐことができます​​​​。ただし、事前に登録する必要があるため注意しましょう。

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介護施設のBCP対策

介護施設のBCP対策

介護施設のBCPは、自然災害時と自然災害時を分けて策定する必要があります。以下では、それぞれのポイントを解説していきます。

自然災害時

自然災害時のBCP策定は、以下の点に注意して対策していきましょう。

  • 正確な情報集約と判断ができる体制を構築
  • 自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて対策を準備
  • 必要な物資を備蓄し定期的に確認する
  • 業務の優先順位の整理
  • BCPの周知・研修と訓練

それぞれ詳しく解説します。

正確な情報集約と判断ができる体制を構築

自然災害への対応においては、施設全体での対応体制を構築することが不可欠です。具体的には、災害対応チームの設置、役割の明確化、緊急連絡網の整備を含みます。

さらには、災害時の職員の行動指針や、避難計画の策定も含まれます。定期的にこれらの対策を見直し、改善していくPDCAサイクルを実践することで、災害対応能力を高められます​​。

自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて対策を準備

自然災害対策には、事前準備と災害発生時の対応が不可欠です。事前準備には、リスク評価や必要物資の備蓄、職員や利用者への教育・訓練が含まれます。

一方で、被災時の対策には、具体的な対応プロセスの策定や、災害発生時の職員の役割分担、緊急連絡網の使用などが含まれます。これらの対策を通じて、災害時に迅速かつ効果的に対応し、利用者と職員の安全を確保できます​​​​。

必要な物資を備蓄し定期的に確認する

介護施設では、利用者の健康維持や生活支援のため、通常の防災備蓄品に加え、医療設備や特別な備蓄品が必要です。これらは十分な量を確保しましょう。また、定期的に確認して、少なければ補充する必要があります。

非常用電源や自家発電設備の導入も重要です。これにより、停電時でも医療機器や空調設備を稼働できます​​。

業務の優先順位の整理

災害時には、限られたリソースを最も重要な業務に集中させなければなりません。業務の優先順位を事前に整理しておくことで、緊急時には迅速かつ効率的な対応が可能になります。

まず、事業影響度分析を行い、どの業務が施設運営や利用者の安全に最も影響を与えるかを評価します。この評価に基づいて、災害発生時にどの業務を継続し、どの業務を一時停止するかの計画を立てましょう。

また、災害後の迅速な復旧のために、業務ごとの復旧時間の許容限界も考慮します。このようにして業務の優先順位を整理し、計画を策定しておくことで、非常時でも介護施設の重要な機能を維持することが可能になります​​。

BCPの周知・研修と訓練

防災訓練の実施は、介護施設では義務付けられており、年2回以上行われるべきです。訓練を通じて、職員や利用者が迅速に避難できるようにすることが重要です。

また、家具の固定や避難計画の策定も不可欠で、これにより災害時に安全な避難経路を確保できます。避難訓練を継続的に行い、緊急時でも職員が落ち着いて行動できるようにしましょう。

感染症発生時

感染症発生時のBCPでは、以下の点を意識しましょう。

  • 関係者との情報共有と役割分担・判断ができる体制の構築
  • 感染(疑い)者が発生した場合の対応を決める
  • 対応できる職員を確保する
  • 業務の優先順位の整理
  • BCPの周知・研修と訓練

それぞれ解説していきます。

関係者との情報共有と役割分担・判断ができる体制の構築

介護施設における感染症対策には、関係者間の情報共有と役割分担の明確化が不可欠です。体制の整備と担当者の決定、連絡先の整理を平常時から準備することが大切です。

また、スタッフや入所者、利用者への感染リスクや業務継続の社会的責任を踏まえた業務継続レベルを判断することが求められます。

さらに、情報収集は正確かつ迅速でなければなりません。感染症の発生や拡大の状況に応じて、適切に体制を変更し、全職員に迅速に情報を伝達する体制を整えることが重要です​​​​。

感染(疑い)者が発生した場合の対応を決める

感染(疑い)者が発生した際には、感染拡大を防止するために、事前に策定された対応プロセスに従って迅速に行動することが必要です。

これには感染者や濃厚接触者の状況に応じた対応、消毒の状況、ケア方法、職員の確保などが含まれます。

また、感染拡大防止対策として、施設内の消毒、ゾーニング方法の実施、職員や利用者の体調管理、施設内出入り者の記録管理などが重要です​​​​。

対応できる職員を確保する

感染症発生時の人員確保対策は、介護施設の業務継続計画において極めて重要な要素です。職員が感染するリスクを考慮し、感染拡大時における人員確保計画を策定します。

これには、代替スタッフの確保、出勤判断基準の明確化、職員の健康状態に応じた勤務形態の調整などが含まれます。

また、感染拡大時の職員確保のために、法人内の調整や自治体・関係団体への要請、代替業務拠点の確保、代替システムの確保などの代替戦略も重要です​​​​。

業務の優先順位の整理

感染症発生時には、限られたリソースをもって最も重要な業務に集中する必要があります。そのためには、事業影響度分析を行い、優先業務を選定することが重要です。

また、業務ごとの復旧時間的許容限界を検討し、感染拡大時における業務継続計画を策定することが求められます。

業務の優先順位を明確にすることで、感染症発生時でも介護施設の重要な機能を維持し、利用者へのサービス提供を続けられます​​。

BCPの周知・研修と訓練

感染症対策におけるBCPの効果を最大限に発揮するためには、BCPの内容を職員に周知し、定期的に研修と訓練を行うことが必要です。

職員は研修を通じて、平常時の感染予防対策や感染発生時の具体的な対応方法を学びます。また、実際のシミュレーションを通じて具体的な対応方法を身につけることで、感染症発生時にも冷静かつ迅速に対応できます。

研修用の動画やガイドラインを参考にしながら、業務継続計画の作成を支援するための研修を行いましょう。

【まとめ】

介護施設でのBCP対策は、利用者と職員の安全を確保し、介護サービスの継続を可能にする重要な取り組みです。

自然災害時と感染症発生時の両面から、正確な情報収集、物資の備蓄、業務の優先順位の整理、そしてBCPの周知・研修と訓練などが重要です。これらの対策は、介護施設の運営を安定させ、いざというときに迅速かつ効果的な対応を可能にするでしょう。

この記事を参考に、自施設のBCP対策を再確認し、必要に応じて見直しを行い、利用者と職員の安全を守るための準備をしましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。