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2023/10/11

ケアプランデータ連携システム|義務化の可能性と導入のメリット・デメリットを解説

西條 徹

西條 徹

「ケアプランデータ連携システムの導入は本当に必要なのか?」という疑問を持っている方は少なくないでしょう。この記事では、ケアプランデータ連携システムの現状と義務化の可能性、導入にあたってのメリット・デメリット、導入のステップについて詳しく解説します。

この記事を読むことで、導入の是非を判断するための有益な情報が手に入ります。さらに、具体的なステップについても明らかになるため、導入を検討する際の不安も解消されるでしょう。

ケアプランデータ連携システムの現状と義務化の可能性

以下では、ケアプランデータ連携システムの基本的な概念、義務化の可能性とその背景、そして厚生労働省の方針と今後の展望について詳しく説明します。

ケアプランデータ連携システムとは?

ケアプランデータ連携システムとは、介護業界で必要なケアプランやサービス利用票などの書類をオンラインでやり取りできるシステムです。このシステムは、介護従事者の業務負担を軽減し、業務を円滑に進めるために導入されました。

また、ケアプランデータ連携システムは厚生労働省の主導で2023年4月から稼働しています。情報の一元管理により、情報の信頼性と利便性が向上し、患者や利用者の安全性やサービスの品質向上が期待できます。

参考:公益社団法人 国民健康保険中央会『ケアプランデータ連携システム

義務化の可能性とその背景

現在、ケアプランデータ連携システムの導入は義務化されていません。しかし、将来的には義務化される可能性が高いとされています。

その背景には、少子高齢化社会に伴う利用者の増加、低賃金・重労働による離職率の高さ、深刻な人材不足などがあります。これらの問題を解決するためにも、システムの導入が推奨されています。

また、システムの拡充にあたっては、ケアマネージャーが困難な状況で情報を取り扱っていることを考慮し、その業務動線に沿った仕様を定義することが重要です。

厚生労働省の方針と今後の展望

厚生労働省は、ケアプランデータ連携システムの普及と拡充を積極的に推進しています。システム導入にかかるコストや、データ連携先のICTリテラシー・準備性の低さなどの障壁も存在しますが、これを克服する方策が検討されています。

介護業界の現状を考慮すると、今後もケアプラン連携システムの普及が推進される可能性は高いでしょう。しかし、情報を共有する相手の拡大や共有する情報の量・質の拡充など、さまざまな課題があります。また、介護保険法改正の影響が今後の方針に影響を与える可能性もあります。

ケアプランデータ連携システムを導入するメリット

ケアプランデータ連携システムを導入すると、以下のようなメリットが得られます。

  • 業務の効率化
  • データ管理の一元化
  • 利用者へのサービス品質向上

以下で、それぞれを詳しく説明します。

業務の効率化

業務の効率化は、ケアプランデータ連携システムを導入する最大のメリットの一つです。紙媒体でのやり取りがなくなるため、事務作業にかかる時間が大幅に削減されます。

さらに、専門職同士がリアルタイムで情報を共有できるので、適切なケアプランの策定や調整がスムーズに行えます。このようにして、介護従事者一人ひとりの負担が減少し、人手不足も解消される方向に進むでしょう。

データ管理の一元化

データ管理の一元化も、このシステムの導入で得られる大きなメリットです。一元管理されたデータは情報の信頼性が向上し、結果としてセキュリティの強化につながります。

また、一元化されたデータからは、必要な情報をすぐに取りだすことができます。これにより、急な変更や緊急事態にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

利用者へのサービス品質向上

最後に、利用者へのサービス品質が向上する点も非常に重要です。透明性の高いデータ管理により、利用者とその家族に安心感を提供できます。

例えば、過去のケア履歴や健康状態をすぐに確認できるため、それに基づいた最適なケアプランの検討が可能です。

効率的なデータ管理が可能になることで、利用者一人一人のニーズに柔軟に対応できます。これが全体的なサービスの質を向上させる要因となるでしょう。

ケアプランデータ連携システムを導入するデメリット

ケアプランデータ連携システムの導入は介護事業所に多くのメリットをもたらしますが、デメリットも無視できません。

デメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 導入コストがかかる
  • データセキュリティの課題
  • スタッフ教育と運用の工夫

以下では、それぞれについて詳しく解説します。

導入コストがかかる

ケアプランデータ連携システムを導入する際には、システムの利用料として年間21,000円の費用が発生します。また、電子証明書発行手数料として3年間で13,200円の費用が必要です。

さらに、介護ソフトの導入費用や、障害が発生した際の修理費用も考慮する必要があります。これらのコストは、長期的に見ても少なからず負担となるでしょう。

参考:公益社団法人 国民健康保険中央会『ケアプランデータ連携システムについて

データセキュリティの課題

ケアプランデータ連携システムを導入することで、患者や利用者の個人情報がオンラインで管理されます。これにより、データ漏えいのリスクが高まる可能性があります。

ケアプランデータ連携システムは個人情報を扱うため、高度なセキュリティが施されていますが、いかに優れたシステムでもエラーが起きる可能性はゼロではありません。

また、システムに未熟なスタッフが操作することで、誤って情報を外部に漏らしてしまう可能性も考えられます。そのため、従業員への研修や定期的なセキュリティチェックが必要となります。

スタッフ教育と運用の工夫

ケアプランデータ連携システムを導入する場合、スタッフ全員がそのシステムを使いこなせるようになる必要があります。しかし、全員がITに精通しているわけではないため、教育と研修が必要です。

研修を行うことで、スタッフがシステムを効率よく使いこなせるようになりますが、その研修にも時間とコストがかかります。また、研修が一度終わった後も、新たな機能が追加された場合やシステムがアップデートされた場合は、再度研修が必要となる可能性があります。

ケアプランデータ連携システム導入のステップ

ケアプランデータ連携システム導入のステップは、主に次の5つに分けられます。

  1. 介護ソフトの対応状況の確認
  2. 電子証明書のインストール
  3. ケアプランデータ連携システムの利用申請
  4. ケアプランデータ連携クライアントソフトの導入
  5. ライセンス料の支払い

以下で、各ステップの詳細を説明します。

介護ソフトの対応状況の確認

ケアプランデータ連携システムの導入にあたり、まずは使用している介護ソフトがこのシステムに対応しているか確認する必要があります。対応したソフトを使用している場合は次のステップに進みましょう。

対応していない場合は、ソフトウェアのアップデートや新しいソフトの導入を検討する必要があります。この段階で選択するソフトウェアは、今後の業務効率化にも影響を与えるため、慎重な選定が求められます。

また、ソフトウェアが対応している場合でも、そのバージョンや設定によっては追加の設定が必要な場合があります。この点も確認し、必要ならばソフトウェアのサポートに問い合わせましょう。

電子証明書のインストール

次に、ケアプランデータを送受信するためには電子証明書が必要です。この証明書は、データの安全性を保証するために不可欠です。

電子証明書は「電子請求受付システム総合窓口」から申請できます。なお、介護保険請求の電子証明書を既に所有している場合、同じ電子証明書が使用できます。

証明書を取得した後は、それを介護事業所で使用するコンピューターにインストールする必要があります。インストール作業は専門的な知識が必要な場合もあるため、必要に応じてIT担当者や外部の専門家に依頼しましょう。

ケアプランデータ連携システムの利用申請

ケアプランデータ連携システムの利用には、事前に利用申請が必要です。「公益社団法人 国民健康保険中央会」のWEBサイトなどで申請できます。申請には、ユーザID、パスワードなどの情報が必要です。

申請が完了したら、次に必要なソフトウェアの設定のステップです。

ケアプランデータ連携クライアントソフトの導入

ケアプランデータ連携システムを利用するためには、「ケアプランデータ連携クライアント」ソフトが必要です。このソフトは、ケアプラン連携システムのサポートサイトからダウンロードできます。

ソフトをダウンロードした後、介護事業所で使用するコンピューターにインストールします。インストール作業は、一般的には簡単にインストールできるはずですが、問題が発生した場合はサポートに問い合わせることが有用です。

参考:ケアプランデータ連携システムヘルプデスクサポートサイト

ライセンス料の支払い

最後に、ケアプランデータ連携システムの利用にはライセンス料が発生します。料金は年間21,000円、有効期間は1年間です。また、複数事業所を運営している場合であっても、1事業所番号あたり21,000円が必要になるため注意が必要です。

ライセンス料の支払いは、国保連合会に請求する介護給付費からの差引となりますが、請求書送付による口座振り込みにも対応しています。

以上が、ケアプランデータ連携システムの導入に向けた具体的なステップです。各ステップを慎重に進めることで、スムーズな導入が可能です。

参考:ケアプランデータ連携システムヘルプデスクサポートサイト『よくあるご質問

まとめ

本記事では、ケアプランデータ連携システムについて、その導入のメリットとデメリット、さらには具体的な導入ステップについて詳しく解説しました。

ケアプランデータ連携システムを導入すると、デメリットを大きく上回るメリットが得られます。ケアプランデータ連携システムを導入する際は、今回紹介したステップを参考に一つずつ進めていきましょう。

現段階ではケアプランデータ連携システムの導入は義務化されていません。しかし、今後の義務化の可能性については、厚生労働省の方針と展望が鍵となります。導入を検討する際は、これらの要素を総合的に考慮する必要があります。

義務化の可能性については、厚生労働省の方針と今後の展望が鍵となりますが、現状ではまだ明確な方向性は示されていません。しかし、システムの導入は今後ますます重要になるでしょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。