お年寄りの方は、ものを捨てられない方が多いんですね。新しいものがどんどん溜まっていくというより、大事に使うから、捨てられずにいるものが多い。だからこそ、いつも過ごす部屋だけは、ものを少なくするようにお勧めしています。どうしても捨てられないものがあれば、普段使わない部屋に置いておく。よく使う部屋、リビングや寝室は、できるだけものを減らしておく。
とは言っても、あれこれ捨てるのは難しいでしょうから、どうしてもという方には「1室だけでも安全にする」ことを勧めています。すべての部屋を安全にすることは難しくても、リビングや寝室など、よく使う1室だけはものを減らして、安全な部屋にしておくこと。
ーーありがとうございます。
青木さんは、整理収納アドバイザー1級と防災士資格の両方をお持ちとのことですが、先に取得したのはどちらだったんですか?
先に取得したのは、整理収納アドバイザーなんです。
元々「お片づけ」が好きだったんですよね。前職はKUMONの先生をしていたんですが、とても忙しいんですよ。学校が終わる時間になると生徒が一気にやってくるので、ピークの時間はとんでもなく忙しい。そのときに、いかにストレスなく、スムーズに生徒たちに教えることができるだろうと考えたときに、整理整頓をしっかりとしておくことが大事だと気付いたんです。自分が忙しくならないように、いつ何が起きても対応できるように、普段から整理整頓をしておく。そうすることで、ピークの時間でも慌てず余裕を持って対応できるようになったんですね。ちょうどその時期に、整理収納アドバイザーという資格があることを知って、取得しようと思ったのがきっかけです。
防災士の資格は、その三年後に取得しました。というのも、整理収納について勉強していたとき、すごく防災に繋がってるなと感じていたんですよ。実際にお客様のお家をお片づけしていても「高いところに重いものがあるのは危ないな」「緊急用品がすぐに取り出せない場所にあるぞ」など、整理収納と防災が密接な関係にあることを肌で感じたのがきっかけです。お家を快適にすることと、防災は繋がっている。整理収納のアドバイスをするなら、防災の事もきちんと知った上で教えたいなと思い、防災士の資格を取得しました。
訪問介護の方から話を聞くと、寝室にものが多いご年配の方が多いんですね。介護の方がお家におじゃました際に、寝室にいるときに何か起きたら危ないよ!という状態になってしまっている。ものを捨てられないならせめて、移動させたりすることで寝室だけでも安全な状態にしておきましょう。
ーーなるほど、「1室だけでも安全にする」という考え方。それならものを捨てられない方でも出来そうな生活防災ですね。
また、足元にものを置かないことですね。例えばチラシ1枚が床に落ちていただけでも、滑って転ぶ可能性がありますから。お年寄りの方はマットなど小さい段差でつまずいたりすることもあるので、足元はできるだけ綺麗にフラットな状態にしておく。通路、避難経路をきちんと確保しておくことが大事です。
あとは、よくご年配の方から「防災リュックが重くて持ち運べない」という話も聞きます。一覧表を見て用意するのも大事ですが、高齢者の方の場合は、自分が持ち運べる量に合わせて入れておくことを勧めています。
ーー防災リュックの中身についても、お伺いしておきたいです。
そうですね、まず、ひとり1リュックは必須です。それぞれの寝室にひとつずつ用意しておきましょう。中身は人によって違うと思うので、一覧表を見て揃える前に、まずは「自分にとって必要なもの」を入れていくこと。
私の場合だとコンタクトや眼鏡、持病のある方だとお薬が必須ですよね。アレルギーのある方やお子さんがいれば、アレルギーに対応する食品を入れておく、など。自分が必要だと思うものをまず入れましょう。そこから一覧表を見て、持ち運べる量に合わせて吟味していく。
若い方なら、とりあえず必要そうなものを入れて、一覧表に載っているものを入れても持ち運べるでしょうけど、高齢者の方の場合、そうはいきません。まず、自分にとって最低限必要なものを入れること。
また、屋外で被災した時のために、自分用とは別に、玄関や車の中に防災リュックをひとつ用意しておくこともオススメです。被災後は家の中に入れない場合もあるので、自分用とは別に用意しておくと安心ですね。
ーー必要なものはそれぞれ違うので、そこからまず入れていく。
介護施設における生活防災について、ポイントはありますか?
私の体験から申しますと、防火扉や非常口にものが置かれていないか、というのが大事な点ですね。普段使わない場所だからこそ、ものを置いちゃったりして、いざというときに使えない。消火栓や警報がきちんと作動するかなどの点検や、避難訓練をきちんと行えているか、も大事です。
また、備品が固定されていないケースも多いんですよ。家具と同じで、転倒防止やガラス飛散などの対策をきちんとしておくこと。そして、先ほども言いました「家具の向き」。万が一倒れたときに、通路を塞いでしまうとよくない。介護施設には車椅子の方もいらっしゃるでしょうし、通路・避難経路の確保ができるよう整理しておくことが大事です。
ただ、介護施設は24時間稼働で忙しいので、日々そうした点検やチェックがなかなかできない施設も多いと思われます。もちろん介護施設の方も防災のプロではないですから、私たち防災士が協力しながら、そうしたポイントを整理し、一緒に防災について考えていければ。
ーーありがとうございます。それでは最後に、日常からできる生活防災についてお聞かせ願えますか。
地域のハザードマップがあるように、家の中のハザードマップを作ってみましょう。自分が住む地域の危ないところは知っている方は多いですが、自分の家の危ないところを把握している人は意外に少ないんですね。地域と違って、住んでいる人しか分からないことなので、自分たちで把握しておくしか方法はありません。そのひとつひとつが身を助けることにつながります。屋外よりも家にいる時間の方が長いですから、まずは家を安心・安全な状態にしておきましょう。
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