
介護事業所では、利用者にとって快適で安全な環境を提供することが大切です。そのためには、整理整頓が欠かせません。整理整頓された職場は、業務効率の向上につながり、質の高い介護サービスを提供できるようになります。
この記事では、介護事業所の整理整頓について、基本的なルールから書類管理、デスク周りの整理整頓まで、幅広く解説します。整理整頓のメリットや、整理整頓が苦手な人への指導方法、狭い事務所での整理整頓のコツなども紹介します。
この記事を読めば、実践的な整理整頓に取り組むためのヒントが得られるでしょう。ぜひ最後まで読んで、快適な職場環境づくりに役立ててください。
介護事業所の整理整頓はなぜ大切?
介護事業所で整理整頓を徹底することは、職場環境を整えるだけでなく、スタッフや利用者にとって多くのメリットをもたらします。整理整頓が必要な理由としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 職場の安全性を確保できるから
- モチベーションアップにつながるから
- 業務効率化で無駄な残業を減らせるから
それぞれのポイントを具体的に見ていきます。
職場の安全性を確保できるから
整理整頓が行き届いた職場は、事故やケガのリスクを大幅に減らせます。特に介護事業所では、利用者やスタッフの安全を守るために、物の配置や通路の確保が非常に重要です。
物が散乱していると、転倒や衝突の危険が高まります。例えば、通路に荷物が置かれていると、車椅子や歩行補助具の移動が妨げられるかもしれません。
また、緊急時に必要な物品がすぐに見つからない場合、迅速な対応が遅れる可能性もあります。整理整頓を徹底することで、こうしたリスクを未然に防げます。
さらに、利用者が安心して過ごせる環境を整えることは、介護事業所の信頼性向上にもつながります。安全な環境を維持するために、日々の点検や清掃を習慣化しましょう。
モチベーションアップにつながるから
整理整頓された職場環境は、スタッフの心理的な負担を軽減し、働きやすさを向上させます。清潔で整然とした空間は、視覚的にも気持ちが良く、職場全体の雰囲気を明るくします。
物が乱雑に置かれている職場では、探し物に時間がかかり、ストレスが溜まりやすくなります。一方、整理整頓が行き届いている職場では、必要な物がすぐに見つかるため、業務に集中しやすくなります。
また、整理整頓をチームで取り組むことで、職場内のコミュニケーションが活性化します。スタッフ同士の協力体制が強化されることで、業務の効率化が期待できます。日々の整理整頓を通じて、働きやすい環境を作りましょう。
業務効率化で無駄な残業を減らせるから
職場が整理整頓されていないと、必要なものを探すのに時間がかかり、介護記録の作成や申し送りなどの業務に支障をきたします。
一方、整理整頓された職場では、探し物の時間が大幅に短縮され、記録作業や引き継ぎ業務もスムーズに行えるため、業務効率が向上します。
さらに、必要な物がすぐに見つかり、作業の中断も減るため、予定された時間内に業務を終えられる可能性が高まります。
各部署で「物の定位置」を決め、誰でも迷わず物品を取り出せる環境を整えましょう。
事務所の整理整頓の基本ルール
事務所の整理整頓は、業務効率を高め、働きやすい環境を作り出すために欠かせません。ここでは、整理整頓を効果的に進めるための3つのポイントを解説します。
- 整理整頓の基本「5S」を徹底する
- 必要なものと不要なものを分ける
- ルールを職場全体で共有する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
整理整頓の基本「5S」を徹底する
整理整頓の基本といえば「5S」が挙げられます。この「5S」は、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの頭文字を取ったもので、効率的な職場環境を維持するためのフレームワークとされています。
「整理」は必要なものと不要なものを分け、使わないものを処分して作業場所を確保することを指します。「整頓」は、必要なものを使いやすい場所に配置し、誰でもすぐに取り出せる環境を作ることです。
そして「清掃」は、日常的に汚れやゴミを取り除き、快適な空間を保つための習慣です。「清潔」は、整理、整頓、清掃を継続して行うことで整った状態を維持する意味を持ちます。「しつけ」は、これらを職場全体での習慣として定着させる取り組みです。
「5S」を徹底することで、事務所全体の効率性と快適さが大幅に向上します。
必要なものと不要なものを分ける
整理整頓の第一歩は、必要なものと不要なものを分けることです。「これは本当に必要か?」と自問自答しながら、物品や書類を一つずつ確認していきましょう。「一年以上使用していないもの」など、具体的な基準を設けると判断しやすいです。
不要なものは、廃棄・リサイクル・寄付など、適切な方法で処分します。紙の資料はデジタル化して保存すれば、保管スペースの削減になります。必要なものは、用途別に分類し、使いやすい場所に収納しましょう。
必要なものと不要なものを分ける作業によって、職場環境の無駄を省き、業務の効率化を図れます。必要なものと不要なものを定期的に見直す習慣を身につけましょう。
ルールを職場全体で共有する
整理整頓を継続的に行うためには、職場全体でルールを共有し、全員が同じように取り組むことが大切です。整理整頓の目的や具体的な手順をまとめた資料を作成し、分かりやすい形で共有しましょう。
「使用後は元の場所に戻す」「週に一度、共有スペースを清掃する」といった具体的なルールを設定すると、実践しやすいです。ルールは、メールや掲示板、会議などを通して周知徹底しましょう。
また、整理整頓を推進する担当者を決めて、進捗状況を管理すると、ルールが徹底されやすくなります。職場の状況や業務内容の変化に合わせて、ルールを定期的に見直すことも大切です。職場全体で整理整頓の意識を高め、継続的な改善に取り組みましょう。
デスク周りの整理整頓アイデア
快適な職場環境は業務効率の向上に欠かせません。デスク周りの整理整頓は、業務効率化だけでなく、心のゆとりにもつながります。以下のポイントを押さえながら、整理整頓のコツを見ていきましょう。
- 仕切りを活用して引き出しをスッキリさせる
- 文房具や小物は種類別に収納する
- パソコン周りのコード類を整理する
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
仕切りを活用して引き出しをスッキリさせる
引き出しの中は、文房具や書類などが混在しやすく、乱雑になりがちです。仕切りを活用することで、引き出しの中を整理し、必要なものをすぐに見つけやすくなります。
プラスチック製、布製、木製など、さまざまな素材の仕切りがあります。引き出しのサイズや収納するものに合わせて、最適な仕切りを選びましょう。100円ショップでも手軽に購入できます。
仕切りを使うことで、文房具、書類、電卓など、種類別にアイテムを整理できます。また、引き出しのデッドスペースを減らし、収納スペースを最大限に活用することもできます。特に、クリップや付箋など細かいものが多い場合は、細かく仕切りを分けるのがおすすめです。
文房具や小物は種類別に収納する
文房具や小物は、種類別にまとめて収納することで、デスク周りをすっきりできます。また、必要なものをすぐに見つけられるため、作業効率の向上にもつながります。
収納には、収納ボックスやトレーを活用するのがおすすめです。透明なボックスやトレーを使用すると、中身が一目で分かり、さらに便利です。
使用頻度が高いペン、消しゴム、クリップなどは、デスクの上の手の届きやすい場所に収納しましょう。ホッチキスや穴あけパンチなど、使用頻度が低いものは、引き出しの中に収納するのがおすすめです。
使用頻度を考慮して、収納場所を決めましょう。
パソコン周りのコード類を整理する
パソコン周りのコード類は、整理されていないと見た目が悪いだけでなく、ほこりが溜まりやすく、掃除もしにくくなります。また、断線や火災の原因になる可能性もあります。
コードを整理するには、ケーブルタイやマジックタイがおすすめです。ケーブルタイは、コードを束ねて固定するのに役立ちます。マジックタイは、取り外しが簡単なので、コードの配置変更を頻繁に行う場合に便利です。
また、ケーブルボックスや配線トレーを使用すると、電源タップやコードを目立たないように収納できます。デスクの天板裏に取り付けるタイプの配線トレーは、見た目をすっきりさせ、配線を踏んでしまうリスクも軽減します。
さらに、マウスやキーボードをワイヤレスにすると、コードを減らすことができるので、さらにデスク周りをすっきりできます。
コードを整理することで、デスク周りが清潔に保たれ、作業効率も向上します。安全面も考慮して、整理整頓に取り組みましょう。
書類管理の整理整頓アイデア

書類管理は、介護事業所において非常に重要な業務の一部です。以下のポイントを参考に、書類管理を見直してみましょう。
- 書類を分類・ラベリングする
- デジタル化でペーパーレスを進める
- 書類の保管期限を決めて効率化する
それぞれの方法について詳しく見ていきます。
書類を分類・ラベリングする
書類を整理整頓する上で、分類とラベリングは基本です。書類の山に埋もれてしまう前に、きちんと分類・ラベリングを行いましょう。
まず、書類を種類や用途ごとに分類します。「契約書」「請求書」「介護記録」など、カテゴリーを作成します。カテゴリーが決まったら、それぞれの書類にラベルを貼りましょう。ラベルプリンターや手書きで作成したラベルを貼ることで、書類を探す手間が省けます。
また、色分けも効果的です。カテゴリーごとに異なる色のフォルダーやラベルを使うと、視覚的に分かりやすくなります。例えば「契約書」は青、「請求書」は赤、「介護記録」は緑など、色分けすると必要な書類をすぐに見つけられます。
進行中の書類と完了済みの書類を分けて保管することも重要です。進行中の書類は、デスクの上のトレーに保管し、完了済みの書類はファイルボックスに保管するなど、保管場所を分けると書類を探す時間を短縮できます。書類を分類・ラベリングして、整理整頓された状態を保ちましょう。
デジタル化でペーパーレスを進める
書類のデジタル化は、ペーパーレス化を進める上で有効な手段です。紙の書類をスキャンしてデジタルデータに変換すると、保管スペースを削減できます。大量の書類を扱う介護事業所では、特に効果的です。
スキャンした書類は、クラウドストレージサービスを利用して保管・管理できます。クラウドサービスを利用すれば、場所を選ばずに書類にアクセスできるため、利便性が向上するでしょう。
また、電子契約システムを導入すれば、契約書を電子化できます。電子契約は、印刷や郵送の手間を省き、業務効率化につながるでしょう。また、印紙税が不要になる場合もあり、コスト削減にもつながります。
デジタル化した書類のセキュリティ対策も重要です。パスワードの設定やアクセス権限の設定など、情報漏えいを防ぐための対策をしっかりと行いましょう。
書類の保管期限を決めて効率化する
書類の保管期限を決め、期限が過ぎた書類は適切に廃棄すると、保管スペースの確保と管理業務の効率化につながります。
書類の保管期限は、法律で定められているものや、事業所ごとに定めているものがあるため注意が必要です。例えば、介護記録は、サービス完結の日から2年間の保管が義務付けられています。ただし、自治体によっては、5年間の保管が必要な場合もあるので注意しましょう。
保管期限が過ぎた書類は、シュレッダーなどで適切に廃棄する必要があります。個人情報を含む書類は、特に注意が必要です。保管期限をラベルに明記しておくと、廃棄時期が一目で分かり、便利です。
書類を「短期(1年以内)」「中期(3~5年)」「長期(5年以上)」と分類し、保管場所を分けるのも効果的です。保管期限を明確にして、書類管理の効率化を目指しましょう。
参考:e-Gov法令検索『介護保険法施行規則』
よくある質問
では、最後に事務所の整理整頓に関する、よくある質問にお答えします。
- 職場で整理整頓ができない人への指導方法は?
- 整理整頓のルールを守ってもらえないときはどうする?
- 狭い事務所でも効率的に整理整頓するコツは?
それぞれの質問について詳しく見ていきましょう。
職場で整理整頓ができない人への指導方法は?
整理整頓が苦手な人への指導では、具体的なルール設定と、個別のフォローアップが大切です。
まず、職場全体で共有する明確なルールを設定します。「使用後の備品は元の場所に戻す」「書類は決められた場所にしまう」など、具体的な行動をルールとして定めましょう。ルールが明確であれば、整理整頓が苦手な人も行動しやすくなります。
ルールを伝えるだけでなく、個別のフォローアップも重要です。整理整頓が苦手な人には、なぜ整理整頓が必要なのか、そのメリットを説明します。整理整頓された職場は、業務効率が上がり、事故のリスクも軽減されます。また、必要なものをすぐに見つけることができ、時間の節約にもなることも伝えてみましょう。
小さな成功体験を積ませることも効果的です。「デスクの上を片付ける」など、簡単なタスクから始め、徐々に難しいタスクに挑戦させます。小さな成功体験を積み重ねることで、モチベーションを維持できます。整理整頓が苦手な人に寄り添い、丁寧に指導しましょう。
整理整頓のルールを守ってもらえないときはどうする?
せっかく整理整頓のルールを作っても、守ってもらえなければ意味がありません。ルールを守ってもらえない場合は、その原因を探り、ルールを見直し、チーム全体で整理整頓に取り組む必要があります。
ルールを守ってもらえない原因はさまざまです。ルールが複雑すぎたり、時間が足りなかったり、あるいは、整理整頓の必要性を感じていないのかもしれません。原因を特定することで、適切な対策を講じることができます。
ルールが複雑すぎる場合は、簡素化を検討しましょう。例えば「書類は種類ごとに分けて保管する」ではなく「書類は所定の場所にしまう」というシンプルなルールに変更します。
ルールを守れない理由が時間不足の場合は、整理整頓の時間を確保できるよう、業務スケジュールを調整する必要があるかもしれません。また、整理整頓の必要性を感じてもらえない場合は、整理整頓のメリットを改めて説明する機会を設けましょう。
チーム全体で整理整頓に取り組むことも重要です。定期的に整理整頓の時間を設けたり、整理整頓がよくできたチームを表彰したり、チーム全体で意識を高める工夫をしましょう。
狭い事務所でも効率的に整理整頓するコツは?
狭い事務所では、限られたスペースの有効活用が重要になります。整理整頓のアイデアを駆使して、快適な作業環境を作りましょう。
まず、壁面収納を活用し、書類や備品を収納することで床面積を節約します。天井までの収納を利用することで、収納スペースを増やすことも可能です。ただし、落下防止のためにしっかり固定する必要があります。
デスクの配置も工夫しましょう。L字型のデスクを導入すれば、角のスペースを有効活用できます。共有デスクを導入して、個別のデスクを減らし、スペースを広く使うのも効果的です。
書類はデジタル化してペーパーレス化を進めましょう。書類をスキャンして電子データとして保存すれば、収納スペースを節約できます。
視覚的な広がりを演出することも大切です。壁や家具に明るい色を使ったり、鏡を設置したり、工夫次第で空間が広く見えます。定期的に不要なものを処分し、整理整頓された状態を保ちましょう。
まとめ
事務所の整理整頓は、単なる掃除ではありません。安全で効率的な職場環境を作る大切な取り組みです。5Sの考え方を基本に、デスク周りや書類管理を工夫することで、業務の質を大きく向上できます。
整理整頓のポイントは、必要なものと不要なものを分け、分かりやすく配置することです。デジタル化を進めれば、さらに効率的に作業できます。小さな工夫の積み重ねが、職場全体の雰囲気を変えていきます。
面倒に感じる人も、まずは小さな目標から始めてみましょう。デスクの片隅から整理を始め、徐々に範囲を広げていけば、きっと整理整頓が習慣になるはずです。職場環境を改善する第一歩を踏み出しましょう。
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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。