
実地指導は、介護施設や介護事業所が正しく運営しているかを確認する調査です。
しかし、いつ行われるものなのか、どのような準備をすればよいのかなど、疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、実地指導で必要な書類や実際の順序について解説します。
この記事を読むことで、実地指導を受ける際の対策法や普段気をつけるべきポイントを知ることができます。
実地指導とは
介護サービス事業所は、都道府県から指定を受けることで、サービスの提供が可能です。この指定を受けている事業所が対象となります。
ここでは、その目的と監査の違いについて解説します。
実地指導の概要と目的
都道府県や市町村の担当者が介護事業所を訪れ、介護事業所として正しい運営がされているかどうかを確認するのが『実地指導』です。
また、介護施設を運営するうえでのサービス提供が適切か否か、不正に介護保険を給付していないかを確認する目的もあります。
介護施設の運営は、介護保険法に準じて行われており、違反や不備が見つかると運営に関する指導を受け、運営自体ができなくなってしまう可能性があります。介護保険法を十分に理解し、正しい事業所運営が大切です。
実地指導の根拠法令
介護事業所の実地指導は、介護保険法の法令に従って実施されます。
介護保険法条文には、「必要があるときは都道府県や市町村が文章の提出や依頼、職員への質問ができる」との記載があります。
都道府県や市町村などの指定権者は、適切に介護給付金が使用されているかを調べる権利があることが法的に認められているのです。
参考:介護保険法条文『介護保険法第23条・第24条』
実地指導と監査の違い
実地指導は、介護施設を運営するうえで適切なサービス提供が行われているか、介護保険給付に不正はないか確認することを目的としています。
それに対して監査は、介護事業所が運営基準に違反している可能性のある場合や、不正の疑いがある場合に、事前の通達なく行われる調査です。
監査により不正や法令違反が認められた場合は、今後の改善を求める「改善勧告」や「改善命令」、さらには「行政処分」が行われる可能性もあるでしょう。
行政処分には、以下の3つの処分があります。
- 介護保険サービスの一部の提供停止を求める「指定の一部効力停止」
- 一定期間サービスの提供停止を求める「指定の全部効力停止」
- 介護事業所の運営自体ができなくなってしまう「指定取消」
指定取消になると、現在行っている事業所での営業ができなくなるため、再度指定の交付申請が必要です。そうならないためにも、日頃から正しい事業所運営を心がけましょう。
実地指導の準備・必要書類
実地指導を受けるにあたり、運営に関する書類などの提示が求められます。
過去何年分の書類を用意しておけばよいかなど、事前に準備が必要な書類について解説します。
必要となる書類
厚生労働省により、実地指導で確認するべき項目が決められています。
基本的には、重要事項説明書やサービス計画書などの『サービスの質に関する事項』、勤務実績表やサービス提供記録などの『サービスの質を確保するための体制に関する事項』について確認が行われます。
参考:厚生労働省『確認項目及び確認文書』
実地指導で提出する書類は何年分?
実地指導では、一般的に過去2年分の書類を提出する必要があるとされています。しかし、自治体によって書類の保管期間が異なるため、詳しくは事前に通知される『実地指導通知文』に記載されている内容に従いましょう。
基本的に通知文を元に準備を行っていれば、問題はありません。
当日までの流れ
事業所で実地指導が行われるまでには、いくつかの順序があります。
以下では、その具体的な流れについて解説します。
1ヶ月前:通知文が届く
約1ヶ月前に、実施される具体的な日時などが書かれた通知文が届きます。通知文が届く前に、電話連絡がくる場合もあるようです。
この通知文には、事前に提出する書類や当日に必要な書類などが記載されています。よく確認して間違いのないように準備を進めましょう。
2週間前:事前資料を提出する
2週間前になると、都道府県や市町村に事前資料を提出します。指定の期限を守り、スケジュールに余裕を持って書類の確認を行いましょう。
当日:施設の視察・必要書類を提示する
通知文に記載されている指定の日時に、施設の視察と事業所運営に必要な書類などの確認が実施されます。
提出した書類の中で軽微な問題点がある場合は、口頭での指導が行われます。口頭指導は、その場で指導を受けることとなるため、直ちに改善の対応を行いましょう。
その後、約1ヶ月ほどで結果が事業所に届きます。この通知に重大な問題点が記載されているときは、指導の内容を真摯に受け止め、しっかりと改善できるように対応しましょう。場合によっては改善策を講じたことがわかるような改善報告書などの提出が求められる可能性があります。
実地指導の事前対策について
実地指導は、指定期間内に定期的に行われるため、日頃から対策をしておく必要があります。
以下では、普段からできる対策や、当日気をつけるべきポイントについて解説します。
日々の書類の整理・不備がないか確認する
介護事業所を運営するうえで、サービス計画書や介護記録、職員のタイムカードや勤務表など、さまざまな書類を扱うこととなります。
日々の業務内で定期的に書類の確認、整理を行い、不備や不足の事項を見つけたら直ちに確認と修正を行うようにしましょう。
今後不備が起きないように、社内で書類の管理方法などを検討することも大切です。
また、マニュアルなどに変更があった場合も、速やかに差し替えを行い、常に最新の情報を書面に残すようにしましょう。
実地指導通知文をしっかりと確認し準備する
必要な書類は、事前に送られてくる通知文で確認できます。通知文の内容をしっかりと確認し、抜けのないように準備を進めましょう。
もし、不明な点があれば、通知文に記載のある担当者に問い合わせましょう。
提出期限までに確実に必要書類を揃えられるように、日々準備を進めることが大切です。
当日は担当者が作業できるスペースを確保しておく
当日は、都道府県や市町村の担当者が3名ほど来所します。
たくさんの書類の確認を行うため、作業が十分にできるようある程度スペースのある場所の確保が必要になります。
また、利用者から見える位置で作業すると、施設に何か問題があるのではないかと勘違いされてしまう可能性があります。利用者から見えにくい離れた位置で、作業が行える場所を確保しましょう。
実地指導の書類は何年分必要?【まとめ】
実地指導は、介護サービス事業所として正しい運営がされているかどうか、不正に介護保険を給付していないかを確認する目的で行われます。
必要な書類は、個別サービスの質に関する事項、個別サービスの質を確保するための体制に関する事項についての書類などです。
一般的には、過去2年分の書類を提出する必要があるとされています。ただし、過去何年分の書類提出が求められるかは、自治体によって書類の保管期間が異なるため、指定権者から送られてくる通知文をしっかりと確認することが大切です。
また、日々の業務内で定期的に書類の確認をし、不備がないかどうか整理するなど、日頃から対策をすることで、万全な体制で実地指導に臨むことができるでしょう。
関連記事
防災⼠の詳細はこちら
証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。