
新人の見守りに追われて記録が終わらず「もしかして要領が悪いのでは」と悩んでいませんか?現場の人手不足も重なり、責任感が強い人ほどすべてを一人で抱え込み、残業続きで疲弊してしまいがちです。
本記事では、新人教育で自分の仕事ができない原因と、仕組みを変えて時間を生み出す解決策を解説します。手戻りを防ぐ教え方や、チーム全体で新人を育てる環境づくりのポイントも詳しくまとめました。
この記事を読めば、教育と業務を両立させるコツがわかり、心に余裕をもって指導できるようになりますので、最後までご覧ください。
新人教育で自分の仕事ができない3つの原因
新人教育で自分の仕事ができないと悩むのは、決してあなたの要領が悪いからではありません。利用者の命を預かる介護現場では、安全を守るために片時も目が離せず、通常業務との両立は非常に困難です。
ここでは、教育担当者が陥りやすい業務停滞の主な原因について、3つの視点から詳しく解説していきます。
介護現場は人手不足で新人から目が離せないから
最も大きな要因は、現場の人手不足により物理的な時間が確保できない点にあります。介護の仕事は安全管理が最優先であり、新人が業務を覚えるまではつきっきりで見守る必要があるからです。
利用者の急変やナースコールなど、その場に応じた臨機応変な対応が求められる場面も多く、新人を放置することはできません。それにもかかわらず、通常業務を減らさずに教育を任されるケースが多く、記録を書く時間すら取れないのが現実でしょう。
多くの現場では「早く独り立ちさせてほしい」という圧力がかかり、精神的な負担も大きくなりがちです。これは個人のスキル不足ではなく、現場の体制に無理がある構造的な問題といえます。
完璧を目指すほど自分の仕事ができなくなるから
責任感が強い人ほど、完璧を求めすぎて身動きが取れなくなる傾向があります。一度にすべてを教えようとしても、新人の記憶力には限界があり、教える側の労力も徒労に終わりがちです。
たとえば、マニュアルが整備されていない環境で、あなたの経験や感覚をすべて口頭で伝えようとすると膨大な時間がかかります。業務ができるハイパフォーマーであっても、それを言語化して教えることには不慣れな場合が多く、準備や対応に追われてしまうでしょう。
教えることに時間を使いすぎると、本来やるべき自分の業務が後回しになる悪循環に陥ります。一人ですべてを抱え込まず、優先順位をつけて教える内容を絞る割り切りが求められます。
指導に一貫性がなく新人が混乱してしまうから
指導担当者ごとに教え方が異なると、新人が混乱して独り立ちが遅れてしまいます。人によって言うことが違うと、新人はどれが正解かわからず、その都度あなたに確認を求めてくるでしょう。
結果として、間違った手順の修正や再指導に時間を取られ、いつまでも手取り足取り教えなければならない状況が続きます。多くの現場では指導方法が標準化されておらず、個人の「我流」に頼っていることが、教育の効率を下げている原因です。
体系的な計画がないまま思いつきで指示を出すと、新人の知識がつながらず不信感を招くことさえあります。チーム全体で教え方を統一し、新人が迷わずに動ける環境を作ることが、あなたの時間を守ることにつながります。
解決策①自分の仕事の時間を作る仕組み化
新人教育で自分の仕事ができない状況を脱するには、根性論ではなく仕組みを変える必要があります。個人の頑張りに頼るだけでは、いずれ限界がきて共倒れになってしまうでしょう。
ここでは、教育の質を落とさずに、あなたの時間を確保するための具体的な仕組みづくりについて解説します。
新人に任せる業務と見守る業務を仕分ける
すべての業務につきっきりになるのではなく、新人の習熟度に合わせて「任せる業務」と「見守る業務」を明確に分けましょう。簡単なタスクや習得済みのルーチンワークを一人で任せることで、その間にあなたの業務を進められるようになります。
業務を「観察」「実践」「振り返り」の段階に分け、徐々に指導を減らしていく「教えたあとをみる」段階へ移行します。「わからないときに聞く人」さえ決めておけば、あなたが少し席を外しても現場は回るため、安心して自分の仕事に集中できるはずです。
マニュアルと教育計画で説明時間を減らす
口頭だけの説明をやめ、マニュアルや教育計画を活用して「教える時間」そのものを削減することが必要です。手順書があれば新人は予習や復習を自分でできるため、同じ説明を繰り返す無駄がなくなり、再指導の手間も省けるからです。
スマホで撮影した動画マニュアルなら、あなたは一度撮影するだけで済み、新人は空き時間に何度でも自学自習が可能になります。事前に「誰に・いつ・何を」教えるか計画を立てておけば、その場の思いつきで迷う時間が消え、効率的な時間配分ができるようになるでしょう。
記録や事務作業の時間をルール化する
あなたの事務作業や記録業務を守るためには、進捗管理や報告の手間を減らすルールづくりが有効です。チーム全体で以下の対策を導入し、特定の人に負担が偏らない環境を整えましょう。
- チェックシートで進捗を見える化する
- 質問対応の担当をチーム内で分担する
- デジタルツールで報告業務を減らす
ルールを決めておけば、事務作業中に頻繁に中断されるケースが減り、集中して業務に取り組めます。新人の理解度を客観的に把握できれば、過剰な確認作業に時間を費やす必要もなくなります。
解決策②新人教育の負担を減らす教え方
新人教育で自分の仕事ができないと焦る必要はありません。教え方を少し工夫するだけで、あなたの負担は大きく減らせます。
ここでは、手戻りを防ぎ、スムーズに技術を習得してもらうための指導テクニックを3つ紹介します。
作業手順と一緒に背景や目的を伝える
作業の手順だけでなく「なぜその作業が必要なのか」という理由や目的も必ずセットで伝えましょう。背景まで理解できれば、新人は仕事の意味を深く納得し、その場に応じた適切な判断ができるようになるからです。
たとえば「コピーをとって」と頼むだけでなく「会議で使う資料だから」と付け加えれば、新人は「きれいに揃える必要がある」と自分で気づけます。
ただやり方を教えるよりも、急所となるポイントの理由を共有することで、指示待ちにならず応用が利く人材へと成長してくれるでしょう。
質問を減らすメモとタイミングのルールを決める
あなたの業務時間を守るために、質問するタイミングやメモの取り方に明確なルールを設けましょう。いつでも質問を受けていると作業が中断されますが、時間を区切ることでお互いに集中できる環境が整います。
たとえば「質問は16時からまとめて聞く」と決めたり「一度メモしたことは質問前に見返す」よう徹底させたりします。
メモを取る習慣と質問時間をコントロールすれば、同じことを何度も聞かれる事態を防ぎ、あなたの仕事もスムーズに進むようになるはずです。
手本を見せてから実施まで「4段階」で教える
我流で教えるのではなく「TWI-JI(仕事の教え方)」という確立されたプロセスに沿って指導すると効率的です。正しい手順で段階を踏むことで、新人の理解度をその都度確認しながら、確実に定着させられます。
手戻りを防ぐために、以下のステップを意識して関わりましょう。
- 第1段階:習う準備をさせる
- 第2段階:作業を説明する
- 第3段階:やらせてみる
- 第4段階:教えたあとをみる
まず指導者が手本を見せながら説明し、次に新人にやらせて説明させる手順を踏めば「教えたつもり」を防げます。結果的に再指導の時間を大幅に減らせるでしょう。
参考:日総研印刷『医療現場の指導に足りないピース:TWIの「仕事の教え方」』
解決策③チーム全体で新人を育てる方法
新人教育で自分の仕事ができない悩みは、あなた一人で解決する必要はありません。むしろ、チーム全体で取り組むべき課題です。周りを巻き込むことで、負担は驚くほど軽くなります。ここでは、組織として新人を育て、あなた自身を守るための環境づくりについて解説します。
業務量を可視化して上司に相談する
教育にかかる時間を可視化し、上司に業務配分の調整を相談しましょう。指導には多くの時間が割かれ、そのままではあなたの通常業務を圧迫してしまいます。
事前に「いつ・何を・どれくらいの時間で」教えるかという計画を立てれば、拘束時間が明確になります。「この期間は通常業務を減らしてほしい」と交渉する材料になるはずです。
こまめに進捗を報告して理解を得ておけば「早く独り立ちさせろ」という無言の圧力も回避できるでしょう。
ユニット全体で新人を育てる意識を共有する
新人教育は担当者だけに任せず、ユニット全体で役割を分担する体制をつくりましょう。あなたが不在のときに教育が止まったり、負担が集中して共倒れになったりするリスクを防げます。
負担を分散させるために、以下のような工夫を取り入れてみましょう。
- 業務の基礎知識はAさんが教える
- 専門スキルはBさんが担当する
- メンター制度で相談役を分ける
メンター制度とは、評価を行う直属の上司ではなく、異なる職場の先輩が「利害関係のない立場」から新人をサポートする仕組みです。業務指導とメンタルケアの担当を分ければ、あなたの負担はさらに軽くなります。
チェックシートで習熟度を見える化する工夫も取り入れ、チーム全体でフォローし合える環境を目指しましょう。
参考:厚生労働省『メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集』
一人で抱え込まず自分のメンタルを守る
教育が思うように進まなくても、一人で悩みすぎない姿勢をもつことが最大の防御策です。「自分がしっかり教えなければ」と責任を感じすぎると、ストレスであなた自身が潰れてしまう恐れがあるからです。
「成長には時間がかかるもの」と割り切り、コミュニケーションに悩んだらすぐに先輩へ相談しましょう。動画教材など「自分が教えなくても学べる仕組み」に頼ることも、余裕を生む賢い手段です。
完璧を目指さず、長い目で新人の成長を見守るくらいがちょうど良いのです。
新人教育に関するよくある質問

新人教育で自分の仕事ができないと悩んでいるのは、あなただけではありません。多くの教育担当者が同じ壁にぶつかり、解決策を模索しています。
ここでは、現場でよく聞かれる3つの疑問について、Q&A形式で解説していきます。
何度教えても同じミスを繰り返すときの対処法は?
新人の能力を疑う前に、教え方のアプローチを見直してみましょう。本文でも説明しましたが、手順だけを伝えても「なぜそうするのか」という理由が伝わっていなければ、記憶に定着せず応用も利きません。
TWI-JI(仕事の教え方)には「相手が覚えていないのは、教える側が教えなかったからだ」という原則があります。確実に伝えるために、以下のステップを試してみてください。
- やって見せてから言って聞かせる
- 実際にやらせてみて間違いを直す
- 手順やコツを口に出して説明させる
専門用語を避け、新人が自分で説明できるまで確認すれば、ミスは確実に減っていくはずです。
教育係の負担が重すぎて辞めたいときはどうする?
限界を迎える前に、早急に環境を変えるアクションを起こしましょう。一人で抱え込んで倒れてしまえば、あなたにとっても施設にとっても大きな損失になってしまいます。
特定の担当者に負荷が集中すると離職のリスクが高まるため、上司に相談して業務量を調整してもらう必要があります。チーム全体で役割を分担したり、動画マニュアルを導入して「直接教えなくても学べる仕組み」を作ったりするのが効果的です。
同じことを何度も教える負担を減らせれば、精神的な余裕も生まれます。心を守るために周囲やツールを頼る勇気をもちましょう。
新人教育で自分の仕事が遅れると評価は下がる?
教育を任されること自体が、あなたが優秀で信頼されている証拠であり、基本的に評価は上がります。上司は教育業務を通じて、あなたがリーダーとしてさらに成長することを期待しているからです。
ただし、報告なしに通常業務が滞ると、部署全体の生産性に影響し、評価に関わる可能性もゼロではありません。本文でも説明しましたが、事前に「教育のために業務が圧迫されている」と相談し、業務配分を調整してもらいましょう。
教育期間中は業務量が減ることを前提に交渉し、チームで支え合う環境を作れば、マイナス評価を恐れる必要はありません。
まとめ
本記事では、介護現場において新人教育で自分の仕事ができないと悩む方に向けて、業務を効率化する仕組みや具体的な指導法を解説しました。責任感が強い人ほど一人で抱え込みがちですが、教育と通常業務の両立は個人の努力だけでは困難です。
まずは新人に任せる業務を明確にし、マニュアルや「TWI-JI」を活用して教える時間を短縮することから始めてみましょう。上司に現状を相談して業務量を調整し、チーム全体で新人を育てる体制を整えることも欠かせません。
これらの対策に取り組めば、日々の残業が減り、心に余裕をもって新人とかかわれるでしょう。
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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。
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