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2025/06/17

火事が起きた時の行動|3原則から備えまで解説

西條 徹

西條 徹

もし今、突然火事が起きた時、落ち着いて正しい行動がとれるか不安ではありませんか?

本記事では、火事が起きた時の行動について、基本となる3原則から安全な逃げ方、日ごろからできる備えまでを網羅的に解説します。火事の時にやってはいけないことなど、多くの人が抱く疑問にもQ&A形式でわかりやすくお答えします。

この記事を最後まで読めば、万が一の事態にも冷静に命を守るための知識が身につき、漠然とした不安を具体的な行動という安心感に変えられます。

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火事が起きた時の行動【3原則】

火事が発生した際、被害を最小限に抑えるためには、落ち着いて行動することがとても大切です。その基本となるのが「初期対応の3原則」と呼ばれるものです。

この3つの原則について、それぞれ具体的に解説します。

1.早く知らせる

火事を発見したら、何よりも先に周りの人へ知らせましょう。自分だけで対応しようとすると、通報や初期消火が遅れてしまい、被害が大きくなる恐れがあるからです。

まずは「火事だー!」と大声で叫び、近所の人に危険を伝えましょう。もし声が出せない状況なら、鍋などを硬いもので叩いて大きな音を出すことも有効な手段です。

そして、ためらわずに119番へ通報してください。通報を近くにいる人にお願いするのも良い方法です。

迅速な通報と周囲への周知が、被害を食い止める第一歩になります。

2.早く消火する

火がまだ小さいうちに、可能であれば初期消火を行いましょう。火は時間と共に勢いを増して燃え広がる性質があるため、素早い対応が重要になるからです。

消火器があるなら、安全ピンを抜き、燃えているものの根元を狙って噴射します。もし消火器がなくても、水で濡らしたバスタオルなどを火元にかぶせて空気を遮断する方法もあります。

天ぷら油の火に水をかけると爆発的に燃え広がるため、大変危険です。状況を冷静に判断し、安全を最優先に行動しましょう。

3.早く逃げる

初期消火が難しいと感じたら、迷わず避難する決断が何よりも重要です。火の勢いは一瞬で強くなり、判断の遅れが命取りになる可能性があるからです。

特に、炎が天井に燃え移った時は、火が一気に広がる危険なサインと考えてください。自分の背丈を超える炎が見えたり、天井に火が届いたりしたら、すぐに消火を諦めて逃げる準備を始めましょう。

避難する際は、火や煙の広がりを遅らせるために、部屋の扉を閉めることも有効です。

自分の命を守ることを最優先し、勇気を持ってその場を離れることが、最も正しい行動だと覚えておきましょう。

火事が起きた時に安全に逃げる方法

火事から逃げる際は、ただ急ぐだけでなく、安全を確保するための知識が重要です。煙の危険性や建物の構造を理解し、冷静に行動しなければなりません。

ここからは、安全に逃げる方法について詳しく解説します。

煙を吸わないために姿勢を低く保つ

避難する際に最も重要なのは、煙を吸わないように姿勢を低く保つことです。火災で一番恐ろしいのは炎よりも煙です。有毒なガスが含まれているため、吸い込むと命に関わります。

熱い空気や煙は天井の方へ上がっていく性質があります。そのため、床に近い場所ほど、比較的安全な空気が残っている可能性が高いのです。

移動する際は、水で濡らしたハンカチなどで口と鼻をしっかりと押さえましょう。そして、できるだけ低い姿勢を保ち、床をはうように進むことが重要です。

視界が悪い中での移動方法を知っておく

煙で周囲がほとんど見えない状況では、壁を伝って移動する方法が有効です。煙が充満した室内では、方向感覚を失いやすく、パニックに陥る危険性が高まります。

壁に片手を触れながら進むことで、自分がどこにいるかを見失いにくくなり、出口の方向へ確実に進めるでしょう。

人は強い恐怖を感じると、無意識に来た道を引き返そうとしたり、周りの人と同じ方向へ向かったりする傾向があります。

しかし、それが安全なルートとは限りません。視界が悪い中でも冷静さを保ち、壁を頼りにすれば、安全な避難経路を見つけ出すことができるのです。

建物ごとの避難ルートを理解する

いる建物の種類によって、安全な避難方法は異なります。建物は構造や設備がそれぞれ違うため、火や煙の広がり方を想定した避難ルートを理解しておくことが大切です。

たとえば、自宅が木造住宅で2階から逃げる場合、階段が使えなければシーツなどを結んでロープの代わりにできます。

ビルや商業施設では、下の階からの出火なら階段で地上へ、無理なら屋上へ避難します。地下街であれば、壁に沿って進むと約60mおきに設置されている非常口を見つけやすいでしょう。

普段利用する建物の避難経路を2つ以上確認しておく意識が、パニックを防ぎ、迅速な避難につながります。

一度逃げたら戻らず消防隊に伝える

一度安全な場所へ避難できたら、絶対に建物の中へ戻ってはいけません。火災現場の状況は一瞬で悪化するからです。

たとえ大切なものを取りに戻りたくなっても、あなたの命以上に大切なものはありません。

もし建物の中に家族など逃げ遅れた人がいるとわかっても、決して自分で助けに戻らないでください。その場合は、すぐに消防隊員へ「誰が」「どこに」取り残されている可能性が高いかを具体的に伝えましょう。

正確な情報を伝えることが、救助活動を助け、結果的に大切な人の命を救う最善の方法となるのです。

エレベーターを使わず階段を利用する

火災が発生した際、エレベーターは絶対に使用せず、必ず階段を使って避難しましょう。火災の影響で停電が発生し、エレベーターが途中で停止してしまう危険があるからです。

煙が充満するエレベーター内に閉じ込められれば、命に関わる事態になりかねません。避難の際は、必ず非常階段の位置を確認してください。

ただし、階段へ続く扉を開ける前には注意が必要です。扉の向こう側に火や煙が迫っている可能性もあるため、ドアノブが熱くないか確かめてから開けましょう。

火事が起きた時に備えて

火事が起きた時に備えて

火災はいつ起こるかわかりません。いざという時に慌てず、自分や大切な人の命を守るためには、日ごろからの備えが何よりも重要です。

具体的にどのような備えができるのかを一つずつ確認していきましょう。

火災報知器と消火器を確認する

火災の被害を抑えるためには、火災報知器と消火器の定期的な確認が欠かせません。これらは火事を初期段階で発見し、対応するために不可欠な設備だからです。

住宅用火災警報器は、法律で全ての住まいに設置が義務付けられています。定期的に点検用のボタンを押して、正常に動くか確認しましょう。

消火器は、安全ピンを抜き、ホースを火元に向け、レバーを握るという3つの手順を覚えておくことが大切です。自宅やマンションのどこに置いてあるか、使用期限は切れていないかを確認しておきましょう。

日ごろの点検が、いざという時の安心につながります。

避難経路を複数想定し共有する

万が一の事態に備え、避難するための経路を最低でも2つ想定しておくことが大切です。火災の発生場所によっては、いつも使っている玄関や廊下が煙で使えなくなる可能性があるからです。

普段使っている出口の他に、ベランダや別の窓からの脱出ルートも考えておきましょう。そして、そのルートを全員で共有し、実際に歩いて確認しておくことが望ましいです。

ホテルやデパートなど、普段行かない場所でも、フロアの案内図で非常口の位置を見ておく習慣をつけると安心です。複数の逃げ道を知っているという事実が、パニックを防ぎ、冷静な判断を助けてくれます。

避難行動を定期的にシミュレーションする

本当に火事が起きた時に落ち着いて行動するためには、定期的な避難シミュレーションが欠かせません。知識として知っていることと、パニックの中で実際にできることは違うからです。

繰り返し訓練することで、正しい行動が体に染みつきます。避難訓練には、真剣に参加しましょう。自宅でも「もし台所から出火したら」と想定し、決めておいた避難経路を通って外まで出る練習をしてみるのも有効です。

煙を吸わないための低い姿勢や、ドアの確認といった行動も一緒に試してみましょう。この積み重ねが、いざという時の冷静な判断と行動につながるのです。

出火しやすい場所や行動を見直す

火災を未然に防ぐためには、出火の原因となりやすい場所や行動を日ごろから見直すことが重要です。火事の多くは、普段の生活の中にある「少しの油断」から発生するためです。

火災原因の上位には、ガスコンロ、たばこ、電気機器が挙げられます。たとえば、コンロの近くに燃えやすい物を置かない、使っていない電化製品のプラグは抜く、コンセント周りのほこりを定期的に掃除するといった行動が有効です。

寝る前や外出する際は、暖房器具の電源を消す習慣をつけましょう。こうした日々の小さな心がけと点検を習慣にすることが、火災のリスクを根本から減らす最も確実な方法です。

高齢者・子どもの支援体制を考えておく

避難する際に、手助けが必要な高齢者や小さい子どもがいる場合は、支援体制を事前に決めておくことが重要です。

いざという時、誰がどのように助けるか決まっていないと、貴重な避難時間を失ってしまうからです。

助けが必要な人を誰がサポートするのか、みんなで確認し合うことが大切です。普段からのこうした会話と準備が、万が一の時に全員の命を守ることにつながります。

よくある質問(Q&A)

火事が起きた時の行動について、正しい知識を持つことは、パニックにならず、適切な行動をとるために非常に重要です。

ここでは、火災に関してよく寄せられる質問とその答えを、Q&A形式でわかりやすく解説します。

火事になったら布団をかぶせたらいい?

炎がごく小さい初期の段階であれば、濡らした布団などをかぶせる方法は有効です。火は燃え続けるために酸素を必要とするため、布団で覆って酸素の供給を断つことで消火できるからです。

ただし、この方法が使えるのは炎が大きくない場合に限られます。もし炎が自分の目線よりも高くなっていたら、消火を諦めてすぐに逃げてください。

布団をかぶせる方法は万能ではなく、あくまで初期消火の一つの手段として冷静に判断することが大切です。

火に水をかけてはいけない理由は?

全ての火災に水が有効なわけではなく、種類によっては水をかけることで状況が悪化します。

その代表例が、天ぷら油の火災です。ここに水をかけると、水蒸気爆発を起こして燃え盛る油が周囲に飛び散り、被害が拡大します。

電気製品が火元の場合も、水をかけると感電の危険があるため大変危険です。まずブレーカーを落とし、コンセントを抜くことが先決となります。

火災の種類を冷静に見極め、水が使えない場合には消火器を使うなど、適切な対処法を選択することが大切です。

まとめ

本記事では、火災発生時の基本となる3原則から、安全な避難方法、そして日ごろの備えまでを解説しました。最も重要なのは、正しい知識を元に冷静に判断し、自分の命を最優先に行動することです。

今日から対策を実践すれば、万が一の時にも慌てず、自分と大切な人を守れるという安心感につながります。

まずは第一歩として、自宅の消火器の場所と使用期限を確認し、玄関以外の避難経路を話し合うことから始めてみてください。その行動が、命を守る最も確実な備えとなるでしょう。

参考:政府広報オンライン『住宅火災からいのちを守る10のポイント。「逃げ遅れ」を防ぐために。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。