
介護施設は、生活援助や身体介護などの基本的な介護が受けられる施設です。しかし、施設で生活するにはどれくらいの費用が必要なのだろうと、費用面が心配な方もいるでしょう。
この記事では、介護施設に入居する際にかかる費用の内訳や、補助金の種類について詳しく解説します。
この記事を読むことで、介護施設に入居していても利用できる補助金制度がわかり、費用面の不安を軽減できるでしょう。
介護施設に入居する際にかかる費用
介護施設に入居すると、居住費だけでなくさまざまな諸費用が発生します。
ここでは、施設に入居した際にかかる費用の内訳について解説します。
居住費
居住費とは、賃貸でいう家賃にあたる部分です。介護保険施設の場合は、月々の居住費が一律で決められていますが、個室やユニット型など入居する居室のタイプによって費用が変動する場合があります。
また、介護保険は入居者の収入により自己負担額が定められているため、想定を超えるような大きな出費になることはなく、民間施設よりも安い傾向にあります。
一方、民間施設はそれぞれの施設ごとに費用を定めているため、個室の広さや施設のサービス内容などによって月々の費用が変わってくるでしょう。
食費
介護保険施設の場合、1日3食分の食費が含まれているため、昼だけ欠食した場合でも3食分の食費の請求となります。しかし、入院やその他の事情で一定期間食事をストップすることはでき、その期間は食費の請求はありません。
民間施設の場合、1食分の食費が決められていたり1日分を定額制で設定していたりと、施設ごとに料金設定が異なります。また、食事に力を入れている施設は、食費の負担額が大きくなる場合もあるでしょう。しかし、欠食をした場合は介護保険施設とは違い、欠食分の料金は請求されないことがほとんどです。
管理費
管理費は、主に施設の共有部分の維持費やレクリエーション代として請求される費用です。有料老人ホームなどの民間施設で徴収されることがあり、運営費として徴収される場合もあります。
日常生活費
日常生活費は、個人で使用する日用品や嗜好品の購入にかかる費用です。介護保険施設では、オムツ代のみ介護給付に含まれるため、自己負担はありません。しかし、民間施設ではオムツ代も自己負担となります。
医療費
ほとんどの施設は医師が常駐していないため、入居者の健康管理は協力医療機関の嘱託医が担当します。
嘱託医の診察により、詳しい検査が必要な場合や専門医を受診する場合もあり、その医療費や治療代、薬代、入院費などは自己負担となります。
施設介護サービス費(介護保険適用)
介護保険が適用される施設介護サービス費は、施設内で受ける基本的な介護サービスに対して請求される費用です。
具体的には、掃除や洗濯などの生活援助と、食事介助や入浴介助、排泄介助などの身体介護が対象です。
これらは介護保険が適用され、所得に応じて1割〜3割の自己負担となります。
施設介護サービス費(介護保険対象外のサービス)
買い物代行や娯楽目的などの外出介助、金銭管理、理美容代などは、介護保険対象外のサービスです。そのため、介護保険は適用されず全額自己負担となります。
サービス加算
サービス加算とは、人員配置や医療体制、設備等が法令で定められている基準を満たしている場合に、施設介護サービス費にプラスして請求される費用です。
法令で定められたさまざまな加算がありますが、施設によって取得している加算の内容が異なるため、施設ごとに金額が変わってきます。
上乗せ介護費
上乗せ介護費は、有料老人ホームや介護型ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅などでより手厚い介護を行っている場合に請求できる費用です。
職員の配置基準は、入居者3人に対して1人の介護士または看護師を配置することと介護保険法により定められています。その配置基準を上回る人員配置を行っている場合、上乗せ介護費の請求ができます。
介護施設で利用できる補助金は?
介護施設に入居すると、居住費の他に医療費や介護サービス費などのさまざまな費用がかかります。しかし、補助金を利用すれば、入居にかかる費用を軽減できる可能性があるでしょう。
ここでは、介護施設で利用できる補助金制度について、詳しく解説します。
高額介護サービス費制度
高額介護サービス費は、1カ月間で介護サービス費として支払った自己負担額が限度額を超えた場合に、超えた分の金額が払い戻される制度です。
同一世帯に介護サービスを利用している人が複数人いる場合、合算して請求できます。
参考:厚生労働省『令和3年度8月分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます』
高額療養費制度
高額療養費制度は、1カ月間に支払った医療費の自己負担額が限度額を超えた場合に、超えた分の金額が払い戻しされる制度です。
あらかじめ1ヶ月の医療費の自己負担額が上限を上回るとわかっている場合は、限度額適用認定証の申請をすることで、窓口でも自己負担額を軽減できるでしょう。
参考:厚生労働省『高額療養費制度の見直しについて(概要)』
高額介護合算療養費制度
高額介護合算療養費とは、同一世帯の1年間の医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、上限額を超えた分の金額が払い戻しされる制度です。上限額は、年齢と年収により設定されています。
高額介護サービス費制度と高額療養費制度を利用しても負担額が大きい場合に、さらなる費用負担の軽減が期待できるでしょう。
参考:厚生労働省『高額介護合算療養費制度』
介護保険負担限度額認定制度
介護保険負担限度額認定制度は、介護保険施設に入居した際にかかる住居費と食費を軽減できる制度です。
一般的に、介護保険施設における住居費と食費は全額自己負担ですが、要件を満たしている方には介護保険負担限度額認定証が発行され、負担額を減らせます。
参考:厚生労働省『介護保険施設において負担限度額が変わります』
社会福祉法人等利用者負担軽減制度
社会福祉法人が運営する施設に入居した場合に、負担額を軽減する制度です。この制度は、低所得者を対象としており、負担額を軽減することで介護サービスの利用を促進する目的で実施されています。
介護サービスにかかる利用者負担額と、居住費や食費にかかる負担額を軽減できます。
参考:厚生労働省『社会福祉法人等による利用者負担軽減制度について』
介護保険施設での医療費控除
介護保険施設では、日常生活費と特別なサービス費を除く月額利用料を医療費として申請できます。
介護老人保健施設と介護療養型医療施設、介護医療院は月額利用料の全額、特別養護老人ホームは月額利用料の2分の1の申告が可能です。
参考:国税庁『医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価』
在宅で親の介護をしている場合に受け取れる補助金
施設に入所せずに、在宅で要介護者の介護を行っているご家族の方もいるでしょう。
ここでは、在宅介護を行っている場合に受け取れる補助金について解説します。
介護休業給付
介護休業給付は、雇用保険の被保険者が家族を介護するために介護休暇を取得した場合、一定の要件を満たすことで介護休業給付金の支給を受けることができます。
介護者には「支給額=休業開始時賃金日数×支給日数×67 %」の金額が支給され、対象家族1人につき通算93日まで介護休業給付の受給が可能です。この日数は3回まで分割できます。
参考:厚生労働省『介護給付金の内容及び支給申請手続について』
家族介護慰労金
家族介護慰労金は、在宅で要介護4〜5の方を介護する家族が、要件を満たした場合に年額10万円が支給されます。
制度を利用するには、被介護者が過去1年間に介護保険サービス事業者を利用していないことや、被介護者と介護者が住民税非課税世帯であることなどの条件が挙げられます。
居宅介護住宅改修費
居宅介護住宅改修費は、住宅内の住宅改修への支援を、介護保険によって受けられるサービスです。住宅の玄関、廊下、浴室、トイレなどに手すりをつけたり、段差をなくしたりする住宅改修が対象となります。
ただし、新築工事の場合は対象外なので、注意が必要です。
参考:公益財団法人長寿科学振興財団『居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは』
まとめ
今回は、介護施設で利用できる補助金について解説しました。
介護施設に入居すると、住居費や食費、医療費や介護サービス費など、さまざまな費用がかかります。
それらの費用に対して支給されるのが補助金ですが、ただ単に入居にかかる費用を軽減するのではなく、介護をする中で必要となる費用の負担軽減を目的としています。
補助金を上手に利用し経済的な負担を軽減することで、入所後も安心した生活を送れるでしょう。
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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。