
介護事業を運営するにあたり、重度訪問介護と居宅介護の違いを明確に理解していますか?同じように見えても、サービス内容、対象者、そしてサービス単価に大きな違いがあります。この違いを知ることは、質の高いサービスを提供し、適切な事業運営を行う上で欠かせません。
本記事では、重度訪問介護と居宅介護の具体的なサービス内容から、必要な資格、そして2時間ルールに至るまで、詳細にわたって解説します。
これを読めば、重度訪問介護と居宅介護の違いが明確になり、介護事業を運営するうえでの重要な知見を得ることができるでしょう。
重度訪問介護と居宅介護の違いとは?
重度訪問介護と居宅介護は、高齢者や障がい者の日常生活を支える重要なサービスですが、提供される支援の内容や対象者、費用の負担に違いがあります。ここでは、それぞれを解説します。
サービス内容の違い
重度訪問介護は、居宅介護と比べて支援時間が長く、支援内容が広範で、より重度の障がいを持つ人を対象としたサービスです。
このサービスは、日常生活のさまざまな場面で総合的かつ断続的な支援を提供することに特化しており、重度の障がいを持つ人々が必要とする広範な介護ニーズに応えるものです。また、重度訪問介護は、食事や排せつの身体介護、家事援助、コミュニケーション支援、外出時の介護など、日常生活に生じるさまざまな介護に対応します。
一方、居宅介護は、入浴や排泄などの身体介護、掃除や洗濯といった家事援助、病院への通院介助など、事前に決められた範囲の支援を提供するサービスです。
このサービスの特徴は、利用者の日常生活で必要とされる基本的な介護と支援に焦点を当てている点にあります。計画に基づき、具体的な支援内容が事前に定められており、それによって介護サービスが提供されます。
対象者の違い
居宅介護は障がいの軽い方向け、重度訪問介護はより重度の障がいを持つ方向けの支援サービスであり、受けられる支援の内容と対象者に違いがあります。
居宅介護と重度訪問介護の主な違いは、提供されるサービスの対象となる障がいの程度にあります。居宅介護は障がい支援区分1以上の方が対象で、基本的な身体介護や家事援助、特定の条件下での通院介助などが提供されます。
これに対して、重度訪問介護は障がい支援区分4以上で、かつ複数の身体機能に障がいがある方を対象としており、より広範な支援が必要な方に向けたサービスです。
また、障がいの軽い方が居宅介護を、重度の障がいを持つ方が重度訪問介護を受ける傾向にあるものの、重度の障がいを持つ方が居宅介護を受けることも可能です。
参考:厚生労働省『障害福祉サービスについて』
サービス単価の違い
重度訪問介護サービスの単価は、居宅介護と比べて低く設定されています。この単価の違いには二つの主な理由があります。
まず、重度訪問介護は長時間にわたるサービス提供を前提としているため、そのサービスの単価は長時間利用を見越して設定されています。さらに、このサービスは公費によって支えられており、その点も低価格設定の要因となっています。
次に、重度訪問介護では身体介護、家事援助、見守り支援などのサービス内容による単価の区分がないため、これらすべてのサービスが一律の単価で提供されます。
例えば、ある重度訪問介護サービスの利用者が1日に数時間の家事援助と身体介護を受ける場合、これらのサービスは同じ単価で計算されます。身体介護の提供に比べて家事援助が少し高価に感じられるかもしれませんが、サービス全体としての長時間提供を考慮すると、全体の単価は低く設定されています。
このように、サービスの長時間提供が前提となっていること、そしてサービス内容による単価区分がないことが、重度訪問介護サービスの単価を居宅介護と比較して低くする主な理由です。
重度訪問介護の具体的な内容

重度訪問介護は高度な支援が必要な利用者を対象に、身の回りの援助から外出時の移動の介護まで幅広いサービスを提供します。ここでは、その具体的なサービス内容や必要な資格、特別な適用ルールについて解説します。
重度訪問介護のサービス内容
重度訪問介護は、身体介護、家事援助、移動介護、そして生活に関する相談や見守りを含む、包括的な支援を提供します。
重度訪問介護の目的は、重度の障害を持つ人々が自宅で安心して生活できるように、日常生活のあらゆる面で必要とされるサポートを網羅的に提供することにあります。
- 身体介護:例えば、重度の身体障害を持つ利用者が入浴や食事、着替えなどの日常的な活動で困難を抱えている場合、重度訪問介護サービスによってこれらの活動の介助が提供されます
- 家事援助:利用者が自力で調理や洗濯、掃除を行うことが難しい場合には、これらの家事活動の支援が行われ、利用者の日常生活を支えます
- 移動介護:外出が必要な場合には、移動介護が提供され、医療機関への通院や買い物などの外出時における移動支援や介護を行います
- その他の支援:さらに、生活に関する相談や助言、日常生活の安全を守るための見守りなど、利用者が安心して生活できるような支援も提供されます
重度訪問介護は、利用者一人ひとりのニーズに合わせた多様な支援を通じて、重度の障害を持つ人々の自立と生活の質の向上を目指すものです。
参考:WAM NET『重度訪問介護』
重度訪問介護に必要な資格
重度訪問介護で働くためには、以下のいずれかの資格が必要です。
- 介護職員初任者研修修了者
- 介護福祉士実務者研修修了者
- 介護福祉士
- 重度訪問介護従業者研修修了者
重度訪問介護従業者研修修了者は、各都道府県知事が指定する研修機関で受講し、基礎課程と追加課程(または統合課程)を修了することで資格を取得します。
重度訪問介護で働くためには、上記のいずれかの資格を取得することが必要であり、これによって高いレベルの介護サービスが提供できます。
重度訪問介護には2時間ルールが適用されない
重度訪問介護サービスでは、2時間ルールが適用されず、より柔軟かつ長時間のサポートを提供できます。
2時間ルールは、居宅介護サービスにおいて、2時間以上の間隔を空けずに行われた複数のサービスを1回とみなすルールです。これは、居宅介護サービスが事前に作成された介護計画に基づいて提供されることに由来し、サービス提供の範囲や回数に一定の制約を設ける目的があります。
しかし、重度訪問介護サービスは、より重度の障害を持つ人々の日常生活全般にわたるサポートを目的としているため、このような制約を設けずに、より長時間かつ連続的なサポートを提供できます。これにより、利用者のニーズに応じた柔軟な介護サービスが実現されます。
居宅介護の具体的な内容
居宅介護では、日常生活を自宅で過ごす高齢者や障がい者に対して、身体介護や生活支援など多岐にわたる支援を提供します。ここでは、サービス内容や必要な資格、利用者負担について解説します。
居宅介護のサービス内容
居宅介護は、身体介護、家事援助、生活に関する相談や助言など、利用者の日常生活を支援するための基本的なサービスを提供します。
サービスの内容は、利用者一人ひとりのニーズに応じて介護計画に基づいて提供され、それにより生活の質の向上を目指します。
- 身体介護:利用者が身体的な障害により、入浴、排せつ、食事の介助など日常生活の基本動作に支援が必要な場合、これらの活動をサポートします
- 家事援助:自力での調理や洗濯、掃除が難しい場合に、これらの家事活動を代わりに行い、利用者の自宅での生活を楽にします。また、買い物支援により、利用者の生活必需品の確保を助けます
- その他の支援:日常生活において直面するさまざまな問題について相談や助言を提供し、生活全般にわたる援助を行います。これには、精神的なサポートや社会的な交流の促進も含まれることがあります
居宅介護は、利用者が自宅でより良い生活を送るために必要な支援を多角的に提供することにより、その人らしい生活を支える役割を果たします。
参考:WAM NET『居宅介護』
居宅介護に必要な資格
居宅介護事業所で働くためには、厚生労働大臣が定める介護関連の資格を取得するか、特定の研修を修了する必要があります。これには以下の資格が含まれます。
- 介護職員初任者研修修了者
- 介護福祉士実務者研修修了者
- 介護福祉士
- 居宅介護職員初任者研修
- ガイドヘルパー養成研修修了者
居宅介護事業所で働くには、これらの資格や研修を通じて、介護職として必要な知識と技術を習得し、利用者に適切なサポートを提供できる能力を持っていることが必須です。
まとめ
重度訪問介護と居宅介護は、障害や高齢による日常生活の支援を提供する重要なサービスです。両者の主な違いは、対象となる障害の程度、提供される支援の範囲と内容、そしてサービス単価にあります。
重度訪問介護は、より重度の障害を持つ人を対象に、総合的かつ広範な支援を長時間提供します。これに対し、居宅介護は比較的軽度の障害を持つ人向けに、基本的な日常生活の支援を計画に基づいて提供するものです。
それぞれのサービス内容の違いを適切に理解し、利用者の状況やニーズに合わせた適切な介護を提供していきましょう。
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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。