
「職員の離職が続いて人手不足が解消されず、現場の雰囲気が悪くなっている…」と、お悩みではないですか?
本記事では、多くの介護施設で実際に成功した業務改善の事例を紹介します。さらに、すぐに始められる改善の6つのステップや、導入に関するよくある質問にもわかりやすくお答えします。
この記事を読むことで、あなたの施設で取り組むべき改善のヒントが見つかり、働きやすい職場づくりへの糸口が見つかるでしょう。
介護施設の業務改善事例
職場環境の見直しやICTの導入など、明日から参考にできる事例が数多くあります。それらの事例を4つの視点から紹介します。
職場環境の整備と業務の役割分担
職場環境を整えて役割分担を見直すことは、業務のムダをなくす第一歩です。職員全員が同じルールで動けば、作業効率が上がり、特定の人に仕事が集中するのを防げるでしょう。
たとえば、備品の置き場所を決める5S活動で、物を探す時間を減らし、事故防止につなげた事例があります。また、元気な高齢者に介護のお手伝いをお願いし、職員の負担を軽くして離職率の低下に成功した事例もあります。
現場の職員が「時間のムダ」と感じている作業を洗い出し、不要な業務を思い切ってやめる判断も必要です。こうした地道な改善が、職員の働きやすさに直接つながります。
記録様式の見直しと情報共有の効率化
記録や情報共有の方法を見直すと、職員の事務的な負担を大きく減らせます。介護の現場では、書類作成や職員間の連絡に多くの時間が使われているからです。
たとえば、手書きだった記録を選択式に変えるだけでも、記入時間が大幅に短縮された事例があります。
また、インカム(無線機)を導入した施設では、ケアをしながらでも全職員へ一斉に連絡できるようになりました。これにより、迅速な対応が実現し業務全体の効率が上がっています。
介護記録ソフトや見守りセンサーの導入
介護記録ソフトや見守りセンサーなどの技術導入は、業務効率やケアの質の向上に有効です。これらのツールは、時間のかかる作業を自動化し、職員の負担を軽減してくれます。
たとえば、介護記録ソフトを使えば、スマホやタブレットで入力が完了し、面倒な転記作業がなくなります。利用者の情報もリアルタイムで共有できるため、申し送りの時間も短縮可能です。
見守りセンサーは、夜間の巡回を減らしながらも利用者の安全を確保します。テクノロジーの活用は、職員が心にゆとりを持ってケアに集中できる環境づくりに役立ちます。
シフト作成や勤怠管理システムの活用
シフト作成や勤怠管理にシステムを導入することで、管理者の大きな負担を軽減できます。これらの業務は手作業が当たり前でしたが、非常に時間がかかり、担当者の悩みの種でした。
勤務シフトの自動作成システムの導入により、作業時間を大幅に削減した事例があります。こうして生まれた時間の余裕を使って、現場のサポートや職員の相談にも対応できるようになりました。
さらに、請求書作成などの定型事務もRPA(業務自動化技術)で効率化できます。このようなシステムの活用が、職員の本来業務であるケアに集中できる環境づくりに役立ちます。
関連記事:シフト作成で平等性を確保する秘訣とは?課題の解決方法まで解説
介護施設の業務改善【6つのステップ】

業務改善を成功させるには、手順を踏んで進めることが大切です。課題の発見から計画、実行、改善というサイクルを継続する仕組みを作ることが重要になります。
ここでは、そのための具体的な手順を6つのステップにわけて見ていきましょう。
ステップ1:改善のためのチームを作る
まずは業務改善を進めるためのチームを作りましょう。施設全体で取り組むための大切な土台となります。
メンバーは、特定の役職だけでなく、さまざまな部署や年齢層からバランス良く選ぶのがおすすめです。そうすることで、さまざまな視点から課題を発見できます。
また、話し合いを円滑に進める「支援・促し役」を決めると、誰もが意見を出しやすい雰囲気になります。チーム作りが、改善活動を成功させるための最初の鍵です。
ステップ2:業務を棚卸し課題を洗い出す
チームができたら、次に現場の課題を正確に把握します。いきなり改善策を考えるのではなく、まずは職員が何に困っているのかを知ることが重要です。
ミーティングで意見を募るのも良いですが、本音が出やすい匿名のアンケートも効果的です。たとえば「記録に時間がかかる」のような、具体的な声を集めることで、取り組むべき問題が見えてきます。
現場が抱える本当の課題を、チーム全員で共有することから始めましょう。
ステップ3:課題の優先順位を決める
課題が複数見つかった場合は、どれから着手するか優先順位を決めることが大切です。一度にすべてを解決するのは難しいため、現場の職員も参加してアイデアを出し合い、最も影響の大きい課題や、早く対応できる課題から始めましょう。
取り組むべき課題を一つに絞ることで、改善に向けた方向性がより明確になります。
ステップ4:具体的な改善計画を立てる
取り組むべき課題を決めたら、具体的な実行計画を立てましょう。計画があいまいだと、誰が何をするのかわからなくなり、実行できない原因になります。
「いつまでに、誰が、何を、どのように行うか」をはっきりと決めることが大切です。たとえば、新しいツールを導入するなら、担当者や導入時期、使い方を教える研修の日程まで具体的に決めます。
事前に起こりうる問題も予測しておけば、いざというときに慌てず対応できるでしょう。
ステップ5:計画を実行し効果を測定する
計画ができたら、いよいよ実行に移し、効果を確かめます。このとき、一度に多くのことを始めないのが成功のコツです。
影響の少ない範囲で試す「スモールスタート」を心がけましょう。一つの改善策を実行した後には、必ず「課題は解決したか」「悪影響は出ていないか」などを職員に確認し、効果を測定します。
小さな成功を積み重ねれば、職員の協力も得やすくなり、次の改善への自信にもつながります。
ステップ6:新たな課題を見つけ改善を続ける
一度の改善で満足せず、継続して活動することが何よりも大切です。業務改善は一度きりの取り組みではなく、繰り返し行うことで本当の成果が生まれます。
改善の結果を見て、新たな課題を見つけ、次の計画へと進むサイクルを回していきましょう。こうした「PDCAサイクル」を続けることで、施設の業務は少しずつ、着実に良い方向へ進みます。
改善を意識する文化を育てることが、職員の働きやすい職場づくりにつながります。
介護施設の業務改善でよくある質問
業務改善を進めるときは、費用や職員への影響など、さまざまな不安が生じるものです。ここでは、多くの施設に共通する3つの質問にわかりやすくお答えします。
システム導入にかかる費用を抑える方法は?
システム導入の費用を抑える方法はあります。高価なシステムをいきなり導入する必要はありません。
まずは無料で使えるアプリなどを試してみて、自分の施設に合うかを確認するのがおすすめです。また、施設の規模や目的にあわせた料金プランを選ぶことで、無駄な出費をなくせます。
国や自治体には、ICT導入を支援する補助金制度もあります。こうした公的な支援を上手に活用すれば、費用負担を大きく減らすことが可能です。
パソコンが苦手な職員が多くても大丈夫?
パソコンが苦手な職員が多くても心配いりません。最近の介護向けツールは、誰でも直感的に操作できるように工夫されています。
導入前に、研修計画をしっかり立てることも重要です。また、システムを提供する会社のサポートや、専門家からの支援を利用するのも有効です。
使いやすいツールと丁寧なサポート体制があれば、職員全員が安心して新しいシステムを使えるようになります。
小規模な施設でも取り組める?
施設の規模に関わらず、業務改善には取り組めます。小規模な施設であれば、専門のチームを作らず、職員全員でアイデアを出し合いながら進めるのも良い方法です。
大切なのは、大きなことからではなく、できることから一つずつ始めることです。たとえば「備品の置き場所をわかりやすくする」といった小さな改善でも、職員の負担は確実に軽くなります。
小さな成功体験を積み重ねることが、改善活動を施設全体に定着させる最も効果的な方法です。
まとめ
日々の業務が忙しい中で改善活動を始めるのは大変に感じるかもしれません。しかし、最初から大きな改革を目指す必要はありません。
紹介した成功事例のように「できることから始める」ことが大切です。介護施設の業務改善は、職員一人ひとりの負担を減らし、働きがいのある職場づくりにつながります。
その結果、職員の笑顔が増え、利用者へのケアもより丁寧になるでしょう。まずは第一歩として、信頼できる職員に「今、何が一番大変?」と声をかけてみてはいかがでしょうか。
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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。