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2024/10/16

地震避難訓練で大事なこと|訓練の効果を高めるポイントも解説

西條 徹

西條 徹

地震はいつ起こるか分かりません。だからこそ、日ごろからの備えと避難訓練が重要です。特に、高齢者や障がい者など、一人での避難が難しい方が利用する介護事業所では、迅速かつ的確な避難誘導が求められます。利用者の安全を守るため、地震避難訓練で大事なことを理解しておきましょう。

この記事では、地震避難訓練の大事なポイントを解説し、効果的な訓練にするための準備方法を紹介します。リアルなシナリオ作成や目的の明確化、フィードバックの重要性についても触れます。

この記事を読めば、介護事業所における地震避難訓練の重要性を改めて認識し、より実践的な訓練を計画・実施できるようになるでしょう。利用者の安心・安全を守るため、ぜひこの記事を参考にしてください。

地震避難訓練で大事なこと

介護施設における地震避難訓練は、利用者の命を守るための重要な取り組みです。以下のポイントを中心に、効果的な避難訓練の実施方法を解説します。

  • 事前学習による意識付け
  • 身の安全確保の基本動作
  • 迅速な安否確認と点呼

それぞれの要素について詳しく見ていきます。

事前学習

地震避難訓練の効果を高めるためには、事前の学習が欠かせません。災害時に何が起きるのか、どのような行動をとる必要があるのか、なぜその行動が必要なのかを学ぶことで、訓練への意識を高め実践的な学びにつなげられます。

例えば、地震のメカニズムや建物の倒壊リスク、避難経路の確認などを学ぶことで、訓練中に適切な行動をとれるようになります。また、事前の学習によって、訓練を単なるイベントとしてではなく、命を守るための重要な機会として捉えられるようになるでしょう。

日ごろから防災意識を高め、いざという時に適切な行動がとれるよう、事前学習を行いましょう。

身の安全を確保

地震発生時、まず優先すべきは利用者と職員の安全確保です。施設内の場所によって、適切な避難行動は異なります。

食堂やリビングでは、テーブルの下に身を隠すよう誘導し、落下物から身を守ります。廊下では、壁際に身を寄せ、頭部を保護します。夜間帯は特に慎重な対応が求められるため、就寝中の利用者をベッドから落下させないよう、サイドレールの確認も欠かせません。

各場所での具体的な安全確保の方法を、職員全員で確認しましょう。

安否確認と点呼

安全な場所に避難したら、速やかに安否確認と点呼を行いましょう。利用者全員の安全を確認し、迅速な対応につなげることが重要です。

例えば、名簿に基づいて点呼を行い、所在不明者が出た場合は速やかに捜索を開始しましょう。また、負傷者がいる場合は、適切な応急処置を施し、必要に応じて救急車を要請しましょう。

安否確認と点呼は、二次災害を防ぎ、人命救助の初動をスムーズに行うために不可欠です。訓練を通して、迅速かつ正確な安否確認と点呼の手順を確立しましょう。

効果的な避難訓練にするための準備

地震発生時の避難訓練は、利用者の安全を守る上で非常に重要です。そのためには、訓練の効果を高めるための入念な準備が欠かせません。ここでは、準備のポイントを3つの項目に分けて解説します。

  • リアルなシナリオを作成する
  • 訓練の目的を明確にする
  • フィードバックと振り返り

それぞれ解説します。

リアルなシナリオを作成する

リアルなシナリオは、避難訓練の効果を最大限に引き出すために不可欠です。地震発生時の初動対応から避難経路の確認、さらには火災発生や負傷者対応といった、複合的な災害状況を想定することで、より実践的な訓練が可能になります。

例えば、「夜間の大地震により建物が一部損壊し、火災が発生」といった具体的な状況を想定します。初動対応では、机の下への避難行動から始まり、避難誘導者による的確な指示出し、エレベーター停止時の階段使用まで組み込みます。さらに、消火器の使用手順や担当者の明確化も重要な要素です。

東京消防庁の防火防災訓練ポータルサイトなども参考に、自施設の状況に合わせた具体的なシナリオを作成しましょう。

参考:東京消防庁『防火防災訓練ポータルサイト

訓練の目的を明確にする

訓練の目的を明確にすることは、参加者の意識を高めるために重要です。何を学び、どのような状況で役立つかを明確にします。

例えば、地震時の安全確保や火災時の避難経路の確認など、具体的な目標を設定します。参加者が「わがこと意識」を持って取り組めるように工夫しましょう。具体的な災害状況を設定し、事前に日時や場所を告知することで、参加者の意識を高めることができます。

また、訓練前に身構えないよう、抜き打ち訓練も効果的です。目的を明確にし、訓練の効果を最大限に引き出しましょう。

フィードバックと振り返り

避難訓練の質を高めるには、継続的な実施と改善が欠かせません。定期的な訓練を通じて、職員全体の防災意識と対応力を向上させます。

訓練後は必ず全参加者から意見を募ります。良かった点や課題点を具体的に挙げ、次回の訓練計画に反映させます。特に、利用者の安全確保や避難誘導の方法について、実践的な視点での検証が重要です。

新入職員への技術継承も計画的に進めます。年間スケジュールを作成し、全職員が最低でも年2回は訓練に参加できる機会を設定します。

振り返りの結果をもとに、マニュアルの更新と防災体制の強化を図りましょう。

訓練の効果を高めるポイント

訓練の効果を高めるポイント

避難訓練は形だけのものになりがちです。しかし、実際の地震発生時に冷静な対応ができるよう、実践的な内容に磨き上げる必要があります。以下のポイントを意識して、より効果的な訓練を目指しましょう。

  • シナリオを定期的に見直す
  • 防災関連の施設を活用する
  • 外部の専門家の意見を取り入れる

それぞれの取り組み方を詳しく解説します。

シナリオを定期的に見直す

避難訓練のシナリオは、定期的な見直しが必要です。なぜなら、同じシナリオを繰り返し使うだけでは、想定外の事態が発生した際に対応できない可能性があるからです。

また、施設のレイアウト変更や設備の更新、人員の入れ替わりなど、施設を取り巻く環境は常に変化しています。これらの変化に対応するためにも、シナリオは定期的に見直す必要があります。

例えば、地震だけでなく、台風や火災、近隣での事故といった様々な災害を想定したシナリオを用意し、状況に応じて使い分けることが重要です。さらに、訓練のたびに異なるシナリオを用いることで、参加者の緊張感を維持し、より実践的な訓練効果が期待できます。

定期的な見直しと多様なシナリオ作成で、いかなる事態にも対応できる力を養いましょう。

防災関連の施設を活用する

防災関連施設の活用は、避難訓練をより効果的なものにする上で、ぜひ検討したい取り組みです。地域にある防災体験学習施設などを利用することで、地震の揺れや煙の充満といった災害発生時の状況をリアルに体験できます。こうした体験を通して、参加者は災害発生時の状況をより具体的にイメージできるようになり、防災意識の向上に繋がります。

例えば、東京都江東区の「そなエリア東京」では、首都直下型地震を想定した体験学習ツアーが実施されています。また、全国各地にある防災関連施設では、地震体験や消火体験、煙体験など、さまざまなプログラムが用意されています。

これらの施設を活用することで、より実践的な訓練を行い、参加者の防災意識を高めましょう。

参考:東京臨海広域防災公園管理センター『防災体験学習(そなエリア東京)

外部の専門家の意見を取り入れる

外部の専門家、特に消防署の職員などの意見を取り入れることは、避難訓練の質を向上させる上で非常に有効です。消防署員は、火災発生時の避難誘導や消火活動のプロフェッショナルです。彼らから専門的な知識やノウハウを学ぶことで、より実践的な訓練内容を構築できます。

例えば、消防署員に訓練を視察してもらい、避難経路の設定や誘導方法、消火器の使い方などについてアドバイスを受けることが考えられます。また、地域によっては、消防署が資機材の貸し出しや職員の派遣、講習会の実施に応じてくれる場合もあります。

積極的に外部の専門家の意見を取り入れることで、より安全で効果的な避難訓練を実施しましょう。

まとめ

地震の発生は予測できないため、日ごろからの備えと避難訓練が重要です。特に、高齢者や障がい者など、一人での避難が難しい方が利用する介護事業所では、迅速かつ的確な避難誘導が求められます。利用者の安全を守るため、地震避難訓練で大事なことを理解しておきましょう。

地震避難訓練は、単なるイベントではなく、利用者の命を守るための重要な取り組みです。日ごろからの防災意識の向上、適切な行動の習得、そして迅速な対応こそが、地震災害から利用者を守るために重要なポイントです。

そのためにも、リアルなシナリオに基づいた訓練を定期的に実施し、職員の防災意識と対応力を高めましょう。また、外部専門家の意見を取り入れるなど、継続的な改善を心掛け、より効果的な訓練を目指しましょう。

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証券会社勤務後、広告代理店兼防災用品メーカー勤務。経営管理部を立ち上げ、リスクマネジメント部を新たに新設し、社内BCP作成に従事。個人情報保護、広報(メディア対応)、情報システムのマネジメント担当。NPO事業継続推進機構関西支部(事業継続管理者)。レジリエンス認証の取得、更新を経験。レジリエンス認証「社会貢献」の取得まで行う。レジリエンスアワードとBCAOアワードの表彰を受ける。現在では、中小企業向けBCP策定コンサルティング事業部を立ち上げ、コーディネーターとして参画。