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BCPを策定するにあたり、具体的に実施することについて

阪上 聡

阪上 聡

BCPを策定するにあたり、今回は具体的に「何をどんな順序で考えていけばいいのか」についてお話ししていこうと思います。

まず取り組んでいただきたいことが、2つ。
1つは、皆様のお仕事の中身を振り返っていただいて、重要な業務や急いでしなければならない業務など、優先順位と重要度の高い業務を洗い出していきます。例えば、売り上げが最もある事業、納期などの遅延が及ぼす損害が大きい事業、市場の評価や企業・団体への信頼を維持するために重要な事業など。BCP発動時は、人手や情報、物資などのリソースが平常時より極めて少ない状況が考えられるので、その中でも優先して継続すべき事業は何かという視点でも洗い直します。いわゆる、業務分析といったところでしょうか。

もうひとつが、立地条件ですね。川の近くに建物があるとか、海辺で津波が来る可能性がある場所だとか。自治体の資料を集めればある程度のことは分かるので、調べてもらいます。
建物の設計も、頭に入れておく必要があります。同じ住所でも平屋建ての建物と、5階建ての頑丈なビルとでは、リスクの内容は大きく違ってきますから。
会社や業種業界はもちろん、立地条件によってもリスクは変動します。もちろん、同じ会社内でもオフィスや施設ごとにも変わりますので、それぞれに起こりうる脅威のリスクを明らかにしていく作業です。リスクが明確でないと、具体的な対策を立てようがありませんから。

以上、業務とリスク、2つの分析をまず最初にしていただきます。

ーーなるほど、どんなリスクが想定されるかと、継続しなければいけない業務を確認することですね。その2つができたら、何をすればいいのでしょう?

それぞれの分析が終わったら、「体制づくり」に入ります。
BCPを発動する事態が起きた場合、通常の勤務とは異なります。ですので、誰が指揮を取るのか、どういった指揮体系で動くのかを決めておかなければなりません。
よく「社長が指示します」というのが多いのですが、社長さんが出張でいない場合は、連絡が取れない場合はどうするのか。また「連絡網を作りました!」という会社さんもありますが、連絡網は誰が誰に連絡するのかだけなので、行動に繋がりません。誰が指示を出し、支店や営業所があれば、どう連携するのか。部署や支社ごとに誰が引っ張っていくのかなども考えた上で、BCPを発動した場合の体制を作っていきます。

そして、忘れてはいけないのが発動条件を決めることです。
こちらは海外では主流なんですが、日本ではまだまだ普及していません。というのも「社長が発動と言えば、発動」程度で止まってしまっているんですね。知事が、市長が、誰かが発動の号令をかけたら、というのと同じです。連絡がついて、会議室に集まることができる状態ならそれでも成立しますが、なかなかそうはいきません。
そこで、我々が勧めているのは「数字や条件が分かるものは自動発動にしましょう」という取り決めです。例えば地震であれば、震度6以上、マグニチュード5強以上であれば自動発動する、といった数字を決めておく。決めた数字以上になった場合は、通常の業務を止めて避難しましょう、避難先で指示を待ちましょう、といった具合です。
業種業界によっては当たり前に決められていることなんですよね。漁師さんであれば、風速何m以上の場合は海に出ない、出ていても帰りましょう、と安全を守るために組織で決められている。他にも、台風が何km圏内に入ったら、外に出ているものを屋内に入れる、であったり、低い土地にある車両は移動させておく、など。自動発動の条件と同時に、業種や立地条件に合わせた取り決めをBCPに取り入れていただくことが大事です。

ーー指示系統と発動条件を決め、対応を決める。ここまで決めると、内容が具体的になってきますね。

そうです。そこまで出来ると、順序立てて取り決めていくことができます。

防災用品を購入しておく、避難場所の確認や避難経路の地図を貼っておくなど、事前に備えておく「対策」ですね。防疫の観点だと、アルコールや体温測定器を入り口に置いておきましょう、など。そういった事前の対策を決めておくことです。

そして、想定しうるリスクに対する「対応」をある程度パターン化しておく。まず、社員の安全を確保するための避難計画や安全計画を決める。どこにどのように避難するのか、どのように連絡を取り合うのか。連絡と指示ができる体制を作り、その後の対応を決めていく。

また、その後の対応をある程度パターン化しておくといいでしょう。いわゆる避難計画や安全計画を作っておくことですね。そこで、差し迫った危険性のない事業所や会社であったとしても、我々が勧めているのは「安否確認」なんですね。実は日本では、この「安否確認」という考え方は、まだ出てきて十年ほどしか経っていない新しい考え方なんです。

ーーそうなんですか?「安否確認」という単語は、よく耳にしますが…

分かりやすい例で言えば、学校だと運動場に出て点呼を取るだとか、大きな会社でも駐車場に出て点呼を取ればいいじゃない、だとか。しかし、そのうちに津波がきて流されてしまう、といったケースもあるんですね。
「安否確認」というのは、まず各自が安全を確保した上で、連絡を取り合うことです。メールやSNSなどのツールを駆使して、どこかの部署が社員の安否を確認できるようにしておく。まず避難をして安全を確保したのち、安否確認に移る。この対応を決めておくことが必須になります。

ーーなるほど。確かに安否確認というと、そんなイメージしかありませんでした。まず安全を確保してから、連絡を取り合い、指示を待つ。

その次のフェーズとして、業務の復旧や再開ですね。一般的な会社ですと、大きな災害や事故が起きた場合、業務が一旦ストップします。そこからどうやって復旧するかと、どの業務から復旧させていくか、です。このあたりも、業務分析をした上で、どのように復旧していくかの対応を決めていきます。

ーーありがとうございます。最後に流れを今一度、整理させていただきたいです。

まずやっていただきたいのが、重要な業務の分析と、想定しうるリスクの分析。

次に、指示・連絡系統を行う体制づくりと、BCP発動の条件を決めておく。

そこまでできると、事前の対策と事後の対応を具体的に決めていくことができるので、リスクに対する避難計画や安全計画の作成をし、指示や連絡ができる体制をつくる。そして、業務の復旧や再開を目指して対応を決めていく。

これらの情報をマニュアル化することで、BCPの内容を具体的に策定することができます。

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上場企業~中小企業、介護施設等へのBCP策定~運用の経験があります。